桑の海 光る雲

桑の海の旅行記・エッセー・書作品と旅の写真

剣山

2013-06-15 22:15:49 | 旅行記

5/26(日)

前日石鎚山に登頂し、坂出・高知を経由して、翌日の剣山登山に備えて美馬のホテルに入りました。翌朝起床してカーテンを開けると、南の山には雲がかかっています。どうやら剣山登山は雲の中のようです。テンションが一気に下がり、朝食も箸が進まず、気分が乗らないままホテルを出発しました。剣山までの国道は道幅が狭く走りにくいと知人から聞いてはいたのですが、北海道の林道などを走り慣れている私には、さほど気になりませんでした。それよりも、旧一宇村を通った時には、こんな山奥に村落があり、合併前には村があって、役場も学校もあったのに驚かされました。

剣山リフトは9時から運行を始めるので、それに間に合うように出発したわけですが、リフト乗り場が見えるところまで来ると、やはり山には厚く雲がたれ込めています。すっかり気落ちしたまま駐車場に車を駐め、登山準備をしてリフト乗り場に向かいました。剣山はリフトを使えば子供でも簡単に登頂できるため、日曜日のこの日には多くの家族連れがいました。リフトはスキー場にある1人乗りで、15分ほどで西島駅に着くのです。乗り場近くではシャクナゲが見頃でした。

西島駅では周囲は既にガスに包まれており、この先の展望は全く望めなくなりました。仕方なく尾根筋の最短ルートを通って、山頂を踏んでくるだけにすることにしました。登山装備でない家族連れや若者やお年寄りも結構登っています。彼らを何人も追い抜いて、山頂近くの小屋に30分ほどで到着しました。周囲は真っ白で何も見えません。山頂までは木道で5分ほどとのことで、真っ白な中を進んでいくのですが、ガスのせいで髪の毛やまつげが湿気を帯びているのがわかります。また、風も吹いていて肌寒さを感じるようになりました。カッパを引っ張り出して上着だけ着込み歩いていくと間もなく山頂でした。

山頂の三角点はしめ縄で囲われた岩に置かれており、植生を守るための木道が周囲をぐるっと巻いているのですが、山頂そのものに足を踏み入れることはできません。これはいささか興ざめで、ただでさえ低いテンションがまた下がった気がしました。山頂からは南西方向にジロウギュウと呼ばれる1,929mの山が見えるのですが、ガスに覆われているので全く見えません。写真だけ撮って下山しようと思い、居合わせた人にカメラをお願いしたら、これがまたひどいできばえ。その人がいなくなって、別の人に撮り直してもらおうと思ったら、その人がなかなかいなくならない。15分ほど待っていなくなったので、別の人に頼んだら、ようやくまともな写真を写してくれました。

写真も撮り終え長居も無用ということで、足早に下山しました。ところが、ロープウェーで下っていくうちに、山の上の方が明るくなってきた気がします。車に戻り、荷物をまとめて駐車場を後にして間もなく山の方を振り返ると、何と剣山が姿を現しているではないですか!うまくすればジロウギュウの方まで見られそうな感じです。何という不運。もう少し山頂で頑張っていれば、少なくともガスの中での写真撮影にはならずには済んだわけです。でも、もう下山してしまったし、この後の日程もあるので、剣山の写真だけ写して、泣く泣くその場を後にしました。

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石鎚山

2013-06-08 22:57:43 | 旅行記

5/25(土)に、四国最高峰の石鎚山に登りました。

5/25(木)この日は、礼文島で知り合ったヨッシーさんと石鎚山に登る約束の日です。ヨッシーさんとは、実は礼文で3回しか会ったことがありませんが、私の旅行関係の友人の中でも、会った回数が少ない割にずっと親しくさせてもらっている方です。このヨッシーさんは岡山に住んでいるので、今回の四国行きにあたっては、ぜひ声を掛けて一緒に山に登りたいと思っていたのです。幸いなことにヨッシーさんも山に登る方で、今回の四国の旅で登る予定の石鎚山にも剣山にも登ったことがあるのでお誘いしてみたところ、快諾してくださいました。実はヨッシーさんとは、一緒に礼文の山を歩いたことはあるのですが、礼文以外で一緒に山に登るのは初めてなのです。

