桑の海 光る雲

桑の海の旅行記・エッセー・書作品と旅の写真

大雪の山々に登る⑮・番外編・中岳温泉

2005-07-15 23:44:19 | 旅行記
中岳温泉は北海道で一番高いところにある温泉として知られている。温泉と言っても山腹からわき出してくる温泉を石などで囲っただけのものである。

初めて訪れたのは、裾合平から層雲峡へ抜けた時だった。この時は何人かの人が足湯に浸かっていたので、私もまねてみた。さすがに服を脱いで入ってみようとは思わなかった。

2回目の時は、層雲峡から愛山渓へ抜けた時である。この時は前回とは様子ががらりと変わっていた。中岳温泉は沢沿いに湧出しているのであるが、その沢が大雨によって洪水を起こし、”露天風呂”をすべて破壊してしまったというのである。その後、心ある人達の手によって新たに作られていたのであった。

この時は平日だったこともあり、人はほとんどおらず、私も服を脱いで入ってみようと思っていた。ところが、先客がいた。山屋さんと思われる若い男性がのんびりと湯船に浸かっているのである。とても気持ちよさそうなので、邪魔をしないように、私はその時も足湯だけに留めた。

それ以降、私は中岳温泉を訪ねていない。秘湯ブームで、中岳温泉もすっかりメジャーになってしまった。登山者も増えた。人前で臆面もなく天然の露天風呂に浸かれるトシでもなくなってしまった。誰もいない中岳温泉にのんびりと浸かってみたい、という思いは果たされないまま終わりそうである。

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大雪の山々に登る⑭・番外編・浮島湿原

2005-07-13 22:15:48 | 旅行記
浮島湿原は大雪連峰からは離れた場所にあるが、ゆわんと村からも多くの人が訪ねているので、ここで紹介したい。

初めて浮島湿原を訪れた時は、今はなき北海道ワイド周遊券を用い、列車でまわっている時だった。当時は旭川から紋別へ長距離バスが走っており、浮島湿原の入り口にあるトンネルの出口に、「浮島公園」というバス停があった。初めはそのバスで行こうと思ったのだが、上川駅からの乗り継ぎが悪く、やむなく入口までタクシーを使った。学生の身に6,000円のタクシー代はかなりきつかった。帰りは浮島公園バス停からバスを利用した。

林道脇の駐車場から山道を15分ほど登っていく。斜度が緩くなると木材チップが敷かれた道になる。するとすぐに林が開け、湿原に到着する。

湿原には木道が整備されている。北側には湿原をぐるっと回るように、南側には沼をぐるっと回るように木道が付けられている。北側の湿原の脇には、湿原の名前にもなった浮島の浮かぶ池がある。初めて訪れた時は、この浮島に乗っている人がいたようで、浮島にはミズゴケがむき出しになり、浮島を動かすための棒まで置かれていた。しかし、後に浮島に乗ることが禁止され、数年後に訪れた時には、浮島の上には草が青々と生え、旧態に戻りつつあるようであった。

湿原(池塘)には様々な高山植物が咲く。湿原には珍しいチングルマなども咲くようだ。私が訪れた時に目にしたのは、トキソウ、タチギボウシ、モウセンゴケ、ワタスゲ、エゾカンゾウなどであった。池にはヒツジグサがあったように思う。特にタチギボシが一面に咲く時期はとてもきれいだったのを覚えている。

池や沼は、焦げ茶色の水がたまっていて、近寄るとちょっと怖い感じがする。その中に真っ白なヒツジグサが花を付けているのは何とも愛らしい。

木道はゆっくり歩いても20分もあればまわりきってしまう。割とアクセスの良い場所でありながら、訪れる人は少ない。先頃大雪に登りに行った時に立ち寄れば、今まで見たのとは違った花を見ることができたかも知れないが、疲れのあまり出かけなかったのは心残りである。

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大雪の山々に登る⑬・初めての7月の大雪2

2005-07-10 18:17:23 | 旅行記
今日は二日目のことを書きます。

昨日は白雲岳から残雪のストライプを見るのが主目的でしたが、ガスに覆われて断念。小泉岳花の山行となりました。花は満喫しましたが、残雪のストライプは心残りとなりました。

