新・むかごの日記

高槻市に在住の、人間と自然が大好きな昭和1桁生まれの爺さんです。
出かけるときはカメラ連れ。
目標は毎日1記事です。

夜気に充つ芳香:フウラン 

2005-07-17 05:43:33 | 植物観察1日1題
去年田舎のお寺の住職からいただいき、庭木の葉陰に掛けておいたフウラン:風蘭(ラン科)咲きました。もらったのは朽ちた古木に根を這わしていますが、本来は名のとおり風通しのよい木の幹や岩場にへばりついて育ちます。
最大幅で3mmほどの小さい純白の花びらの先端をよく見ると、あるかなきかの紫色が見えます。3~4cmほどある花柄よりも長くて伸ばせば5cmもあろうかという半月状になった距といわれる尻尾が特徴です。
江戸時代武士の間で人気があり栽培種が2百種もあったといいます。別名の富貴蘭というのも身分の高い人の間で楽しまれたからなのでしょう。
フウランは、朝方こそそれほどではありませんが、なぜか夕方から香りが強くなります。
夜、暗い部屋においていると、この小さい花から流れる、むせるような、けれども気品ある芳香が部屋中に充ち充ちます。純白の花といい、夜に香ることといい、夜訪れる虫を待っているに違いありません。

フジウツギに遊ぶアゲハハチョウ 

2005-07-16 07:25:49 | 植物観察1日1題
家の前の土手に植えたフジウツギ:藤空木(フジウツギ科)が咲いています。
兵庫県以東岩手県までと四国の向陽地に生える高さ60~150cm落葉叢状低木です。
7月~9月つぎつぎ枝先に10~20cmの長い花穂を垂れ下がらせ藤色の花を片寄せてつけます。
花冠は筒状で、穂の元から先端に向けて順次咲いてゆきますが、咲いた花からすぐに黒く変色するので、各々の花穂は咲き始め時だけきれいに見えるのが欠点です。
植物体には有毒のアルカロイドを含み人畜に有害だそうです。
この花がお気に入りなのか、しきりにアゲハチョウが蜜を吸いに来ます。蝶の写真はいい具合に撮れましたが、止まっているフジウツギの花のほうは盛りを過ぎていて少し残念です。

もう一つのさくらんぼ:ウワミズザクラ 

2005-07-15 06:16:00 | 植物観察1日1題
5月6日付”これでも桜です”の見出しで当ブログに書き込みしたウワミズザクラ(上溝桜)実が熟してきました。春、新枝の先に長い花序をつけて白い小花を多数つけていたのが、いま、やはり穂状の柄に黄色や赤の小さいさくらんぼをたくさんつけています。
このさくらんぼ山形地方などでは、杏仁子とよばれ、食用にされます。杏仁(あんにん又はきょうにん)とは、杏子(あんず)の実の内果皮の中の種を干したもので、漢方で鎮咳、去痰に用いられます。杏子の仁を用いた香りのよい杏仁豆腐も中華料理のデザートで人気です。実は山形では、このウワミズザクラの青い実を塩漬けしたものが、杏仁豆腐そのままの香りがするので、酒のつまみなどに珍重されているというのです。またこれで作った果実酒も美味しいそうです。
ものは試しと、たくさん実ったこのさくらんぼを摘んできて、塩漬けと果実酒を仕込みました。果実酒は時間を置くつもりで後のお楽しみですが、塩漬けは1週間ほどして色が茶色の変わったところで試食しました。成る程強い杏仁豆腐の香りがし、種のプチプチ感もあってなかなか乙なものです。しかし改まって美味しいかと聞かれれば、うーむ確かに珍味ですと答えておきましょう。
(余分に漬けていますので、ご希望の方はお申し出を)

クコ:ブーム去ってなお根強い人気

2005-07-14 07:10:20 | 植物観察1日1題
ずいぶん昔になりますが、クコが万能薬のようにもてはやされ一大ブームになったことがありました。それ以来種々さまざまな食材を用いる○○健康法が浮かんでは消えて行くなかでクコも一般の関心からはうすれてゆきます。
クコ:枸杞(ナス科)は、日本、朝鮮、中国の山野、海岸に生える高さ1~2mの蔓性落葉低木で、枝はよく伸び先は垂れます。夏、葉脇に目立たない小さな花をつけます。花冠は淡紫色、下部は紫のすじがあり上部は5裂して平らに開きます。
果実は楕円形の液果で、秋、鮮紅色に熟し、干しても色が変わりません。
一時の熱気はありませんが、実際に健康増進、滋養強壮の薬効があることは確かで、延命茶ともいわれる枸杞茶や、新芽で作る枸杞飯、実で作る枸杞酒などは、今でも一部に根強い人気があります。
でも忘れられたように林縁に咲いているクコは少しさびしそうです。実の熟すころ再び訪れて、枸杞酒でも仕込むことにしましょう。

