簾 満月「バスの助手席」

歩き旅や鉄道旅行のこと
そして遊び、生活のこと
見たまま、聞いたまま、
食べたまま、書いてます。

津軽海峡線(JR乗り潰しの旅)

2013-10-30 | Weblog



 「津軽海峡線」とは、正式な名称ではない。
青森から蟹田を経て三厩に至る55.8Kmの路線を「津軽線」と言う。
また、蟹田の先の中小国でJR東日本と北海道の境界を越え、青函トンネル
を抜けた北海道の木古内までは「海峡線」だ。



 そこから先、函館までの江差線や函館本線を含めて、青森から函館に至
る路線の愛称として付けられているのが「津軽海峡線」である。



 青森から蟹田までの間は、本州と北海道を結ぶ幹線で、凡そ1時間に1本
の特急が行き来している。
しかし、「津軽線」を行く普通列車となるとその本数は一日に10本に満たず、
それも途中の蟹田までで、その先終点の三厩までとなるとさらに半分ほどに
減ってしまう。



 最後尾に行って車掌に説明すると、困惑したように少し苦笑いをしながら、
「このまま終点まで行って、この電車で引き返すより仕方がない」と言う。
 「津軽線」はこんな状況だから、乗り間違えたおばあちゃんを心配したが、
どうやらこの列車は終点の蟹田で数分の停車の後、そのまま青森まで折り
返すようだ。



 どこかの駅で停車した折、車掌が勢いよく飛び込んできて、おばあちゃん
に何か一言二言伝えると、ようやく諦め納得が出来たのか、おばあちゃんは
大きく首を前後に二三回折り、頷いていた。
 「お手数掛けました」とわざわざ言い残し、車掌が慌ただしく列車を降り、
最後尾の車掌室に向けホームをかけて行った。
しばらくすると発車の笛が聞こえドアが閉まった。(続)

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乗り間違い(JR乗り潰しの旅)

2013-10-28 | Weblog
 運転席の後ろに、しがみ付くようにして立っているおばあちゃんが、何か
運転士に話しかけている。運転中の乗務員は、振り返ることも出来ず、前を
向いたまま何か答えているようだが、おばあちゃんには話がうまく伝わって
いない様子。



 時折電車の揺れに合わせて、おばあちゃんも大きく右に左に揺れ動き、
危なっかしくて見てはいられない。



 見かねて席を立ち、腕をつかみ「危ないから・」と、兎に角席に着かせ、話
を聞いてみる。
「私、弘前に行きたいんだよぅ・・」と、どうやら乗る電車を間違えたらしい。
「見たことない景色ばっかりで・・・」と不安を訴え、「どうして間違えちゃった
んだろ・・・」としきりに自分を責めている。



 その様子を見かねたのか、前に座っている二人のご婦人から、「おばあち
ゃんの間違えたの、私、わかるよ」と助け舟が出る。 つい先ほど「海峡線の
列車よね?」と確認し合いながら乗り込んできた二人だ。



 聞けば以前、海峡線の列車は5番・6番線のホームから出ていたらしい。
それが新青森駅の開業に合わせ、ここ青森駅での発着番線の再整備・変
更が行われ、いまは3番線の発車に変わっている。



 「久しぶりに出て来たら、わからなくって・・・」と件のご婦人方も言う。
「車掌に・・・」というおばあちゃんを、「代わりに聞いてくるからと・・・」座席に
押し付け、最後部(と言っても2両編成だが)の車掌室に行き、代わりに事情
を説明するのである。(続)






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駅前の「アウガ」(JR乗り潰しの旅)

2013-10-25 | Weblog



 「アウガ」は、青森駅前の再開発により2001年にオープンした施設で、ファ
ッションの店舗を中心に、カフェ・レストランや小物雑貨、100円ショップなどが
入る複合施設である。件のご婦人方が、「あの地下にある新鮮市場に行って
みろ」と勧めてくれたところだ。



 その地下には、海鮮・干物から野菜・果物、お菓子からお酒まで、いろいろ
な店が揃い犇めいていた。こちらも市民の台所として、あるいは観光客目当
てに、大きな声で客を呼び合っていて、活気に満ちている。



