簾 満月「バスの助手席」

歩き旅や鉄道旅行のこと
そして遊び、生活のこと
見たまま、聞いたまま、
食べたまま、書いてます。

四国遍路 街中の遍路道

2009-07-31 | Weblog
本来は、龍王山の北を鮎喰川に沿って進むが、我々は、工事中の迂回路から県道207号に
入り、龍王山の南を巻き込んで歩いてきた。
遍路道からは大きくずれていたので誰とも出会わない不安で寂しい一日となっていたのだ。
結局、大日寺までは、焼山寺を出て27キロ余りを歩いた事になる。

 【写真:大日寺】

宿に荷を解き風呂に入る。
足の裏を眺め、良くこれで歩いたものだと感心する。
左足に5箇所、右足に3箇所マメが出来ている。
小さなものでも小指の先、大きなマメは親指の先ほどになっている。
マメが潰れないようにしっかりと絆創膏で固め、今日も早目に床に付いた。

今日が最終日。
7時過ぎ宿を発った。
長閑な田園の道を2.3キロ進むと第14番札所常楽寺。
岩肌の出た石段を登ると「流水岩の庭」と名づけられた大きな岩盤の向こうに本堂が見える。

 【写真:常楽寺 流水岩の庭】

ここから800mほどで、第15番札所国分寺だ。
更に1.7キロほど行くと第16番札所観音寺が有る。
角を曲がると、ちまちまとした商店街の中に忽然と姿を現す山門が印象的だ。

ここから第17番札所井戸寺までは約3キロ。
途中、国道192号とJR徳島線の踏切を越える。
民家の庭に、白猫が10匹余りたむろしている面白い光景に出会い思わずカメラを向ける。

 【写真:猫の群れ】

井戸寺は中華風の赤い山門が珍しい。

18番恩山寺までは、昨日まで下ってきた鮎喰川を渡り、蔵元で再び国道192号に出て
徳島市街地に入り、眉山の裾を巻くように、18キロの道のりが有る。
さすがに市街地に入ると歩き遍路に出会う事は無い。
時々この道で大丈夫?と不安になるが、どうやらこの18キロは市街地でどの道を
通っても大丈夫と言う事から遍路は思い思いの道を通るらしい。

 【写真:徳島市街地を歩く】

市街地を歩くのは単調だが街の様子を見ながら歩くので、色々と楽しい事もあり
余り疲れを感じない。
阿波踊り会館までが7.5キロ。休憩するには丁度良い場所で有る。

 【写真:阿波踊り会館】
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四国遍路 第13番札所大日寺

2009-07-28 | Weblog
足の裏はズキズキと痛んでいる。
一定のリズムで歩き続けている方が痛みは少ない。
一旦休憩で止まると、次の歩き出す最初の一歩が何とも痛い。
それでももう前に進むより他は無い。

 【写真:大桜トンネル】

やがて道は「大桜トンネル」で峠を迎え、トンネルの先で道は下りへと転じている。
ここまでは、先の迂回路の分岐から4キロの道のりだ。
足のマメを潰さないように全神経を集中し歩く。しかし歩けども人家は出てこない。
さすがに不安になり、休憩を兼ね、橋の欄干に腰を下ろしていると通りがかりの
黒い車が声を掛けてくれた。

地図を見せ、
「自分の居場所が良く解らない。」と訴えた。
「この地図には出て無いね。」
「この道は207号。間違っていないからこのまま進めば、一の宮の小学校に出るから、
その手前を左に曲がれ。」と教えてくれた。

 【写真:国道を歩く】

ようやく灯りが見えたような気がした。
しかし、ここからが更に遠かった。
時折車が猛スピードで走り抜ける以外、遍路はおろか、全くと言って良いほど人と出会わない。
当然人家も無い。
歩けど、歩けど、鬼籠野(おろの)の地から抜け出せない。

不安半分、もう少しと言う期待半分。
ただひたすら痛い足を引きずるように歩くだけだ。
やがて道が緩やかになると一の宮町の道路標識が現れる。ああやっと来た。
しかしまだ人家は現れない。

