桑の海 光る雲

桑の海の旅行記・エッセー・書作品と旅の写真

安達太良山

2009-07-01 19:32:53 | 旅行記

礼文に行き始めた頃、こんなことがありました。

その日は朝から一面のガスの中、しかも雨がざーざー降っています。こんな日は見送りの後は座敷トドを決め込むのがいつものパターン。確かその日は連泊者が中心で、こりゃブラックホールでごろごろだな、と皆で言い合っていました。

しかし、その日の最終で島を出ることになっていたライダーのHさんは、雨で流れてしまった礼文岳登山をあきらめきれずにいました。見送りから帰った後も、星観荘でそのあきらめきれない思いを口にし、しまいには昼前に雨の降る中礼文岳に登りにバイクで出かけていきました。

皆が座敷トドも終え、だるい体をもてあましていたところへ、Hさんがにこにこ顔で帰ってきました。

「信じられないと思うけど、何と礼文岳の山頂だけ雲海の上だったんだよ。最高だった!」何でも、雨の降る中登っていくと、頂上の直下で突然雲が晴れ、山頂では雲海の上に出たのだそうです。青空の下、一面の真っ白な雲海の上には、礼文岳の山頂と利尻山だけが浮かんでいたのだそうです。

私たちは目が点になっていました。その頃はデジカメもありませんから、現在のようにその様子を見ることはできません。しかし、それを聞いていたオーナーが、礼文ではそういうことも十分にあり得ると言うのを聞いて、皆が悔しい思いをしたのは言うまでもありません。

さて、こんなことを思い出したのにはわけがあります。

今朝目が覚めると雨がざーざー降りでした。これは予定していた安達太良山登山は無理だとあきらめたのです。しかし、出かける直前にネットで天気予報を調べると、安達太良山のある二本松市は一日中曇りです。これはひょっとすると登れる可能性があるかも知れない、とりあえずゴンドラで登山口まで行ってみようと思って出かけてみました。

二本松インターで降りると確かに曇りで、雨は落ちていません。しかし、登山口の下にある岳温泉あたりから雲がかかりはじめ、ゴンドラ乗り場では一面の真っ白なガスの中。でもずっと上空は明るく、ちょっと期待が持てたので、登山の準備をしてゴンドラに乗り込みました。

ケータイをいじっているうちに降り場が近づいたので目を上げると、何と日が差し、山頂まで見えるではありませんか!振り返ると雲海の上に出ていたのです。予想は当たりました。

山頂にガスがかからないうちにと急いで登り始めました。登り口に「皇太子・同妃殿下行啓記念」という標柱があるのが目に入りました。となると、登山道もしっかり整備されているに違いありません。

登山道は確かにしっかり整備されており、とても登りやすく、どんどん高度を稼ぐことができました。風は西向きで、山頂方面から吹いてきて、山頂はガスに見え隠れしています。

灌木帯を歩き続けると山頂直下のガレ場に出て、山頂は溶岩が小山のように重なっており、大雪山の赤岳の山頂にそっくりでした。風が吹き抜ける中登頂しましたが、風は強くてもさほど寒さを感じません。山頂には俺の他に誰もいなかったので、山頂の標柱だったとおぼしきコンクリートのかたまりにカメラを置き、セルフタイマーを何とかセットして写真を撮りました。

それにしても人が少ない!昨日の八甲田山も一昨日の岩木山もたくさんの人が登っていましたが、今日は結局2人のおばさんとすれ違っただけです。百名山に入っている山で、こんな経験は初めてです。まぁ、この天気では山の上は雨だろうととふつうの人は考えますわな。地元民ならなおのこと。ゴンドラ乗り場の駐車場にあったのは、県外ナンバーの車が3台ほど。2時間かからずに往復できるので、天気が良ければ平日でも結構な人数の登山客がいることでしょう。でも、今日は昨日一昨日のような、中高年の団体客にむかつくこともなく、静かな登山を楽しめました。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

八甲田山

2009-07-01 19:30:50 | 旅行記

2日目は八甲田山に登ります。ガイドブックではロープウェーを使って上るルートが紹介されていますが、私はロープウェーを使うルートからは外れたところにある、下毛無岱と上毛無岱という二つの湿原をぜひ訪ねたかったので、ロープウェーとは反対側の登山口である酸ヶ湯から登ることにしました。ここからだと、上下毛無岱を横切って、最高峰の大岳に登頂できるのです。しかも、下山後は酸ヶ湯温泉にすぐ入れます。