 一角には津軽三味線を聞きながら津軽の郷土料理が食べられるお店や、
ホタテ丼やうに丼、三色丼、マグロ丼などが格安で食べられるお店などが
何店も揃っている。



 そんな店の一つの暖簾をくぐり、カウンターに座り、うにとホタテとイクラの
乗った三色丼を注文した。



 うには少し甘みが有ってクリーミーで、それに薄味のイクラを含めて食べて
みると、口の中でプチプチと音を立てて弾け程よいからさが絡まって広がる。
 何よりも新鮮なホタテは引き締まった身が、その食感と相まって、何ともいい
味を出していた。



 昨夜、駅前のお店で食べた刺し身のホタテも、郷土料理「貝焼き味噌」に
添えられていたホタテも美味かったが、さすが本場の名産はどこで食べても
評判通りのうまさである。
 



 楽しみにしていた「のっけ丼」は幻に終わってしまったが、それを補って余
りある味と値段に大満足。
これまでの食事は、どこで食べたものも、外れなしの大ヒットである。(続)



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幻の「のっけ丼」(JR乗り潰しの旅)

2013-10-23 | Weblog
 次に乗る電車の待ち時間が1時間半ほどある。
この間で、急いで昼飯を食べる予定にしている。目的の店は予め調べ上げ、
決めていたので、道順を間違えることもなく、問題なく行ける筈だ。
傘をさすこともないほどの霧雨の中、目指す店に向けて早足に向かう。



 しかし、ここら辺りだと思うところまで来ているのに、周りを見ても目指す店
は見当たらない。少し範囲を広げ二三度周囲を回ってみるが見つからない。



 アーケードのある商店街の下駄屋の店先で四方山話を楽しんでいた三人
のご婦人方に「この近くに、のっけ丼の店は有りませんか?」と聞くと、「すぐ
そこだけど・・今日休みだよ」と言う。
「エエーッ・・はるばる訪ねてきたのに・・」「どこから?」「岡山から・・・」どう
やら今日と明日は、研修のために臨時休業しているらしい。



 駅から歩いて5分程のところに、昭和40年代から市民の台所として賑わっ
てきた古川市場が有り、「のっけ丼」はこの市場で食べることが出来るのだ。



 まず食事券(100円が5枚の500円券と10枚の1000円券がある)を購入する。
次にどんぶりご飯(普通盛り100円、大盛り200円)を購入する。
後は市場内の色々の店を回って、自分の好きな具材を選んでどんぶり飯に
乗せるだけである。



 「残念だったねえ・・、でも、そこにも安くて美味しいものいっぱいあるよ」と
目の前の建物を指さし、教えてくれた。(続)





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鉄道防雪林(JR乗り潰しの旅)

2013-10-21 | Weblog
 再び大湊の駅に戻り、折り返しの列車で青森に向かう。
キハ100形2両編成のワンマン運転の列車の乗客は十数名ほど、観光客は
いなくて、地元のお年寄りが多いようだ。





 途中、雨が降り出した。しとしとと降る雨が車窓を濡らし始めている。
そんな中、列車が何度も警笛を鳴らす。
線路際に野生動物でもいるのかと思ったがどうもそうではなく、両側の防風
(雪)林の根元の茂みの中で野草を探している人がいるらしい。



 この路線、強風地帯らしく両側を防風(雪)林に囲まれているが、その切れ
目から遥か山並みも見渡せる。
どこかに恐山も見えるらしいが、どの山がそれなのかよくわからない。



 青い森鉄道に乗換える野辺地駅の裏手に、見事な鉄道防雪林がある。
この整然と手入れをされた防雪林は、幅400m、奥行き60m、1250本にも及
ぶ杉の林である。
これは明治24年に開通した東北本線の冬季の雪害から守るために、その
翌年植林されたもので、わが国では最初の鉄道防雪林である。



 折からの雨に打たれ、防雪林の緑は鮮やかさを増している。
周りは公園のように整備されていて、幾つかの碑も建てられているようだ。



 興味をそそられたが、構内のすぐ脇ながら、行くとなると一旦駅の正面に
出て駅を回り込むようにしないと行けないらしく、少しの待ち時間では無理。
すぐ目の前なのに残念だ。



 野辺地の手前で降り出した雨は、浅虫温泉辺りではかなり激しく降ってい
たようだが、青森駅前に降り立ったときには霧のような雨に変わっていた。(続)





