簾 満月「バスの助手席」

歩き旅や鉄道旅行のこと
そして遊び、生活のこと
見たまま、聞いたまま、
食べたまま、書いてます。

53番・円明寺(四国遍路)

2012-10-31 | Weblog
 「今日はまだ4人しか・・・」と言うスタッフに、「もし逆打ちに会えば勧めてみます」と返し、
遍路談義に花が咲く。聞けば近くの学校の生徒さんが作業実習の一環で、地域の皆さんと
触れ合いながらお接待を体験するために毎月1日2日にここ和気公民館で開いていると言う。



 そんなお接待に気を良くし、長居をし、すっかり寛いだお蔭で、太山寺でのアクシデントも
癒えたようだ。
「愛媛県立みなら特別支援学校松山城北分校」の四人の学生さん、若い教官のMさん、それに
地域のみなさん、親身で暖かな“お接待の心”確かに頂きましたよ。本当にありがとう。



 再び県道を53番に向けて歩き出す。札所までは2.6キロと近く、市街地を歩くことに成る。

 狭まった県道の先に大きな立木が見えてきた。前に大きなバスも停まっている。
どうやらそこが第53番札所・円明寺らしいが、目はその前に、門前の“まんじゅう”の看板を
捉えている。見つければ何の躊躇もなく参拝の前でも立ち寄ってしまうのがこの二人。
さっそく名物の“うすかわまんじゅう”を味わってみる。



 寺は、うっかりしていると見過ごし、通り過ぎてしまいそうなほど入口の間口が狭い。
県の重文に指定されている八脚の仁王門を潜ると右に観音堂、左に大師堂が控え、正面に
本堂があり、バスの一団が大きな読経の声を響かせている。



 境内には、キリシタン禁制の名残である十字の形をしたマリア像を浮き彫りにした石塔が
有ったようだが、残念ながら見落としてしまった。(続)




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学生さんのお接待(四国遍路)

2012-10-29 | Weblog
 思い返せば「焼山寺道」でも同じような事が有った。
どうやら、我が心肺は急な運動量の変化に付いていくだけの能力がなくて、酸欠或は
貧血状態に陥ると言う事か。



 いつもなら、30分を目途に水分を補給し、その間に小さなチョコレート菓子か飴玉を一粒
含みエネルギーを補給する、それを心掛けてきたが、今日は駅からここまで、2時間近くも
歩いて来たのに全くそのことも怠っていた。

 そんなことも影響していたのかも・・・などと考えながら県道を歩いていると、突然道路の
向こう側から白いシャツの男性と二三人の学生さんに呼び止められた。

「お遍路さ~ん、休んでいきませんか?」



 誘われるまま横断歩道を渡ると、公民館の玄関の前にテーブルを並べ、歩きの遍路の
ためのお接待をしていると言う。

「食事は済みました?」「甘酒は?」「コーヒーは?」

 焼きそばやカレーライスを用意していると言い、先ほどの若い女性の歩き遍路もご馳走に
なっているらしいが、生憎つい今しがた済ませたところなのに欲張って甘酒と冷たいコーヒー
をお願いする。



 学生たちが、覚束ない手つきで飲物を運んでくれる。
お遍路の話が聞きたいと言う学生たちだが、恥ずかしいのか些か口が重いようではある。
それでもぼそぼそと、僅かばかりの会話が何とも初々しくて楽しい。



 「アッ、お遍路さンだァ」

一人の学生が突然叫び、指さした先の停留所に停まったバスの中にお遍路の姿があったが、
こちらに気付くはずもなくバスはそのまま行ってしまった。(続)


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アクシデント((四国遍路)

2012-10-26 | Weblog


 少し上ったところで、突然足の力が抜けるような感じがした。
「アレッ」と思い、思わず石の手すりに身を寄せ、掴りながら石段を登ろうと足を上げるが
何となく体が重い。 それでも何とか中ほどの平坦な所まで辿り着き、しばらく足を止め、
呼吸を整え再び石段に挑むが息苦しさは変わらない。



 それでもどうにか三ノ門に辿り着いたその刹那、フーツと気が遠くなるような感覚に足元を
乱され、堪らず崩れ落ちるようにすぐ脇のベンチに腰を落とす。

 ほんの二三秒、意識が飛んだ。
そのあとボーっとして、意識の混濁が有るような、浮遊感のある不思議な感覚に見舞われた。
冷や汗であろうか、全身に汗が噴き出していた。
シャツは勿論、ズボンまで大腿の形が解るほど黒い影となって汗が染み出している。