捩れもまたよし:ネジバナ(捩花)

2005-07-13 06:19:21 | 植物観察1日1題
10数年前、当地高槻に移り住んだころ、家の前の土手にネジバナが群生していました。
あるとき男がしきりにそれを採集しているので何をしているかと尋ねると、その人は、趣味でウチョウランを栽培しており、この種を蒔くのにネジバナを使うといいます。蘭の種自体に発芽成長する養分がないため、蘭に共生する菌の力を借りる必要があることをそのとき知りました。そのネジバナも今ではその土手からすっかり姿を消してしまいました。
それでも今なお比較的よく見かける白と淡紅色のネジバナ(ラン科)は、別名“もじずり”の名でもよく知られる草原や堤防に普通に生える多年草です。
根元の葉の中から、15~20cmの花茎を出し、下唇のような花びらは外側に回り、縁に鋸歯があります。花を見ればネジバナの名の由来は誰でもわかります。
別名の“もじずり”からは、すぐに百人一首の“みちのくの しのぶもじずり 誰ゆゑに…”を想起しますが、これは昔陸奥国信夫郡で産出した、忍草(シダ植物)を用いて、捩れたように染めた布を指し、別名の由来にはなったかも知れませんが、歌の中のもじずり自体はネジバナとは、まったく関係ないそうです。

早朝観蓮会:蓮開く音は聞けずとも

2005-07-12 06:55:02 | 植物観察1日1題
例年6月の下旬から7月上旬までの土日、午前6時から万博公園内日本庭園で早朝観蓮会が開かれ、大勢の愛好家やカメラマンが朝露に濡れて咲く蓮の花をたのしみます。
蓮の葉の中心に穴を開け、そこに酒を注いで、中空の茎を下ってくるのを飲み干す象鼻杯
というのも人気です。
ハス:蓮(スイレン科)は、2千年前の大賀蓮で有名なように、化石植物として北半球温帯に広く発掘されており、太古は自生地が広かったと考えられています。
ハスの名は、古名のハチスの転訛で、実が蜂の巣に似ていることからきています。
インドの仏教では、蓮が仏陀の誕生を告げて開いたとか、仏を信じるものは死後、蓮の花の上で極楽往生するとわれ、また中国でも西方浄土に神聖な蓮池があるとされるなど、蓮は古くから仏教と密接に結びついています。仏像、仏具、お寺の庭園などに蓮の花が多用されているのもよく知られています。
蓮は早朝開くときに、ポンと音を立てるという説がありますが、残念ながら実際には聞いたことはありません。たぶん見ている間に開くところからの感覚的な話ではないでしょうか。

**お断り:万博日本庭園の早朝観蓮会は、今年は延長になり、7月16・17・18日も午前6時より開かれます。但し象鼻杯はありません。


それほど悪か:ワルナスビ〈悪茄子〉の花 

2005-07-11 06:10:51 | 植物観察1日1題
植物の名の由来は、通常諸説乱れて定かでないものが多いのですが、このワルナスビは牧野富太郎が「植物一日一題」で、名づけの由来を書いていることでよく知られています。。それによると、ある日博士が見つけた外来種を持ち帰り自宅に植えたのはよいが、地下茎でどんどん広がり、ついに境界を越えて隣家の庭まで進出し困ったところから、ワルナスビと名づけたそうです。
葉にも茎にも棘があり繁殖力の強いこの草、ワルナスビ(ナス科ホオズキ属)別名オニナスビは、ナスの花に似ていてジャガイモのように房になって咲きます。花後は球形の黄色の果実を成らせます。
名のとおり害草として悪名高いのですが、ここ万博外周道路の外側にある公園に群生するこの花は、おりからの雨にぬれて、白い花びらと黄色い蕊が、薄暗い樹下に浮かびあがって幻想的とさえ感じられて、名前のせいで実際以上に悪者にされているのではないかと、少し同情めいた気持ちになりました。