 【写真:もうすぐそこに・・】

峠のトンネルから約5キロあたりで人家も増え、畑仕事の人と出会うようになる。
ここまで来ればもう残りは1キロほどとなる。
やがて狭いが交通量の多い道路に出ると大日寺はもう目の前だ。
眼前に大きな一の宮神社の森が広がると、その前が第13番札所大日寺だ。
やがて山門、10段に満たない石段が何とも高く感じられる。

 【写真:大日寺】
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四国遍路 温泉の功罪

2009-07-24 | Weblog
温泉に浸かり、昼食を済ませ12時少し前再び歩き始めた。
この時は、すっかり元気を取り戻したような気がしていた。

 【写真:神山温泉】

しだれ桜で、町おこしでもしているのであろうか?
国道438号沿いのいたるところにしだれ桜が植えられている。
そんな風景を見遣りながら歩くと、温泉から3.3キロで鬼籠野に到着する。
ここで国道を離れ、県道21号に入ると道は緩やかに登り始める。
立見峠への登りだ。



 【写真:鬼籠野】 

たいした登りではないのに足の裏がひりひりと痛み出した。
実は、温泉を出て歩き始めて10分もしないうちに足の裏に違和感を覚え始めた。
初めは、左足の中指の付け根辺りに気配を感じ、靴の中で足をずらしたり、
指を軽く曲げたりしていたら、今度は親指の付け根辺りも痛み出した。
こうなると性質が悪い。
左足を意識的に庇うから、今度は右足も痛み出した。踵も痛い。
温泉に充分浸けられた足は、すっかりその皮が柔らかくなってしまいマメが
出来やすくなってしまったのか。
どうやら、足のマメは、靴の中で左右を問わず急速に増殖を始めたらしい。

峠を降り、2キロほど進むと道は工事中、迂回路の表示が有る。
地図で見る限り迂回路が指す方向は目的地とは逆方向。
どっちを行くべきか迷いながら、近くにいた婦人に声をかけた。
「どっちに行っても大丈夫だが右に行ったほうが2キロほど短いはず。」

歩き遍路にとって2キロの差は大きい。迷わず右に進路を取った。
ところがこの道が以外にも曲者で有った。
民家が途絶えると、道は次第に山に入り込む雰囲気で登り始める。
大日寺を指し示す道標も無く、遍路と行き交う事も全く無くなってしまった。

薄暗い山道を、足を引きずるように登りながら、次第に心細さが募りだしてきた。
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四国遍路 神山温泉

2009-07-21 | Weblog
アスファルト道は緩やかに下り、一見すると歩きやすそうだ。
しかし、これだけ下りを歩き続けているとつま先が痛くなる。
爪を庇って歩けば次第に膝や太ももへのダメージが大きくなる。
どっちにしても足は痛い。
幸い曇り空と有って、アスファルトからの照り返しが無いのが救われる。

 【写真:焼山寺下のお休み処】

焼山寺から8キロ余り、下り道は、寄井の集落で国道438号に合流する。
神山温泉まであと3.4キロの地点である。

 【写真:国道に合流】

藤井寺で知り合った夫婦連れの遍路は、「主人の足のマメが酷いので
予定を変更して今日は神山温泉で泊まる。」と言っていた。
そんな夫婦がすぐ後ろを歩いていたが、今はその姿が見えない。

鮎喰川を左に見て歩く平坦な国道の道は単調だ。
7時過ぎに宿を経って歩き続けること3時間余り。時計は10時を過ぎている。

 【写真:神山温泉入り口】

 【写真:神山温泉】

やがて前方に道の駅 「温泉の里神山」の賑わいが見える。
その裏手、歩いて5分ほどのところに神山温泉は有る。
温泉は賑わっていた。

 【写真:賑わう温泉】

入口の券売機に600円を入れて入浴券を買い、フロントにザックと
金剛杖を預け、脱衣所に向う。
登山用の厚手の長い靴下を脱ごうと、立ったまま不自然な姿勢を取った瞬間、
左足のふくらはぎがつりそうになる。
やばい。ここで足をつらせたら大変だ。腰を落としゆっくり靴下を脱ぐ。
足の裏もかなり痛いが、幸いまだマメは出来ていないようだ。