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斗南藩士 上陸の地(JR乗り潰しの旅)

2013-10-18 | Weblog
 折り返しの列車が出るまでにはまでに1時間以上も有り、その間で少し町
を歩いてみることにする。
駅前にはバス停も有り、タクシーも停まっている。
ロータリーの中央には、モダンなモニュメントも建っているし、左程大きくは
ないが新しそうなホテルも建っている。



 思い描いていた下北の終着駅のイメージとは少し違うことに驚きながら、
駅前の通りを右に進み駅を回り込むように15分ほど歩き、その裏手に出て
みる。途中行く先に見え隠れする山は、下北のシンボルと言われる釜臥山
(970m)であろうか。山頂のこぶが特徴的な山姿である。



 港の脇に名産のホタテを売る店が有り、その前をさらに進むと、いい匂い
を放つ濃いピンクの花に囲まれて碑が建っている。
碑には「斗南藩士 上陸の地」と書かれている。



 ここは、明治新政府から許され、新しい藩庁の置かれた田名部の地に、
新潟港から海路、蒸気船で移住してきた旧会津藩士とその家族あわせて
1800名が上陸した地である。



 碑は「ヒバの原木」に刻まれ、むつ市の花「ハマナス」と、会津若松市の
「アカマツ」に囲まれ、会津鶴ヶ城の石垣の石を使って作られている。





 港に近い町中の路地には、閉店した小さな飲み屋さんが幾つも、看板を
上げたまま残されている。
駅前の通りには古めかしい旅館の姿も見える。
かつては小さな町ながら、10軒以上も旅館があったと言う。



 その昔は軍港として、また大湊海軍航空隊が、現在は海上自衛隊大湊
地方総監部が置かれ、「自衛隊さんと漁師さんで繁盛した・・・」らしいが、
今はその勢いは失せているように見える。(続)




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てつぺんの終着駅(JR乗り潰しの旅)

2013-10-16 | Weblog
 沿線で少し活気のある町並みを見せる陸奥横浜では、列車の行き違い
がある。その昔は「陸の孤島・下北」と言う有り難くないニックネームを付け
られた地域に有って、この駅だけは人と積み出される魚の荷で賑わってい
たと言う。その名残なのか、レールを抜かれた構内がやけに広い。



 市街地が開けてくると下北の駅が近づいてくる。
ここは、下北半島観光の拠点駅で、「イタコ」で知られる恐山へは15キロ、
マグロで知られる大間へは47キロほどであり、駅前からはバスの便がある。
 廃止された大畑線はこの駅から分岐していた。



 下北を出た列車が、大きく西に進路を変えた後、南に下がり少し進むと終
着駅だ。



 「大湊要塞を中心とするこの辺りは、軍の機密保持の都合上から、日本の
地図から除外された空白の部分といえた」と、小説「飢餓海峡」で水上勉が
書いた大湊には、野辺地から1時間ほどで到着した。



 JR東日本最北の駅の地位を下北に譲り、終着の大湊は「てっぺんの駅」を
名乗っている。その駅に降り立ったのは僅かに数名であった。
作業着姿の男性のほとんどは下北で降り、迎えの車に乗り込んで行った。



 「よく来たにし」と迎えられ、列車を降り、改札を出ると、どこからともなく良
い匂いが漂ってくる。どうやらその源は、この駅の中にあるらしい。
駅員に聞くと「これは、ヒバの匂いです」と言う。
駅舎の天井に地元特産のヒバ材が使われているらしい。(続)






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はまなすベイライン大湊線(JR乗り潰しの旅)

2013-10-14 | Weblog
 大湊線は野辺地と大湊を結ぶ58.4Kmの路線で、「はまなすベイライン大
湊線」と言う素敵な愛称も付けられている。
列車は下北半島の付け根から、ほぼ陸奥湾に沿って北上する。



 青森や八戸から快速列車が日に何本か走ってはいるが、決して便利の良
い路線ではない。
概ね1時間に1本、昼間の時間帯にはそれがかなり間引かれている。



 路線は、平成5年から導入されたキハ100形2両編成のワンマン運転である。
この列車最高速度は100Km/hらしいが、この線区では85Km/h運転とのこと。
車内は意外にも作業着姿の男性客が多くどうやら毎日の通勤列車のようだ。



