桑の海 光る雲

桑の海の旅行記・エッセー・書作品と旅の写真

登山の記62・幌尻岳⑥

2006-06-28 20:42:54 | 旅行記

急流の中をじっと目を凝らして見ていると、川底の石の様子がわかってきた。何とか目星を付け、意を決して、足を勢いよく急流に踏み入れた。すごい勢いだ!足を今にもさらわれそうである。声を出して気合いを入れ、もう一方の足を向こう岸の石へと飛び移らせた。何とか川に落ちることなく飛び移ることができた。

ほっと一息ついて少し前へ進むと、前にある岩にペンキで「心洗の滝」と書かれている。左の崖に目をやると、落差15メートルほどの滝が落ちている。滝の姿を見ていると、急流を渡る時の緊張した心持ちから解放され、まさに心洗われる気分がする。良いネーミングだと思った。

ここから後の渡渉はもうすっかり慣れてしまって、問題がなかった。一カ所だけ、深さが足の付け根の所まで来た場所があったが、ちょうど淵になっているところで、流れも緩やかであり、問題なく通過できた。でも、この深い場所が初めの方にあったら、足がすくんで進めなかっただろう。増水(この時も普段よりは水が多かったようだ)の時は、女性などはここでは腹や胸まで水に浸かることにもなるだろう。

そして幌尻山荘の姿と、立ち上る煙が見え始め、ようやく胸をなで下ろした時、目の前に最後の渡渉箇所が現れた。渡渉と言っても、大きな石が飛び石状に並べられており、その上を渡っていくだけである。

小屋に着いて、ようやく一息つくことができた。小屋は空いており、一番奥のストーブの前のスペースにシートを敷き、荷物を置いた。濡れたズボンと靴下をストーブの囲いの網に干した。利用料を係の人とおぼしき人に支払ったが、本来の小屋番の人は下山しており、この時は長期の取材にやってきていたNHKのスタッフの人が代わりに手続きを行っていたのだった。(ちなみに本来の小屋番の人はかなり気むずかしい人だと、帰ってからネットで知った。)

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登山の記61・幌尻岳⑤

2006-06-26 21:23:01 | 旅行記

目の前の30㎝ほどの深さの水を目の前に、私は一歩目が踏み出せなくなってしまったのである。流れは緩やかで、3メートルほどで向こう岸である。私はここで10分ほど立ち止まってしまった。これまで山でいろいろ怖い目に遭っているが、こんな経験は初めてである。

ここで立ち止まっていてはどうしようもない。周囲には誰もいないことを確認し、大きな声を出して自分を励ました。そして、一歩を踏み出した。水はさほど冷たくない。水は膝の下ほどまで来る。流れは確かに速いが、子供の頃に散々入って遊んだ用水路と変わりがない。しかも靴はウェーディングシューズである。川の中程まで来ると、一歩を踏み出す前の怖さはすっかり消えてしまった。

そこを渡ると今度は目の前に大きな岩が現れた。岩の横は両岸とも岸壁のいわゆる”函”と呼ばれる地形となっており、川は岩の間の狭いところをすごい勢いで流れ下っている。ここは渡渉は不可能であるため、岸の岩を乗り越える形で道が付けられているのである。

このような渡渉を何回か繰り返すと、この渡渉で最大の難所が現れた。前述のような函になっているところを今度は渡らなければならないのである。川の両岸に大きな石があり、その間の川底にも同じような大きく平らな石が見える。水深は膝上はゆうにあり、しかも急流である。どう通過すればよいかわからなかったのだが、どうやら岸からジャンプして片足を川底の平らな石に着地させ、そこを起点に再びジャンプして向こう岸の大きな石に飛び移るといいように思われた。

この時、ストックを持ってくればよかったと後悔した。実は新しいものを購入して持ってきてあったのだが、伸ばし方を教わらなかったために、すぽっと抜けてしまい、使い物にならなくなってしまったのだ。近くに木の棒でもないかと探したが、そんなものは見つからなかった。

