穴村久の書評ブログ

漫才哲学師(非国家資格)による小説と哲学書の書評ならびに試小説。新連載「失われし時を求めて」

ジョイス・キャロル・オーツはノーベル文学賞をとれるか

2020-01-17 20:05:02 | ノーベル文学賞

 オーツという作家はよく知らないのだが、最近書店で目の止まって読んでみた。河出文庫の「とうもろこしの乙女、あるいは七つの悪夢」というタイトルである。

 というのは、彼女の名前が記憶に残っていたからなのだが、早川から出た村上春樹訳の「ロンググッドバイ」の後書き解説で村上が難しいことを書いていてオーツのチャンドラー評を紹介していたのが記憶に引っかかっていたのである。それに近年彼女がノーベル文学賞の候補にあがっているとの記事も見かけた。てなわけで書棚で目についたわけなのだ。

 短編集なのだが、ジャンルやテーマに関係なく文章がうまいことは間違いない。これくらいうまい人はめったにいない。最近文章がうまいなどという小説家は絶無といってもいいから強調してもいいだろう。

 こういう本は数ページずつ読むといい。プロットに魅せられたとかいって、ページターナーとか、徹夜で読んでしまうなどというキャッチコピーがいい小説のようにいうが、全然違うね。ワン・シッティングで数ページづつちびちび読んでも興趣が失せないというのが本当はいい小説なのである。もっとも私の意見を信じる必要はありませんよ。少数意見ですから。

 作家が書くスピードと読者が読むスピードはあまり乖離しないほうがいいというのが私の考えである。もっとも相手(作家)にもよるが。少なくと遅読に耐えられる作品が優れた作品であることは間違いない。

 彼女はものすごい多作家らしいから短編を数作品読んで彼女の作品のジャンルは、などとは言えないが、該作品はホラーっぽい、あるいは異常心理を扱ったものかな。それも家族内の葛藤を画いたものが多い。しかも双子の間の相克を数作品で取り上げている。あまりない設定ではないかな。

 さて、彼女が下馬評どおりにノーベル文学賞を受賞するかどうか、だが分からない。ノーベル賞の選考委員にはすこしエンタメ色が強いと感じるのではないか。ただ高齢であるので受賞の可能性もすこしはあるかも。最近のノーベル文学賞の受賞者は高齢者がおおそうだし。村上春樹もそろそろ高齢者の基準だけからいえば圏内かもしれないが。

 

 

 


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