青石の湯船にドップリと首までつかる。
ナトリウム塩化物・炭酸水素泉が身体にまとわりついて肌がツルツルする。
気持ちいい。疲れが抜けていくようだ。
このままいつまでも浸かっていたい気分だ。
縁石に腰をかけ、足湯のように膝から下を湯船につけ入念に、充分に時間をかけて揉み解す。

ゆっくりと温泉温泉に浸かり、これで足の疲れも幾分取れたような気がした。
しかしそれが間違っていた事に気付かされるのにさほど時間は要らなかった。
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四国遍路 山下り

2009-07-17 | Weblog
第12番札所焼山寺。
標高720m、四国霊場の中では三番目に高いところにあるお寺である。
境内には、杉の巨木が林立し、いかにも深山を思わす趣が有る。
ここからは四国山地の雄大な山々が眺められる。

 【写真:焼山寺境内】

遍路道は、ここから標高差520mを一気に駆け下りる。
目指すは徳島市街地の西端に位置する第13番札所大日寺。

“昔からの歩き遍路地図”を見ると、ここに至る道は二通り有る。
町営バスの終点から鍋岩までは同じルートを通る、
一つは、ここから玉ケ峠を越え、鮎喰川に沿って下る22キロ。
もう一つは、そのまま県道を下り、寄井の集落から国道438号を経て、
鬼籠野(おろの)から県道21号を行く25キロのルートで有る。

 【写真:下る遍路道】

前者は鮎喰川の清流が疲れを癒してくれる昔ながらの遍路道。
後者は、30分ほど所要時間が長くなるが、殆どがアスファルト道で
アップダウンも少ないと言う。しかも道中には神山温泉がある。
ここは迷う事も無く、温泉に心惹かれ後者を選択した。

焼山寺からは杉の落ち葉の覆う、急な坂道を転がるように下る。
真直ぐ下ると、靴の中で足が前に押され爪を圧迫する。
出来るだけ踵で降りようとすると太ももが張って痛い。それに膝にも来る。
ジグザグに歩幅を狭めて慎重に下るとやがて車道に合流する。

少し進むと大杉が見えてくる。衛門三郎縁の杖杉庵だ。
三郎は四国遍路の元祖と言われる人物で、ここが最後の地と伝えられている。

 【写真:衛門三郎とお大師の像】

ここから再び遍路道に分け入る。
急峻な下り道は、有る所は岩がごろごろ、有る所は草が茂り歩き辛い。
砕けた岩で足がズルッと滑るので足先には最新の注意が必要だ。

再び車道に合流するとやがて集落の中を行き、町営バスの終点から鍋岩に至る。
ここで左にとると遍路道。我々はそのまま県道43号を下る。
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四国遍路 第12番札所焼山寺

2009-07-14 | Weblog
「昔は2時間かけて焼山寺さんへ、毎日掃除しに登ったものだ。」
「あの山の上の、大きな木の辺りが焼山寺さん・・」と正面の山を指差した。

 【写真:焼山寺山】

「今は人が居なくなって・・・」
「そこの婆さんも爺さんも死んで今は空き家になっている。」と先の民家の方を見て言った。
「お茶をあげるといいのだけど・・・。家がそこの山の上で・・・。」
しきりに恐縮し、頭を下げる老婆と別れ、最後の登りに向う。

左右内川の手前に無人の販売所があり、1個100円の八朔が置かれている。
ここでビタミンCを補給し、橋を渡ると焼山寺山の登りに掛かる。

 【写真:焼山寺道の八朔】

最後の“へんろころがし 6/6”だ。
路傍の山野草が疲れを癒してくれる・・と言いたいところだが、そんな花を愛でる余裕は全く無い。
“これからが一番苦しい 頑張ろう”
こんな道標に励まされ、最後の力を振り絞る、とは言ってももう足は限界に近い。

 【写真:遍路道】

足を引きずるように登ると、やがて石切り場のある林道に合流する。
何となく山頂に近い雰囲気が漂う場所だ。
この先には広い林道が緩やかに登っている。
寺はもう近い。

ホッとしながら進むとようやく焼山寺の参道が現れる。後500mほどだ。

 【写真:焼山寺参道】

歩き難い玉砂利の道も、あの山道に比べればなんて事は無い。
大杉で奉仕していた孫連れの夫婦が参拝を終えて下って来るところであった。
「随分早く着いたね。」こんな風に労ってくれた。