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登山の記60・幌尻岳④

2006-06-24 21:31:53 | 旅行記

ゲートの横に入山届けがあるので記入する。見るとけっこうな数の人が入山しているのがわかる。週末だともっと混雑するのだろう。平日にしておいてよかった。

ここから約1時間半の林道歩きである。許可された車はこの林道を終点の取水口まで行けるのだそうだ。ネット上の山行記録を見ると、偶然そうした車と遭遇し、乗せてもらったりしているケースがあるようだ。私も淡い期待を抱いたが、結局遭遇しなかった。

林道歩きは実に単調で、しかもザックは重く、歩き始めてすぐに感じ始めた肩の痛みは、間もなくシビレに変わったように思えた。いい加減うんざりした頃に取水ダムに着いた。ここには駐車場があり、一台のワゴン車が停まっている。きっと事情のある人が入山しているのだろう。帰りにでも一緒になれるとありがたいのに、と思った。

ちなみにここまで誰とも会わなかった。以前ゆわんと村宿泊者10,000人目を答えるクイズで当選し、賞品としていただいた鈴を付けており、ずっと大きな音を立ててくれていたので、熊の心配はなかったが、それにしても深山奥深くを長時間一人で歩き続けるのはやはりちょっと怖かった。

取水口からいよいよ山に入る。初めは緩やかな川沿いの道を登っていく。いや、登っていくというほどの斜度はない。しかし、川岸のあちこちに大きな岩が点在しているので、それをよけるために結構アップダウンがある。

30分ほど歩くと、赤いテープが下がっているところに着く。ネットで見た最初の渡渉地点である。ここで登山靴を脱ぎ、ウェーディングシューズに履き替えるのである。ウェーディングシューズでなくても、普通のスニーカーでも何とか歩けるとも書いてあった。実際、渡渉地点には誰かがはいたスニーカーが何足か落ちていた。きっと、渡渉用の靴を持ってこなかった人が履き終えたものをここに放置し、同じように持ってこなかった人が使い回しているのだろう。(あるいは、ただ単に捨てたのかも知れない)

目の前の沢は30㎝ほどの水深がある。流れは緩やかだ。登山靴をザックに入れ、ウェーディングシューズに履き替えた。そしていざ水に入ろう、と思ったその時のことである・・・

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登山の記59・幌尻岳③

2006-06-22 21:11:35 | 旅行記

フェリーを下りると、小樽はどんよりと曇っていた。私がフェリーで北海道にやって来ると、たいていは曇りか雨であるのが不思議である。しかし、予報は晴れ時々曇りなので、天気の回復を期待しつつ、一路平取に向かった。

札幌の町を過ぎると、辺り一面が霧に覆われた。しかし、この霧の中地元ナンバーの車は朝からものすごいスピードで飛ばしていく。夕張の手前当たりから山に入るのだが、今度は雨が落ちてきた。雨が一番困る。景色が見られなくなるだけでなく、渡渉が困難になるからだ。登るのをやめようかとちょっと思ったが、1日目は幌尻山荘に行くだけなので、天気が悪くてもかまわない。天候の回復だけを祈り、とにかく登ることにした。

平取までは意外と長かった。そして、平取から登山口のゲートまでの林道も長かった。林道は対向車が来るとちょっと怖いくらいだったが、時間的に対向車のいない時間だったのでありがたかった。

登山口について車を停めようとしたが、停められる場所は既にいっぱいである。林道を少し戻り、道幅が少し広くなったところに車を停めた。車を降りると下は崖である。大雨が降って崖が崩れたら、車もろとも崖も崩れそうな感じである。でも、まぁ大丈夫だろう。荷物を確認した。渡渉でぬれることを考え、荷物はすべて大きなビニール袋にくるんでザックの中に押し込んである。果たしてぬれずに済むだろうか。そして、渡渉は無事にできるだろうか。不安が募った。