 実際にはもっと短時間だったのかも知れないが、顔面は蒼白になり、何か意味の分からない
呻きを一言二言発した(と相棒が言う。)らしい。

 気が付いた時には、何が有ったのか、何が起きたのか自分自身でも解らない。
本堂と三ノ門の間で、お百度参りをする女性をぼんやりと目で追いながら、暫く静かに呼吸を
整えていると、次第に回復していくのが実感できる。



 30分もすると俄かに空腹も覚え、駅で買ったおにぎりの袋を取り出す。
薄い包装紙も難なく剥がせ、咀嚼するのに問題もない。何よりも美味しいと味も解る。
体に格段の異常は残っては無さそうだ。



 おにぎりをほおばりながら、遍路が行き倒れるのはこう言う時なのか・・一瞬こんな思いが
過るのである。相棒に宜しく頼んだのは、言うまでもない。(続)


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52番・太山寺((四国遍路)

2012-10-24 | Weblog
 一ノ門の背後には瀧雲山が控えていて、その中腹に第52番札所・太山寺はある。
地図を見るとその山を越えるとすぐ下に瀬戸内海が広がり松山観光港が立地している。
 海に随分と近いにも関わらずこちらからは海は全く見ることは出来ない。
それどころか寺域一帯は、鬱蒼とした深山の趣すら感じられる。



 ずいぶんと構えの大きなお寺である。
一ノ門から山門に至る参道脇には沢山の民家が建っている。
それが途切れると二十数段の石段が現れ、その上に簡素な作りの仁王門が建っている。
これは鎌倉時代の創建で、重要文化財、そこに掛かる扁額は弘法大師の直筆と言う。





 仁王門を潜ると杉などの大樹の茂る急な上り坂の参道が数百メートルほど続いている。
途中右手に真新しい本坊があり、納経はここで受けることに成る。
更に進むと左には昔の遍路宿を彷彿させる建物も残されていてなかなか興味深い。



 急な坂を上り詰めると右手に石段が伸び、三ノ門(仁王門)が見える。
そこを潜れば境内が広がり、国宝の本堂があるはずだ。
この寺の本堂は桁行7間。染間9間、奥行きの深い単層入母屋造りで、簡素ながら豪壮な
作り鎌倉時代のものだ。



 その石段を一人の若い女性の歩き遍路が降りてきた。
急な坂を、息を切らしながら一気に駆け上がり、石段に取り掛かり、登り始めた辺りで
その女性とすれ違う。「こんにちは」と挨拶を交わしたその直後、異変が起きた。(続)


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どっちに向かう?((四国遍路)

2012-10-22 | Weblog
 駅を出てすぐに左折、伊予鉄の軌道敷に沿って県道19号を歩く。
朝のラッシュが一段落する時間帯とは言え、さすがに中心地の交通量は多く、街は
活気に溢れている。



 歩き始める前、駅前で休憩中のタクシードライバーに道を尋ねると、わざわざ自車まで
戻り、取ってきてくれた観光用のパンフレットを広げ、幾つかの目印を教えてくれた。
そして、「ここからだと、かすり会館前の県道を直進して、53番に行ってから52番に向かう
方が歩く距離は短い筈だ」とアドバイスをくれる。



 その目印の一つ、ボーリング場の角を左折し国道437号に入り次の目印「伊予かすり
会館」の大きな煙突を求め直進すること40分ほど、三島神社の森を見ながら右折すると
県道に入り、すぐに「かすり会館」が右手に見えてきた。


 
 そこから更に30分ほどで、左に向かうよう促す道標が現れ、「さあ、どうしたものか?」
とここで一思案。地元のドライバーだけに間違いはないだろうが、これまでに再三道を
間違えて辛い思いをしている弥次喜多コンビにとっては、打つ札所の順番を変えると言
う事は一大事。

 ここは臆病風を吹かせて、無難な選択を・・とお互いの思いが珍しく一致、左に進路を
取り、順番通り52番を目指すことにする。



 道はやがて住宅街を離れ、左に池を見ながらミカン畑に沿って山裾を巻くように延びて
行く。歩くこと20分ほどで前方に太山寺の一ノ門が見えてくる。(続)





