min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

久保俊治著『羆撃ち』

2009-07-12 12:46:06 | ノンフィクション
久保俊治著『羆撃ち』 小学館2009.4.25第1刷 1,700円+tax

オススメ度★★★★★

現代に生きる孤高のマタギ(プロハンター)と彼の良き伴侶であった北海道犬(アイヌ犬)フチの物語である。物語といっても小説ではなくノンフィクションであるが。
とにかく驚いた。何が驚いたかと言えば、このようなマタギが我々と同時代に存在した、という事実である。
マタギといえば直ぐに頭に浮かぶのは、秋田県の阿仁を中心とするマタギたちで、それも過去の伝説と化しつつあるのが実情だ。
彼らは熊の狩猟においては“巻き狩り”という独自の集団的狩猟方法をとっていたことで知られる。
一方、本編の著者久保田氏はあくまでも単独による狩猟方法をとり、羆もしくわエゾシカを一人(後に犬と)で何日も山中を追跡し仕留める、という驚異的な狩猟を行うのだ。
1947年生まれというから現在62歳。今は北海道中標津で牧場を経営する傍らたまに猟をするようであるが、彼が大学生であった時に自らをマタギとして、狩猟のみを生業にして生きていこうと決意したという。
時代背景を考えれば彼が小樽商大の学生であった時の日本は、まさに高度成長経済を迎えんとする経済の絶頂期であったと思われ、周囲の同級生はもちろん就職活動に専念する中、彼は己の生きる道を全く別な所に求めていたわけだ。
これは並みの人間が考えることではない。彼の狩猟に対する情熱、自然への、そして野生動物への限りない愛情と執着の度合いが伺われる。

本編で描かれる北海道の自然の厳しさと美しさ、そしてそこに生きる野生動物たちを狩る時の著者の描写は単なる狩人のそれではない。
優れた動物文学者の手による、迫真の描写に読者は魅了される。特に、凶暴さにおいては我が国で第一位の存在であろう羆を追い詰め、渾身の一撃を与える瞬間の命のやり取りの様はただただ驚愕し、同時に感動する。

そして彼の生涯のバディとなったフチとの邂逅、成長の様、そして避けることが決して出来ない運命的決別。特に愛犬フチとの別れは涙なくして読めない。
本当に久々に感動した一遍である。

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