弘前のホテルを出発し、酸ヶ湯温泉に到着しました。荷造りをして大岳に向けて出発します。下毛無岱まではややきつい登りと平坦な森林歩きで30分ほどで着きました。下毛無岱はチングルマは終わっていましたが、ワタスゲが見ごろでした。八甲田連山もよく見えます。

下毛無岱から上毛無岱に移動すると、チングルマは少し咲き残っていたものの、全体として花は少なく、花の端境期だったようです。でも、毛無岱は予想していたよりずっと狭く、ちょっと拍子抜けしてしまいました。尾瀬ヶ原や大雪山のお花畑に親しんでいる私からすると、正直言って大したことはなかったと思います。ワタスゲも福島の駒止湿原の方がはるかにすごかったです。

上毛無岱を過ぎると、大岳の下の分岐点に着きました。ここは地形的にちょうど知床の羅臼平に似ています。風が心地よく吹き抜けます。今日も涼しすぎるほどの風ではないので、下界は相当暑いと思われました。

この後いよいよ大岳への登りにかかるのですが、登り初めてすぐに、意外にも雪渓歩きが2箇所もありました。15分ほど登って大岳の山頂に着きました。分岐点から結構あっけなく着いてしまいました。空は昨日同様ややもやっているものの、八甲田連峰は一望できました。昨日登った岩木山同様、山頂のすぐしたには火口が口を開けています。標高が低いためか、携帯が普通に通じ、登山客が普通に電話をしたり、メールをやり取りしているのはちょっと奇妙な光景でした。今日も平日ながら中高年の登山ツアーの面々がいたので、彼らと遭遇しないうちに下山することにしました。

途中下毛無岱でお昼を食べ、後はひたすら下りました。酸ヶ湯には12時過ぎに到着し、ちょうど4時間ほどの山歩きでしたが、湿原の花はちょっと残念だったものの、距離的にも時間的にもちょうどよく、登山道にも変化があり、季候も良く、本当に気持ちの良い山行でした。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

岩木山

2009-07-01 19:21:33 | 旅行記

例年旅をしている6月末~7月頭ですが、今年は東北の山に登ってみようと考えました。しかも折しも今年は太宰治生誕100年。ついでに太宰治の生家である斜陽館や、小説「津軽」の舞台となった小泊にも足を伸ばしてみようと考えました。

初日は出発が夕方だったために、とりあえず一関に宿を取り、ひたすら東北道を北上しました。翌日は朝から一関から200キロ以上北上し、一路弘前へ。午前中から大変な暑さで空はもやっており、岩木山は見えません。インターを降りてしばらく走るとようやく、うっすらと岩木山が見えてきました。

周囲は一面のりんご畑。そういえば「津軽」には、太宰治が描いたりんごの花の絵と岩木山の絵が挿絵として入っていたのを思い出しました。

ヘアピンカーブが69回も続く岩木スカイラインを登っていき(実は今日はマウンテンバイクか何かのレースが行われ、午前中通行止めだったのでした。その日の朝は前夜の疲れもあってやや寝坊気味だったので、早く来ていたら足止めを食らうことになっていたでしょう。寝坊して正解でした。

リフト乗り場に着くと空は晴れ。山頂もくっきり見えます。午前中来た人がほとんどいないため、100名山にしては日曜日のわりに空いているものの、私の到着する前に着いていた登山ツアーバスから例によって大量の中高年登山者が降りて、わいわいがやがやと準備をしているので、彼らと山頂で遭遇しないために早々に出発しました。

それにしても風が心地よい。山の上でこれだけの快適さなのだから、下界は相当な暑さだろうと思われました(実際最高気温は30度を超えたそうです。)。

登山道は大きな岩が転がるところを、少しのアップダウンを繰り返した後はひたすら登っていくもので、そんなに苦労せず、30分ほどで到着できました。ツアーの人達が登ってくる前だったので、いつものように「特急が通過しま~す!」などと言われてむかつくこともありませんでした。

山頂は火山らしくごろごろした岩場で、ここにもやはり神社が祀られていました。東北のこうした山はみな下界の人の篤い信仰の対象となっていたようです。軽く昼飯を食べ、ツアーの人達が登ってきたのと入れ替わりに下山しました。行程はわずか1時間。スカイライン&リフト様々です。ガイドブックによっては、1日で岩木山と八甲田山を登ってしまうような行程を紹介しているものもあるくらいです。

さすがに私はそこまで考えていないので、下山後は予定通り斜陽館と小泊を訪れました。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする