穴村久の書評ブログ

漫才哲学師(非国家資格)による小説と哲学書の書評ならびに試小説。新連載「失われし時を求めて」

詐欺書「サピエンス全史」

2017-01-04 23:04:13 | 詐欺書「サピエンス全...

 先ほど(四日夜10時前からのNHK)でクローズアップ現代とかいう番組で「世界的ベストセラー、サピエンス全史」というのをやっていた。拙劣低級な番組であった。あきれた。太鼓持ちには不足がなかったようだ。池上彰なるお調子者まで出張っている。

出版社が詐欺広告をするのはしょうがない。業界別の広告の悪質さでは出版業界が一番悪質であるのだから。不動産業界、サラ金業界、エステ業界も真っ青な誇大詐欺宣伝屋がそろっている業界である。

実は二、三ヶ月まえに私は広告につられて上巻を買った。すぐに詐欺と気が付いたので途中で読むのをやめた。勿論下巻も買わなかった。それが先ほど9時のニュースを見ていたら、此の本を取り上げるという予告編だ。騙された、という経験があるので一体どう「お太鼓」を持つのかなというのでつい、続けてみてしまった。

人類が発達して来たのはフィクションを信じる能力を持っていたからだというのだな。この辺はまだいい。フィクションというよりかは「概念」という方が適切だとは思うが。人間の言語能力の取得としてすでに多くの人が取り上げている。上巻で人類の歴史を認知革命だとか農業革命だとかいっているが、これらは既に多くの本で述べられていることで、出版屋がいかにも独創的な著者の考えだというのはどう考えても誇大である。この辺で詐欺と気が付いた。

詐欺の最たるところは、人間は拡大発展にも関わらず不幸になってきたというのだな。それはいい。そういう見方もある。段々不幸になってきたというのだ。そうかもしれない。キーワードは「しあわせ」なんだが、これも「お金」、「会社」などと同様にフィクションなんだよ。なにが幸せかというのはアリストテレスからカントにいたるまで苦心惨憺して定義しようとしてきた未解決な『人類最大のフィクション』なんだよ。そんなものが役にたつのか。

それを「しあわせ」という人類史上一度も合意したことのないフィクションを特効薬みたいに扱う。此の本は悪書である。あらゆる宗教は幸せを求めてそれぞれ自派の特効薬として売り出している。それがてんでんばらばらだからいつも殺し合いをしている。欧州の宗教戦争、現代の中東戦争などがそれだ。

ある意味では「しあわせ」に取り憑かれない方が世界は平穏平和なのかもしれない。

此の番組で著者がインタビューに出て来たが、以上のべたことは著者が一番自覚しているようだった。あまりの反響に「やばいな」というおどおどしたところがあった。「そんなに持ち上げられて大丈夫かな」という感じでね。

この番組はまえに国谷とかいう人物がやっていた7時台の「クローズアップ現代」の後継番組らしいが、この番組の編集者は相当低劣幼稚である。すぐに番組は中止した方がいい。

 


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