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登山の記58・幌尻岳②

2006-06-20 22:49:58 | 旅行記

幌尻岳に登るに当たってまず必要なのは、ウェーディングシューズと大きなザックの入手である。

前者は釣具店などを当たってみたのだが、カナリのお値段である。多分履くのは一回だけだろうから、その値段で買うのはちょっと躊躇された。そこでネットオークションを当たってみると、26.5㎝のものが3,500円で出品されているのを見つけた。ちょっと大きいが、1回しか履かないからいいだろうと思い、すぐに落札した。

後者は行きつけのアウトドア用品の店で購入した。60リットルのザックは背負ったこともないので、店員に尋ねて背負い方などをよく教えてもらって購入した。(実際山中で言われたとおり背負ってみると、重さはさほど気にならなかった)

次に行ったのは、幌尻岳の山行記録をネットで手当たり次第読むことである。特に渡渉に関しては、写真の掲載されているものを根気よく探して見た。どうやらガイドブックに書いてあるとおり、雨が降らなければ、一番深くても足の付け根くらいまでしか来ないようだ。水が少なければ、膝程度で済むという。実際に渡渉している写真もたくさん見て、おばさま方や小学生もちゃんと渡渉できていることがわかった。あとは雨が降らないことを祈るばかりであった。

日程は、北海道に着いたらそのまま平取に向かい、その足で登り始め、昼過ぎに幌尻山荘に到着して1泊、翌日は早朝から登り始め、昼までには幌尻山荘に下山して昼食、額平川と林道を下って夢民村YH泊、ということに決めた。雨が降った場合は、幌尻岳は後回しにして、中札内芸術村経由でゆわんと村直行、ということにした。そして、体を休めるために、フェリーでは初めてS寝台という個室寝台を取った。

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登山の記57・幌尻岳①

2006-06-18 21:05:58 | 旅行記

幌尻岳は、百名山の中でも最も遙かなる山として知られている。いや、その気になれば日帰り登山も可能な山である。ではなぜそう呼ばれるのか。

それは途中に百名山で唯一の、十数回の渡渉があるからである。しかも最も深いところでは股あたりまで水が来る。急流の函を横切るところもある。

登山中に大雨に遭遇すれば、渡渉が不可能になり、身動きが取れなくなる。実際に日高地方が集中豪雨に見舞われた時は、幌尻山荘に一週間もの間登山者が閉じこめられたこともあったくらいである。

北海道の百名山を一つずつ登って、残りは幌尻岳のみになった時、ゆわんと村で知り合ったK宮さんのHPで、K宮さんの幌尻岳の山行記を読んだ。そして、それなりの装備をすれば、私のような人間にも登れるということがわかった。そして2001年の夏、ついに登ることに決めたのである。

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登山の記56・会津駒ヶ岳④

2006-06-16 21:16:10 | 旅行記

昼食を済ませ、小屋の前に荷物をデポして、山頂に向かった。山頂までは一面の雪である。雪は締まっており、滑る心配はないので、皆めいめいのスピードでずんずん進んでいく。

山頂の手前で木道が現れた。どうやら私達が歩いてきたのとは別の場所に本来の登山道があるようである。山頂へはその木道の上を歩いてたどり着いた。

山頂からの眺めは素晴らしかった。東側は樹林帯で眺めはきかないが、南側には、今回本来は登るはずだった燧ヶ岳、その隣に至仏山が見える。その横の三角形のピークは景鶴山であろうか。西に目をやると、お皿を伏せたようななだらかな山容は平ヶ岳、その奥にお椀を伏せたような中ノ岳、その横には魚沼駒ヶ岳の三角形が見える。いずれも登ってみたい山ばかりであるが、私には遠く遙かな山である。(後に至仏山には登った)

山頂には私達だけしかいなかった。山頂標の前で交代交代で写真を撮した。

その後、登山道が北の方に続いているので、それを進んでみることにした。地図によれば、それを進むと、会津駒ヶ岳とほぼ同じ高さの中門岳という山にたどり着けるようになっている。