昨日と異なり、ゆわんと村からは大雪の山々は見えません。だから、今日は緑岳から高根ヶ原に行き、ウルップソウ(ホソバウルップソウ・以下同じ))の群生を見ようと考えました。昨日の疲れもあり、出発前からあまり気乗りはせず、だらだら出発しました。

大雪湖辺りから見る緑岳には、雲がかかっています。高原温泉からも同じような感じです。相変わらずあまり気乗りしないまま登り始めました。

第一花畑・第二花畑は大きな雪渓に覆われています。昨日と異なり、斜度がゆるいのですたすた進めます。緑岳の登りにかかりますが、トムラウシ方面は雲の中です。

きつい登りを終え、山頂直下にたどり着くと、何と目の前に突然旭岳が姿を見せました。白雲岳もくっきり見えています。空には雲が浮かんでいますが、ガスはかかりそうもありません。この瞬間、今日の主目的は昨日見られなかった残雪のストライプを見に行くことに変更されました。

緑岳から板垣新道分岐までのお花畑の見事さは、昨日以上のものがありました。特に、ウルップソウとチョウノスケソウ。その密度は、昨日見た小泉岳直下のお花畑以上でした。高根ヶ原のウルップソウもこんなもんだろう、と割り切りました。

小泉岳分岐から白雲岳を目指します。この辺りからすでに白雲岳にキバナシャクナゲがたくさん咲いている様子が見て取れます。期待が高まります。

”白雲グランド”の北側の斜面にその群落はありました。ハイマツの間はほとんどキバナシャクナゲに覆われているような感じで、クリーム色の花と濃い緑の葉のコントラストが見事です。それを縁取るように、まだ咲き始めのイワウメの群落が続いています。

白雲岳にはまだ大きな雪渓が残っていました。踏み抜かないよう注意して登ると山頂です。山頂についた瞬間、思わず歓声を上げてしまいました。それくらい見事な光景です。”ストライプ”というにはまだ雪が多すぎのようですが、実に雄大で見事な眺めです。というか、私個人としては、ちょっと怖さを感じてしまうほどでした。

南に目を向けると、トムラウシが雲の上に頭を覗かせています。それ以外にも、十勝連峰、芦別岳、夕張岳、遠く日高連峰、雄阿寒・雌阿寒岳、斜里岳、遠く知床の山々まで見ることができました。

何枚もの写真を写し、名残惜しく思いながら下山しました。帰途は、白雲分岐から白雲小屋を通り、板垣新道から緑岳へ進むルートを取りました。白雲小屋からは雪渓が続き、かなりの時間短縮となりました。

板垣新道も花の道でした。前述の花々に加え、エゾノハクサンイチゲ、エゾコザクラが加わり、彩りも一段と鮮やかです。しかも私のほかには誰もいません。まさに天上の花の楽園を一人占め、という感じで、至福のひと時を過ごしました。

白雲小屋辺りからは、トムラウシの姿もくっきりと見えてきました。板垣新道分岐から緑岳の間では、お花畑の向こうに遠く眺めることができました。我が愛するトムラウシ。最後の最後でその姿を見せてくれるなどとは、なんとも心にくい演出ではありませんか。何もかも満喫できた今日の山行でした。


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大雪の山々に登る⑫・初めての7月の大雪1

2005-07-08 21:43:45 | 旅行記
7月初めの大雪は、地面から花が吹き出すように咲き乱れると以前から耳にしており、写真でも目にしてきた。しかしその時期には休みが取れず、知人のHPで美しい花々の写真を見ながら、指をくわえているだけであった。
ところが、今年たまたま休みを取ることができ、バーゲンフェアのチケットもとれ、天気にも恵まれ、素晴らしい光景を見てくることができた。2回に分けて、ゆわんと村のHPに掲載した文章を転載する。

昔、「高山植物シリーズ」という記念切手が発行されたことがあった。取り上げられた花は、かねてより高山植物に関心のあった私にはなじみのあるものばかりだったが、「ウルップソウ」という、初めて耳にする花が一つだけ入っていた。名前からすると、千島列島にあるウルップ島の特産で、北アルプスなどにはない、北海道などでしか見られない特別な花なのだろうと思っていた。(もちろん、その当時はウルップソウが白馬岳や八ヶ岳で見られる花であるとことは知らなかった。)