モリオガエルも住宅難?マンホールに産卵 

2005-07-10 07:26:18 | 植物観察1日1題
今日は、めずらしく草木以外の話題です。
高槻市を山へ30分ほど走り、京都市大原野のはずれのしいたけ園の裏側に、小さい流れが水溜りになったところがあり、毎年、モリアオガエルが独特の白い泡状の卵塊を産み付けます。今年もこの卵塊がみられましたが、日照り続きで池の水量が少ないためか、例年より卵泡の付き方が少ないように見えました。
“マンホール中にも生みつけている”とそこの主人が言いますので覗いてみると、ありました。近くにある地域の水道の取水所の複数のマンホールの中のコンクリート壁の鉄の金具にモリアオガエルが卵を産み付けているのです。
モリアオガエルは、普段は森林の樹上にすむ蛙で、4~7月の繁殖期、メス1頭に複数のオスが抱接し、水面に張り出した枝先や草の上に約300個の卵を含んだ白いあわ状の卵塊を産みます。孵化した幼生は水中に落下して成長します。
このマンホールの産卵、人間の目から見ると気の毒な気もしますが、考えてみると、池では、イモリなどが落ちてくる幼生を食べようと待ち構えているそうですから、マンホールの中は案外考えた末の安全な産卵好適地かもしれません。

クチナシ一輪流れ去って恋終わる 

2005-07-09 06:13:52 | 植物観察1日1題
公園の片隅に純白の花が芳香を放っています。クチナシ(アカネ科)です。
庭や公園によく見られますが、本来静岡県以西、四国、九州など暖地の少し湿ったところに生える常緑の低木です。蕾のときはねじれ、花びらは厚く6枚あり、中に雄蕊6本、雌蕊1本があります。果実を乾かしたものは、赤黄色の色素があり、家具を染めたり、料理の色づけに用います。
漢名の梔、梔子は、果実を酒器の巵に見立てたとか、和名のクチナシは、果実が熟しても開かないからクチナシ、あるいは果実の突起を嘴と見て、クチハシが転訛したとか諸説あります。
キャサリン ヘップバーン演ずる中年独身女性の旅先での束の間の恋を描いた名画[旅情](summertime ,1955年、デビット リーン監督)のラストで、失恋した女が見守る中、真白いクチナシの花が一輪、終わった恋を象徴するかのようにベニスの運河を流れ去ります。忘れられない印象的なシーンでした。(年齢がわかりますね)

エフクレタヌキモ…どこまで許せる?帰化植物 甲山湿原観察園にて(終)

2005-07-08 06:31:30 | 植物観察1日1題
甲山湿原を離れて、北山池の北側に甲山自然観察池があります。ここに北アメリカ原産の帰化食虫植物エフクレタヌキモ(タヌキモ科)が、黄色いランのような花をつけていました。
日本のタヌキモの仲間は7種類ほど知られているそうですが、いずれも葉は水中に沈んでおり、本種のように水に浮いて花を支えるものはないそうです。水面に放射状に延びた6本の葉についている捕虫嚢でミジンコなどのプランクトンを食べるほか、普通の植物のように光合成も行っているそうです。
市の説明書では日本に存在しない品種で、誰かがこの池に放ったらしく、困ったことだと書いていましたが、実際には10年以上も前に静岡県で帰化植物として認識されています。
(浅井康宏著「緑の侵入者たち」朝日選書1993年刊) 最近、外来生物法の成立などで注目されている帰化植物ですが、この可愛い花を持つ特異な形態の外来種が、池のところどころに咲いているのを見ると、つい許したく気持ちにもなりましたが、さて・・・。


ノハナショウブ:野花菖蒲…消え行く湿原に咲く 甲山湿原観察園にて(4)

2005-07-07 06:05:35 | 植物観察1日1題
ノハナショウブ(アヤメ科)も咲いていました。花菖蒲の原種であるこの花は、500年以上もかけて品種改良を重ねてきて400種以上もあるという豪華絢爛な花菖蒲とは違った、いかにも清楚な気品で私たちに安らぎを与えてくれます。
高原の湿地に野生する多年草のナハナショウブは、やや赤みを帯びた紫色で、径約10cm、外花被片は大きく楕円形で先が垂れ、基部には黄色部分があります。内花被片は長さ約4cmと小さく直立します。花菖蒲よりも細くて尖る葉は直立して、花を際立たせています。
ところで、花菖蒲の原種であるというなら、花菖蒲の以前から名前があったはずなのに、野に咲く花菖蒲だからノハナショウブと言うのは逆様の感じで、少し解せないところですがいかがでしょうか。