道はすぐに木々の間に入り、少し行くと視界が開けた。私達はまた歓声を上げた。目の前に、先ほど目にしたのと同じくらいの雪原が広がっていたのである。そして、その向こうには雪を頂く山々が続いていた。後で調べたところでは、おそらくそれらは浅草岳や守門岳であったと思われる。また、遠くに並んで見えていたのは飯豊連峰であろう。そうした山々が、真っ青な空に並び立っているのは、実に壮観な眺めであった。

雪原がやや高まったところ、そこがおそらく中門岳のピークであるように思われた。しかし私達には、そこまで行く時間も、そして何より体力も残っていなかった。やや心を残しつつ、私達は引き返した。帰りは樹林帯の中の木道を通った。小屋の前の荷物を背負い、後は登ってきた道をひたすらたどって下山した。足下の雪が消えると急に暑さが襲ってきた。駐車場に止めてあった車のドアを開けると、ムッとする熱気が出てきた。

帰りは檜枝岐の日帰り温泉で汗を流し、来た道をそのまま戻った。関越道では、魚沼駒ヶ岳の姿を、曇り空ながら見ることができた。あの山にもいつか登ってみたいと思った。

登るまでは遠い遠い山だったが、最高の天気、最高の眺め、最高の宿を堪能できた素晴らしい山行だった。

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登山の記55・会津駒ヶ岳③

2006-06-14 21:59:20 | 旅行記

樹林帯が途切れ、目の前がぱっと開けた。一面の雪原の向こうに、穏やかな山容を見せているのが、会津駒ヶ岳の山頂であった。私達は思わず歓声を上げた。青空をバックに、正面から東側にかけては真っ白な雪に覆われ、西側には針葉樹の濃い緑が続いている。そして、目の前の雪原は、そのまま山頂へ続いている。

私はそのまま雪の上を山頂まで歩いていきたかったが、昼時でもあるので、山頂の手前にある駒の小屋にひとまず向かうことにした。駒の小屋までは夏場は湿原になっているのだが、今は一面の雪で、ルートがよくわからない(そう言えば、深田久弥も残雪の時期に登ってルートを見失い、遭難しかけたことを「日本百名山」に書いていた)。ただ、宿の人から聞いていたとおり、前日に団体が入ったのことで、比較的明瞭に踏み跡ができており、それをたどって駒の小屋に着いた。

実はここへ来るまで、K崎先生は、一つのことを気に掛けていた。実はこの日行われるテストの問題を、保管用ロッカーから監督の先生の机上に運ぶのを忘れてきてしまったのである。それを監督の先生に連絡したいのだが、あいにく山の中では携帯は通じず、一刻も早く携帯の通じる稜線に出たかったのである。道理でいつもはかなりゆっくり登る先生が、今日は黙々と登っていたわけである。

稜線に出ても電波の状況は悪く、かろうじて1分ほど通事、早口で用件を告げると、それ以降は全く通じなくなってしまった。皆でホッと一息つき、小屋の前のベンチで腰を下ろし、宿でこしらえてもらったお弁当を広げた。宿の食事は夕食・朝食とも素晴らしかったが、お弁当もそれに引けを取らない見事なものだった。出来合いのものは一つも入っておらず、煮物、漬け物の味が特に見事だった。いつもは昼にはS藤先生が用意してくれるキムチ鍋などを頬張るのだが、この時はそれも不要だった。(まぁ、遠出ということもあって、S藤先生も用意もしていなかったが)

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登山の記54・会津駒ヶ岳②

2006-06-12 23:02:39 | 旅行記

翌朝は雲一つない素晴らしい天気だった。昨日までの不順な天候が嘘のようだった。心のこもった朝食を頂き、宿を後にした。

宿から登山口まで車で10分ほど。皆で写真を撮して登り始めた。いきなり樹林帯のきつい登りが続く。特に夕べ酒の進んだK崎先生、N岸先生、W林先生は辛そうだ。私とS藤先生は軽快に登っていく。もちろん3人のことを考え、何度も何度も休憩を入れて。

樹林帯がひたすら続き、展望はきかない。宿の前の道で見えた細い空は、雲一つなく真っ青だったが、果たして他はどうなのか。山々を眺めることはできるのか、不安が募った。花はまだ少なかったが、ピンク色のツツジがきれいだった。