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心の高ぶり(四国遍路)

2012-10-19 | Weblog
 前回、51番札所で歩きを終え少し奮発して道後の温泉旅館に泊まり、歴史ある湯に
つかり、しっかりと疲れを取りリフレッシュして松山駅から帰途についた。



 お彼岸以降、朝晩は寒いほどに気温が下がり、日中も30度を超えることもなく、過ごし
やすくなり、歩くには丁度良い季節になった10月の初旬、その駅に10時過ぎに到着する
「特急しおかぜ」で戻ってきた。





 道後温泉の近くにある石手寺から次の札所、52番・円明寺まではおよそ13キロ、
愛媛県の県都、人口51.6万人の松山市街地を抜けて行く。



 例によって駅前で遍路装束に改める・・、と言うほどの大げさな事もないが、帽子に
手製の日除けを付けそれを被り、白衣を着る。
ポケットに“納め札”を入れ、お茶とお菓子と地図を用意して、靴の紐を締め直す。



 身支度と言っても、たったこれだけの事ではある。しかし「よし、歩くぞ」と、こうして
歩き始めると、何とは無く軽い興奮のような心の高ぶりを感じるから不思議である。

 毎度のことながら、出だしはいつも元気が良い。しっかり前を見据えて歩くから、歩幅も
大きく、リズム良く足が出る。面白いことにこんな時は、肩の荷の重さも左程気になって
はいないから、自然に歩く速度も速くなる。



 心にも、体にも余裕があるから、周りにも良く目が行き届くし、何よりもお互いに口数が
多いのが元気な証拠だ。 こんな元気がいつまで続くのか・・・なんてことを考えながら、
区切り打ち九回目の歩き遍路が始まった。(続)


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222、222、222人(四国遍路)

2012-10-17 | Weblog
 大型で強い台風が足早に駆け抜けていった翌日、その名残か、黒く重そうな千切れた
雲が空一面に広がってはいるが、幸いに雨の心配はなさそうだ。
 今のところ現地の週間天気予報にも、雨のマークは付いていないから、本格的な雨の
備えは良いだろうと判断、今回は“百円ショップの手作りポンチョ”を持参した。



 朝7時過ぎに岡山を発つ「特急・しおかぜ」に乗り一路松山を目指す。
列車は高架で岡山の市街地を軽快に抜けると20数分で鷲羽山トンネルを抜け、最初の
下津井瀬戸大橋(1436m)を渡る。



 瀬戸内海に浮かぶ、塩飽諸島の5つの島に架けられた6つの橋梁と、それらを結ぶ
高架橋で構成されている「瀬戸大橋」を渡るのが瀬戸大橋線(愛称)である。
 ここには「寝台特急・サンライズ瀬戸」を初め、岡山と四国各県の県都を結ぶ特急や
「快速マリンライナー」などが運行している。





 同線は、昭和63年4月10日に開通して以来、今年の7月31日に延べ利用者数が
2億2千万人に達した。
 そこでJR四国とJR西日本は、延べ利用者数が2億2222万2222人を迎える日を
当てるクイズを行っている。応募は一人一枚で、締め切りは10月の31日だ。
正解者には全員にプレゼントがあるらしい。





 近年では、一千万人増えるのに503日かかっていると言うから、それから単純に計算
すると4か月足らずで達成できることに成る。
その日をズバリ、11月の20日と読んでみたが・・・どうであろうか。(続)




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手作り雨具(四国遍路)

2012-10-15 | Weblog
 高級な雨具は、素材も軽くて、構造的にも蒸れないよう工夫がされているらしいが、
その分値も張るのでとても手が出ない。作業用のゴム素材の雨具は、その点は安価
ではあるが重くて嵩張るし百円ショップの簡易ポンチョでは、些か心もとない。



 あれこれ悩んだ挙句、結局購入したのは数千円の登山用のポンチョである。
これは着丈も十分あるので足元も問題ないし、大雨ならこれにズボンを重ねれば完璧だ。
裾が開放されているが、風に煽られる心配も無いし、蒸れにくいのが何よりも良い。
ただ難を言えば、荷として持って行くとき少しばかり重いのが気にかかる。



 天気予報の降水確率が高く成る程に、このポンチョの出番は多く成るが、外れた時に
は文字通り重荷になるのはいたしかたない・・と思いつつも、それでもやっぱり背負う
荷は少しでも軽くしたい。