北海道を旅するようになって、ウルップソウは、北海道では大雪山や礼文島で見ることができると知った。そして大雪山で見られるのはホソバウルップソウ、礼文島や白馬岳で見られるのはウルップソウ、礼文島ではまずお目にかかれない幻の花である、大雪山では夏の初めに見られる花であることなども知った。

大雪山には毎年出かけていたが、ウルップソウの花の時期はなかなか休みが取れず、かろうじて、7月の終わりにトムラウシに登った時、化雲平で咲き残っているウルップソウを見られたに過ぎなかった。

今年はたまたまこの時期に休みが取れそうだった上、バーゲンフェアの時期にも重なり、迷わず旭川便のチケットを手配し、ようやくやって来ることができた。

今日は小泉長之介さん、ヨネスケさん、けいけいさんの4人で、銀泉台から入り、小泉岳まで往復した。途中、本来なら登山道である場所がずっと雪渓に覆われており、まぶしさも加わって、とても歩きにくかった。コマクサ平までは花もあまり見られなかった。

コマクサ平のコマクサは、ちょうど咲きはじめで、色も鮮やかだった。メアカンキンバイやキバナシオガマ、キバナシャクナゲなどもちらほら見られた。

第三雪渓にも今年は雪がたっぷり残っており、第四雪渓まで続いている。長之介さんいわく、ここまで雪が残っているのは初めてとのことだった。登りは踏み跡をたどればよかったが、行きはよいよい帰りは怖いで、帰りは相当な苦労を強いられるような気がした。

第四雪渓周辺は、キバナシャクナゲが満開であった。エゾノハクサンイチゲも咲き始めていた。そこを登りきると、赤岳山頂であった。エゾタカネスミレの黄色と、イワウメの白があちこちに見え、これから小泉岳に続く道の見事さを予感させるものがあった。ガスがかかってきたので、白雲岳行きはあきらめた。

そこからが今日のメインであった。まずは念願のウルップソウ。以前目にした咲き残りのものとは違い、今まさに花盛りである。花の色は吸い込まれるような青紫色である。個体によって色の濃い薄いがあるのも興味深かった。蕾の、ちょっとグロテスクな感じも面白い。

チョウノスケソウも咲いていた。初めて見るものである。しかし、今日は”小泉岳のチョウノスケソウ”を見たいと思っており、ここのものは”赤岳長之介”なので、ひとまずパスした。それにしても見事なお花畑である。エゾオヤマノエンドウの濃い赤紫、イワウメやチョウノスケソウの白、ウルップソウの青紫、ミヤマキンバイやエゾタカネスミレの黄色。ただただ感嘆するばかりであった。そして、無理をして見に来て本当によかったと思った。

しかし、感動はそれにとどまらなかった。長之介さんが、まだこの先があるような話をしてくれたので、それを楽しみに、小泉岳へと進んでいく。小泉岳山頂付近は、イワウメの中にミヤマキンバイやウルップソウがちらほら咲いているだけだったが、そこから緑岳へ下る道は、もう見事と言うほかなかった。前述の花々が辺り一面に咲いている。

私としては珍しく、写真もたくさん写した。そして「いやぁ、ホントに来てよかった。」を連発してしまった。花々の向こうに、トムラウシや白雲岳が見えれば言うことなしなのだが、そこまでのことは言うまい。ともかく、夢のようなひと時だった。ガスが上がってきて、下山を始める時は、まさに後ろ髪引かれる思いだった。

そんな思いも束の間、”行きはよいよい帰りは怖い”は現実のものとなった。雪渓下りがあんなに大変なものとは!すたすたと軽快に下ってゆく長之介&ヨネスケのご両人と異なり、私とけいけいさんは時にしりもちをつき、時に恐る恐る足を進めながら、やっとのことで下山した。全身に疲労が残り、温泉に入ってゆわんと村に戻った後、夕食までの時間、爆睡してしまった。



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