長い登りに飽き始めた頃、木々の隙間から空が見えた。雲は見えず、どうやらかなり良い天気のようで、頂上からの展望も期待できそうである。ウキウキした気持ちで歩いていくと、水場に到着した。

水場に着いてびっくりしてしまった。大きな雪渓が残っているのである。宿の人が「今年はゴールデンウィークに大雪が降ったのがまだ溶けなくて、山の上はまだ雪ですよ。」と言っていたのを思い出した。岩の隙間から流れ出ている水が雪渓を溶かして、大きな穴があいている。その間をくぐって水を飲みに行った。例によってとても冷たい水である。

水場を過ぎるとすぐに雪が現れた。登山道がどこかわからなくなったが、幸い赤いテープが下がっているので、それを目印に登っていった。それにしても、昨日までの雨で、雪の表面は滑りやすくなっているので、足下を踏み固め、木の枝につかまりながら恐る恐る登っていくのである。しかし、暑さを感じ始めていた体には、雪の上を吹いてくる風はひんやりとして心地よい。

また、雪があるために登山道を気にしながら登る必要がなく、ショートカットも可能で、実際かなり近道をして登ることができたようで、ゆっくり登ったわりにはコースタイムとほぼ同じ時間しかかからなかった。

木々がまばらになってくると、目の前に空が見え始めた。どうやら山頂に近づいてきたようである。

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登山の記53・会津駒ヶ岳①

2006-06-10 22:48:18 | 旅行記

低山友の会に参加させてもらって2回目の山行は、N岸先生の発案で、会津駒ヶ岳に登ることになった。会津駒ヶ岳といえば、福島県にある2,000メートル級の山。低山友の会がどうしてこんな高い山に、と思いきや、実は燧ヶ岳に登るつもりで予定を立てていたら、宿泊予定の小屋が満員で(平日なのに)、急遽会津駒ヶ岳に変更したのだという。私はどちらも登ってみたい山だったので、すぐに参加OKした。

7月の期末試験のある1日の午後と、翌日1日を休んで、1日半で出かけることになった。メンバーは会長のW林先生、紅一点のS藤先生、K崎先生と言い出しっぺのN岸先生と私。車はK崎先生が出し、宿は登山口に一番近い、しかも山頂の小屋も経営している民宿を選んだ。平日なので、予約は簡単に入れられた。

問題は天気だった。とにかくこの年は天候不順で、毎日雨ばかり降っていた。もちろん、天気が悪ければ山には登らない。天気が悪ければ、沼山峠から尾瀬に行ったり、温泉に入ったりして帰ってくればいい、ということで、あとは運任せで出かけることにした。

出発の日も天気は今ひとつだった。高速道路を進んで、トンネルを抜けると、やはり天気は今ひとつ。空はどんよりと曇って、山は全く見えない。小出で高速を下り、山道に入る。奥只見ダムに続く長い長いトンネルを銀山平で抜け、あとは奥只見湖の岸に沿って、カーブの続く道を進んでいった。いい加減カーブに飽きた頃、道は山道に入り、いつかは登ってみたい平ヶ岳の登山口を過ぎ、満員で泊まれなかった尾瀬御池山荘を横目に、さらに進んでいくと、檜枝岐の集落に入った。この辺りでついに雨がぽつぽつ落ちてきた。どうやら明日もだめそうな雰囲気である。

今夜の宿は、檜枝岐の集落を通り抜けてすぐの、国道沿いにあった。宿はとてもきれいで、やはり宿泊者は私達だけだった。荷物を置き、集落にある温泉に入りに行った。宿に戻って夕食になったが、これが大変豪勢で、冷凍物の刺身やフライなどは一切なく、山菜をふんだんに用いた田舎風の家庭料理だった。皆ビールや酒もすすみ、大いに満腹になり、寝る前にもう一風呂、宿の風呂に入って、明日の天気を期待しつつ早めに休んだ。

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