ホテルの部屋のカーテンを開けると雲一つ無い空。前日もしまなみ海道を走りながら、遠く石鎚山が聳えている様子を眺めることができましたが、この日はそれ以上の素晴らしい天気になることが予想されました。石鎚山ロープウェーが動き始めるのが7:30からなので、それに間に合うように、6時過ぎにホテルを出ました。7時過ぎにロープウェーの駐車場に着いたのですが、この駐車場が変わっていて、土産物店のアーケードをくぐって入るのです。そして、ロープウェーに乗るには、このアーケードをくぐらなければならず、さらにロープウェーを降りた後もアーケードをくぐらなくてはならず、必然的に土産物店の前を通らなくてはならない作りなのです。

駐車場は土曜日にしてはさほど混んでいないのが意外でした。どうやら、もっと簡単に登れる土小屋から登る人が多いと思われます。車を置くと間もなく、2台隣の車からヨッシーさんが降りてきました。約1年ぶりの再会です。ヨッシーさんは岡山から瀬戸大橋を渡って、はるばるここまでやって来て下さったのです。アクティブなヨッシーさんは日焼けしています。まだ山のシーズンが始まったばかりで青白い顔をしている私とは大違いです。握手をして再会を喜んだ後、乗り場に上がっていきました。ロープウェーは8割の乗車率。でもヨッシーさんによれば土日の始発にしては乗客は少なく、紅葉の時期などは乗り切れないこともあるそうです。谷の向こう側に高い山が聳える光景は、北海道は層雲峡のロープウェーにも似ているなと思いました。

山頂成就に着いて、いよいよ登り始めるのですが、最初に神社に参拝し、この後天候に恵まれて良い登山になることを祈りました。ここから登山道はいきなり下り始めます。登山道はずっと樹林帯の中を通りますが、やはり群馬や長野と植生が異なるせいか、雰囲気もちょっと違う気がします。でも、とにかく新緑の美しさには目を奪われました。八丁坂を下りきると登りにかかります。前社の森までの登りはなかなかきついのですが、ここまでひたすらしゃべり続けでした。こんなにしゃべり続けながら登ったのは初めてくらいではないでしょうか?ヨッシーさんは元々陽気で話し好きだし、私も話す相手がいて話が合えば、何しろおしゃべりを職業にしているくらいですから、話は後から後から出てきます。だから、ここまでのきつい登りも、ずっとしゃべっていたおかげで、さほど気にならずに乗り切ってしまいました。

前社の森を過ぎて少し下ると、急に目の前の視界が開け、石鎚山が目の前にばーんと立ちはだかりました。登りで最後の平地である夜明峠にさしかかったのです。途中ですれ違った人が「山頂はアケボノツツジが見頃ですよ。」と言っていたのを聞いていたのですが、山のあちこちにはピンク色のアケボノツツジが見えます。少し前に近くの西明石山にアケボノツツジを見に行ったというヨッシーさんによれば、石鎚山は西明石山より標高が高いので、まだ咲き残っているのだろうということでした。夜明峠で大休止にしたのですが、とにかく日差しがきつくて暑い!普段山であまり水分を取らない私ですが、この暑さでは飲まずにはいられません。またヨッシーさんは頻繁に水分を取るので、それにつられて飲んでしまいました。

夜明峠からはいよいよ山頂に向けての最後のきつい登りが始まります。ここから有名な一の鎖、二の鎖、三の鎖の急斜面の鎖場が続きます。もちろん巻き道もありますが、石鎚山に来たからには三つの鎖を制覇しようということで、鎖を使って登ることにしました。鎖場といっても、普通の鎖場が鎖を持って斜面を登るのと異なり、ここの鎖は鎖そのものに足を引っかけて登るのです。確かに鎖がなければ登れない岩場でしたが、鎖のなかった頃はどうやって登っていたか不思議に思いました。