 そんなわけで最近は、百円ショップで購入した新兵器が登場した。
簡易ポンチョを二枚購入し、その一枚をベースに、もう一枚を解体した素材を手針で縫い
付け、袖と裾を長く継ぎ足してみた。さらに裾の前後をマジックテープで留められるように
し、風で煽られても捲れ上がらないように工夫した。



 使ってみるとこれは結構いける。何よりも軽いのが良いし、蒸れにくい。
破れても買い替えの負担が少なく、良い事ずくめである。しかし唯一の難は大雨の時、
長時間使用していると、ジワジワと針穴から雨が染み込む事・・・。

 こんなわけだから、今回も雨具はどうしようかと本気で悩んでいる。(続)


                            (写真は本文とは無関係)

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簡易ポンチョ(四国遍路)

2012-10-12 | Weblog
 遍路に限らず旅の持ち物は、あれもこれもと増やすと、とんでもなく重くなってしまう。
荷物は「何を持っていくか」と悩むより、「持っていかないもの」を決めるのがコツだとよく
言われる。
 即ち足し算ではなく引き算に引き算を重ね、絞れるだけ絞れば必要最小限のコンパクト
な荷が実現できると言うわけだ。



 そんな荷物の中で、「雨具はどうしよう」と何時も悩む。
雨に降られてしまえば、これほどまでに頼りに成り有難いものは無いが、好天に恵まれ
使う事も無いとなると、勝手なものでこれほど邪魔くさいものも無い。



 そこで頼りにしているのがその土地の週間天気予報であり、最近ではこれが出発前
の雨具持参の判断基準に成っている。


 
 ただ備えるだけなら良いが、多少でも雨の確率があるときは、一番先にその選択肢
から外されるのが「折りたたみ傘」である。



 次の選択肢は、百均ショップで売られている簡易ポンチョだ。
雨が降るかどうか解らないような時や、多少の雨ならこれで十分に凌ぐ事が出来るし、
何よりも軽いので、よしんば雨が降らなくても大した荷には成らなくて有難い。



 ただこれは、頭から被るだけの簡単なものだから、風混じりの雨が降ったときや、
車が頻繁に行き交う道路脇を歩く時などは、その風圧で煽られてしまい役に立たない
時もある。 従って、降水確率が高くなり本格的な雨の予報なら、きちんとした雨具で
備えをしていかないと大変なことに成る。(写真は本文とは無関係)(続)


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雨の日の歩き(四国遍路)

2012-10-10 | Weblog
 歩き遍路にとって、雨ほど厄介なものは無い。
だったら晴れていれば楽かと言えば、そうばかりとも言えない事もある。
 例えば、晴れてカンカン照りで、気温35度と言う中を歩いた時は参った。
しかし、これは帽子やタオルで日除けをして、長袖などを着て、出来るだけ
直射日光に素肌を晒さない事や、こまめな水分補給と適度な休憩さえ怠ら
なければ、どうにか凌げるものだ。



 しかし、冷たい雨の降る寒い日は本当に耐えがたく辛い。
肌寒いとは言え雨具を着ての長時間の歩行では、蒸れも有って少なから
ず汗をかく。そのため着衣は湿って重く成り、そのうえ濡れた肌着が体温
を奪い、必要以上に寒さを感じさせ、強いては体力を限りなく奪い取って
行くから始末が悪い。



 この事だけなら、自然の仕打ちで仕方ないと我慢は出来るが、自動車の
走る道脇を歩く時などは、行き交う車に思い掛けずシャワーの洗礼を受け
る事も有り、これにはとても我慢がならない。

 

 特に強力な風と共にまき散らされる大型トラックの水しぶきや、轍に溜
まった雨水の跳ね上がりには悩まされる事も多い。
時には顔面に不意打ちを食らう事もあり、こんな時は本当に腹が立つ。



 色んなことがあり、どの道雨降りは濡れてしまうので、休憩のたびごとに
何回も着替えをすれば良いのだが、最近では殆ど最小限のものしか持って
きていないので、着替えもままならない。
 結局は濡れたままで休んでいても、寒く成るばかりなので、こんな日は
休憩もそこそこに、勢い歩き続けることに成る。(続)


                            (写真は本文とは無関係)


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