イシモチソウ:石持草…消え行く湿原に咲く 甲山湿原観察園にて(3)

2005-07-06 07:02:19 | 植物観察1日1題
モウセンゴケと並んで甲山湿原にもう一つの食虫植物がありました。
イシモチソウ(モウセンゴケ科)です。やせた山地に生える多年生の食虫植物で、葉は直立して高さ10~25cmとなり、まばらに枝を出します。葉は対生で、粘液を出す食虫葉になります。小さい虫が粘液を食べに来た時、虫の体に粘液がつき、葉のふちにある毛が内側に曲がって虫を捕らえ、粘液の中の溶解酵素で虫を溶かし養分にします。
この草を抜いて地面に置くと、小石が葉の粘膜にひっつくので石持草の名があるそうです。
写真では少しわかり難いですが、枝先に黄色く小さい花火のような葉を持っているのがイシモチソウで、ともに絡み合っている同じ背丈の茎に小さい丸葉をつけているのがアリノトウグサ(アリノトウグサ科)です。アリの巣の近くに生えることが多いのでこの名があります。

モウセンゴケ:毛氈苔…消え行く湿原に生きる 甲山湿原観察園にて(2)

2005-07-05 05:50:16 | 植物観察1日1題
モウセンゴケ(モウセンゴケ科)は、山野の日の当たる湿地に生える多年草の食虫植物で、土際に輪になってつくさじ形の赤い葉には表面に毛があって粘液を出しています。
虫はこの粘液を食べにくると、これに絡まり捕らえられ、粘液の中の酵素で溶かされ草の養分になります。モウセンゴケの生える湿地は普通酸性が強く、根の発育が十分でないので、葉から養分をとるようになっているそうです。しかし実際には、常時虫を捕らえられるのでもなく、いくらかは葉で光合成を行っており、虫が捕まれば儲けものといった生活をしているとの話もあります。
葉に小さい毛がたくさん生えているからモウセンゴケの名があります。苔の名がついていても、花も実もある立派な高等植物で、夏の間細長い花径を出し、白い小さい花をつけますが、残念ながら写真ではうまく写りませんでした。

カキラン:柿蘭(鈴蘭)…消え行く湿原に咲く 甲山湿原観察園にて(1)

2005-07-04 06:10:20 | 植物観察1日1題
6月下旬、機会あって西宮市の甲山湿原観察会に参加しました。
甲山湿原は、都市近郊にあり、六甲山系の中間湿原を代表する植物生態を身近で観察できる貴重な場所になっています。近年乾燥化が進み、今では一般の立ち入りを制限し保全が図られています。
そこでは、ちょうどカキラン(ラン科)が花盛りでした。日当たりのよい谷筋などの多湿の地に生える地生ランで、高さ50cmくらい、葉は茎を包むように5~6個つき先端はとがります。
6~7月に開花し、10輪くらいが横向きにつき、萼と大きくて長い苞葉の緑色と、樺色の花弁が対照的です。唇弁は白地に紫色の脈が走り、先端部が少し突出します。
花弁の色を柿色と見立ててこの名があり、別名の鈴蘭は、蕾のときの形を鈴に見立てたものです。
同行のある人によると、何十年か前には、いたるところに群生していて、自由に採集できたそうです。厳しい環境変化に耐えて咲き残るカキランに声援を送ったことでした。

岩湧山で出会った草木たち(終)キトラのメンガヤ:(雌萱?)

2005-07-03 06:10:34 | 植物観察1日1題
岩湧山といえばススキが有名です。
山頂付近の約8haのススキ原は、山麓の滝畑の区有地で、昔からキトラと呼ばれ、良質の萱を産出する萱場になっています。
山頂の看板によると、カヤ(萱・茅)は、ススキの一種で、オンガヤ(雄?)とメンガヤ(雌?)があり、主として平地に生えるオンガヤは太くて硬く、これに対し岩湧山に生えるのはメンガヤで、細くて柔軟なので、屋根葺きには最適だとしています。しかし、オン・メンは種類が違うのか、単に生育する場所による違いなの定かではありません。
キトラは昔から地元民の手で保全されてきており、最近では春の山焼きも復活したと聞いています。
標高897米の頂上では、眼下に泉南、河内の眺めが広がり、遥かに霞む大阪湾方面からの涼しい6月の風が渡ってゆきました。(岩湧山シリーズ終)