一の鎖を登り終えると、土小屋からのルートが合流します。土小屋にある国民宿舎の屋根も見え、そこからのルートはかなり楽なようで、次々に人がやってきます。団体の後に鎖場を登るのは順番待ちになって困るので、団体のやってくる前に二の鎖を登り始めました。二の鎖を登り終え、最後の三の鎖を、と思ったところで、何と三の鎖は鎖の交換工事中のために登れないことがわかりました。仕方なしに巻き道を登りはじめましたが、この辺りからアケボノツツジの花が見えはじめます。四国とはいえさすがに2,000m近い標高がある山です。登り始めでは美しかった新緑も、山頂下ではまだ芽吹き始めた程度です。アケボノツツジはやや終わりかけでしたが、まだまだきれいでした。

石鎚神社が見えてきて、山頂へ連なる稜線へ出ると間もなく山頂でした。ふと見上げると桜が咲いています。帰宅して調べると、石鎚山だけに自生するイシヅチザクラでした。それを見ながらひと登りすると山頂でした。山頂は結構な広さです。ヨッシーさんによれば、以前ヨッシーさんが紅葉の時期の休日に登った際には、座る場所もないほどの大混雑だったそうです。この日は素晴らしい天気の土曜日でしたが、登り始めた時間がやや早かったせいか、それほどの混雑ではありませんでした。山頂からの眺めは素晴らしかった。遠くはやや霞んでいますが、上空高くに薄い雲がたなびく程度、素晴らしく晴れ上がった空のもと、四方は山ばかり。正面には石鎚山の最高峰である天狗岳が鋭く聳えています。

山頂で写真を写した後、天狗岳へ登ることにしました。天狗岳への稜線にはアケボノツツジがたくさん咲いており、標高が高いためにどれも見頃でした。不思議なのは、同じような場所に生えていながら、株によって花の色の濃さが全然違うことでした。一番花の色が濃く見頃な株は、登山道からちょっと離れたところに生えており、撮影にちょっと難儀しました。 山頂から天狗岳へは15分ほどで着きました。山頂の最高点は尖った岩で、立つことはできませんが、そのすぐ前には人が二人ほど立つことができるので、ここにヨッシーさんと並んで写真を写しました。これで私も四国の最高点に立つことができたわけで、深田久弥の「念願の頂に立った喜びは無限であった。」という言葉を我がこととして胸の内で反芻していました。

山頂へ戻ってお昼にすることにしましたが、遅い時間から登り始めた団体がベンチを占領しており、墨の方のすぐ横が崖になっているところで、二の森の方を眺めながら食べることにしました。心地よい風が吹く中、おしゃべりを続けながらのお昼は何とも楽しいもので、コンビニのおにぎり(関西以西のコンビニでは、おにぎりを買うと必ずお手ふきが付いてくるのを初めて知りました)も少しは美味しく感じられました。

後は上ってきた道をひたすら引き返しました。もちろんひたすらしゃべり続けていました。二人だけなのによくもこれだけ話が続くなぁ、というくらいでした。成就社で大休止をし、ロープウェーで下ったのですが、どうやらこの日のロープウェーで登った登山者では一番早い下山だったようです。乗っている人も工事関係者が4,5人ほどで、何と我々はたった8人分ほどしか付いていない座席に座ることができました。ロープウェーに乗って、今登ってきた山の方を振り返ると、何と山にはすっかり雲がかかっています。遅い時間に登り始めていたら、山頂での眺望などとても望めなかったわけです。

石鎚山登山は天候に恵まれ、眺めも新緑も美しく、素晴らしい登山でした。そして何より、ヨッシー山という連れがいてくれたことで、登頂の喜びも2倍になった気がします。遠くまで登りに来て、本当に良かったと思いました。

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