
1位 夏暁(なつあけ)の納沙布 FMのノイズ ダウ90000 蓮見翔(特待生4級)
【自 解】北海道東端の納沙布岬は日本で一番最初に日が昇る場所である。
友達と車で朝日を見に行ったことがあった。
端っこなのでラジオもきれいに入らない。
車の中でノイズがかかったまま日の出を待っていた。
【解 説】後半の「FMのノイズ」は、あると言えばあるフレーズ。
しかし前半がしっかりしている。
夏の暁、短い夜が明けようとしている。そして納沙布の地名が大事。
日本で一番早く日が昇る場所へ行こうとしている。車とは書いてないが、この書き方でカーラジオのFMに違いないと、読者は勝手に想像する。
そして岬に近づくほどノイズが激しくなっていく。その距離感を「ノイズ」で表現している。作者は朝日を声を上げて眺めたのではないか。
季語の「夏暁」がしっかり主役に立って、地名が季語を支えている。
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以下の4句については、TVerで解説がされた。
番組内で優勝を争った句は横尾さんということだったので2位としたが、TVerでは順位をつけずに解説だけだったので、あとは段位順とした。
2位 能登は虹 一棟貸しの 露天風呂 横尾渉(永世名人)
【自 解】以前番組のお題で能登の「千枚田」があった。
梅沢さんに実際行ってみた方がいいと勧められ行ったことがある。
その時の思い出と、地震後の復興で頑張っている能登に希望の虹を架けたい思いもあった。
【解 説】能登と季語「虹」との取り合わせが復興のイメージやエールで、読者も同じ思いを共有できる。残念だったのは後半部分が上五と少し離れてしまっている。
能登が「伊勢」でも「萩」でも成立してしまう点である。
能登ならではのものが入っているとよかった。
【自 解】宮古島では、庭の水道の蛇口を捻ると、ホースに溜まっている水が熱湯みたいに熱くなっている。
そこで暮らす人たちは、そんな環境も受け入れて暮らしておられる。
【解 説】季語は「炎(も)ゆ」。盛夏の燃えるような熱気のこと。「宮古島」の地名はちゃんと機能している。
「水は炎ゆ」の描写にオリジナリティーがある。
ただ能登の句と同様、暑い所にある3音の島でも詠めるというのが少し惜しかった。
【自 解】伊豆の下田に行った時の思い出。
たくさんの向日葵が咲いている道を抜けると海が広がっていて、思わず駆け出した。
【解 説】気持ちのいい句。「や」の切れの後に走り出す人物に映像がスッと行くのは確かな技術。ただ「観光地」という意味において、どこの場所かわからないのが他の地名を入れた句に一歩及ばなかったと点と言える。
しかし、2句とも地名に頼らず詠もうとした作者の初志貫徹の姿勢を褒めたいと思う。
油照り 影が溶け出す 中田島 立川志らく(名人7段)
【自 解】日本三大砂丘のひとつ、静岡県の中田島砂丘は母の故郷の近くにある。
子どもの頃に行ったことはなかったが、大人になって行ってみた。
真夏の暑い日で、観光客の影さえも溶けていくような印象があった。
【解 説】中田島がどういう場所か調べてみた。砂丘とわかると上五中七の描写はいいなぁと思う。
惜しいのは、中田島を知らない人にも少しのヒントが欲しかった。
「砂」「砂丘」が入るとグンと映像化ができる。
全25句の中で個人的に好きだったのは以下の3句。
夏暁の納沙布 FMのノイズ
舳先より 泡盛の神酒 一礼す
雪渓のピザ屋 品川ナンバー来