最後の石段を登ると山門。
その先に杉の巨木が林立し、その先に本堂が見える。

 【写真:焼山寺山門前の石段】

やっと着いた。焼山寺にやっと着いたのだ。
藤井寺を発って約8時間。
長くて苦しい道のりでは有ったが、今は苦しさも、足の痛さも感じない。
さわやかな山の風が汗の額に心地いい。
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四国遍路 鐘の音

2009-07-07 | Weblog
“へんろころがし 5/6”。
道はここから再び下りに入る。
一歩又一歩と登りつめ、やっと到達した山頂から、今度は一気に350mの標高差を下るのだ。

 【写真:へんろころがし】

下りが楽とは侮れない。何せ、どうしても足先に力が掛かってしまう。
このまま歩き続けると確実に足の爪をやられてしまう。
足先に体重が掛からないように、重心を後ろに移すと今度は膝に負荷が掛かり太ももも痛い。
息こそ上がらないものの、足へのダメージは相当のものがある。
そんな下りばかりの道が延々と続く。

 【写真:へんろころがし】

風のざわめきと鳥のさえずりしか聞こえない山道では、人は苦しさの中で、無心になれるようだ。
ふと気が付けば、何も思わない、何も考えていない自分がそこにいる。
もう、ただただ、歩く事だけに全霊、全神経を集中している自分に気付く。
これが“無の世界”か、と悟ったような、そんなことを思いながらひたすら道を下る。

その時、静寂の世界に微かな鐘の音が聞えた。
向かいの山から聞こえてきた鐘の音は、おそらく焼山寺の鐘であろう。
焼山寺は近い、しかし、そう思えないのが辛い。

今は、何処まで降りるのかわからないような下りが延々と続いている。
それが終わると今度は最後の登りが待っていると言う。
この登りがこれまで以上に厳しいらしい。

膝をガクガクにしながら降りて行くと、久し振りに見る畑が広がり、ようやく民家の屋根が見えてくる。
標高400メートルの地点、左右内の集落だ。
日陰を見つけで休んでいると、土地の老婆が通りかかった。
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四国遍路 お大師さんの雰囲気

2009-07-03 | Weblog
柳水庵を少し降りたところに畳敷きの休憩所が有る。
松尾休憩所だ。
靴を脱いで上がり込み、足を投げ出し、お昼には少し早いが宿でつくってもらった
おにぎりをほおばり、しばしの休息を取る。

4つ目の“へんろころがし”は、標高750m、一本杉への激しい登り道だ。
「これを登り切ると大きなお大師さんが迎えてくれはります。」
例の、赤い納め札の遍路が励ましてくれる。

 【写真:へんろころがし4/6】

この頃になると、ただただ足元を見つめ、登っていると言うよりも、ひたすら足を持ち上げているだけだ。
休んでは登り、登っては休みの繰り返しで、登っているより休む時間の方が長くなる。
だから時間ばかりが悪戯に過ぎていくのに中々前に進めない。
足が張り、筋肉が痛み、時々ふくらはぎに変な電気が走るから、自ずと歩幅も小さくなり、
上を見る気力も無くなってくる。

そんな苦しみながら登っていると、やがて山中にしては・・と思うような立派な石柱の門と石段が現れる。
見上げると見事な大杉が聳え立ち、その前で巨大なお大師さんが、喘いで石段を登る遍路を迎えてくれる。
「ようここまで頑張った。」とそんな声が聞こえてきそうな雰囲気を感じさせる場所である。

 【写真:一本杉とお大師像】

お大師さんにお陰を頂いたと言う夫婦が、孫と犬を連れて大杉の周りを掃き清めていた。
聞けば月に一度ぐらい、こうして掃き清め、お大師さんに新しいお花をお供えしていると言う。
お礼参りを続けているのだ。

昔から残る焼山寺道の中でも、ここら辺りが一番お大師さんの雰囲気と出会える場所らしい。
標高750メートル。藤井寺を発って既に5時間が経過していた。
ここからは一本杉越えの下りが待ち構えている。

 【写真:一本杉越え】
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