 市街地が広がるのは、次の北野辺地辺りまでで、次の有戸を過ぎると左手
に陸奥湾が見えてくる。右手の山並みは遥かに離れた丘陵地帯だ。
駅間は長く、集落も僅かばかり、辺りには人気のない海岸と牧場や広大な農
地が広がっていて、荒涼とした寂しい風景が続いている。



 ここらあたりは陸奥湾から吹き付ける西風の強いところらしく、線路は鉄道
防風(雪)林に囲まれた中を伸びている。
しかし、厳しい潮風に痛めつけられているからか、所々で赤茶けた無残な姿
をさらけ出している林も目立ち、その厳しさを窺い知ることが出来る。



 車窓からは、風力発電の大きな風車を何基も目にすることが出来る。
とにかく風の強いところらしい。(続)






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青い森鉄道(JR乗り潰しの旅)

2013-10-11 | Weblog
 この日青森は梅雨入りした。
昨年より9日遅く、平年に比べても4日遅い梅雨入りだとテレビが伝えていた。
空一面灰色の低く垂れ込めた雲に覆われているものの雨は落ちていない。
しかし急な雨には注意が必要と天気予報は呼びかけていた。



 東北を貫いていた嘗ての基幹路線である東北本線は、大きく変貌を遂げた。
東北新幹線がまず盛岡まで開業し、その後八戸まで伸び、さらに新青森まで
開業すると、盛岡から目時の間の82キロはIGRいわて銀河鉄道に、目時から
青森の間122キロが青い森鉄道に移管され、三セク化された。





 そんな中大畑線が廃止になった(2001年4月廃止)後も、大湊線だけが一
人取り残されたようにJRに残っている。
今朝はその大湊線の乗り潰しを目指している。





 二両編成の列車は、通学通勤のお客で満員だ。
女子学生はこの日が試験日なのか、みな一様に教科書やノート、プリントに
静かに目を落としている。
一方男子生徒はと言うと、皆うつむいて携帯端末をじーっと見つめている。
どうやら違う学校の生徒らしい。



 三セク化されたとは言え、嘗ての動脈はさすがに利用客が多い。
駅々で停まるたびに激しく乗客が入れ替わる。
途中無人駅が多いのか、ワンマン運転の車両に洒落た制服に身を包んだ
女性の車掌が乗り込んでいる。
そんな車掌も浅虫温泉で降りて行った。
どうやらここらあたりまでが込み合う区間らしい。(続)





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連絡船の町(JR乗り潰しの旅)

2013-10-09 | Weblog
 「リゾートしらかみ」が川部に到着した。
列車はここから奥羽本線を一旦弘前まで戻ったのち終着の青森に向かう。
このまま乗り続けていても良いのだが、ここで本線に乗換えれば30分ほど
早く青森に着くことが出来るので、乗り換えることにする。



 夕方7時少し前青森に到着した。
列車を降り、その先を見ると、人影の無いプラットホームが長く長く真っ直ぐ
に海に向かって延びていた。
広い構内には何本ものホームが有り、終着駅らしく沢山の列車が停留され
ている。そんな広大な敷地を跨ぎ横切るように、跨線橋が架かっている。

 みんなあの時見た光景と一緒だ。
いやそんな筈は無い、おそらく大きく変貌を遂げているのであろうが、何とな
く見たような、記憶の底に残っていた懐かしいものに再会したような愛おしさ
がこみ上げてくる。



 もうかれこれ半世紀も前のことである。
上野発の夜行列車が青森駅に近づくと乗客は大きな荷物を抱え、ぞろぞろ
と車内を前に前にと移動を始める。列車がホームに滑り込むと、人々は先を
争って飛び降り、連絡船の桟橋を目指して駆け出した。



 当時、函館まで4時間半を要した青函連絡船の船内で、少しでもいい席を
確保しょうと先を競っていたのだ。



 この日列車を降りた人の群れには背を向けて、誰もいない閑散としたホー
ムをその先まで歩いてみた。
そのホームの途中には柵が有り、それ以上先に進むことは出来ないが、その
先には一艘の大きな船が係留されているのが見えた。
かつて青函航路で活躍した八甲田丸である。(続)






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