min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

米映画『フューリー(原題:Fury)』

2014-12-04 16:10:35 | 映画・DVD
米映画『フューリー(原題:Fury)』

おススメ度:★★★★☆


監督:デビッド・エアー
製作総指揮:ブラッド・ピット
キャスト:ブラッド・ピット、ローガン・ラーマンほか

米国映画としての戦争映画は最近少ない気がする。自分が観た戦争映画として記憶している最近の作品としては
プライベート・ライアン(1998年)
シン・レッド・ライン(1999年)
戦場のピアニスト(2003年)
硫黄島からの手紙(2006年)

くらいなもので、往年の作品数と比べると確かに少なくなった気がする。

戦争の舞台は第二次大戦で、ベルリン陥落までほど近いと思われるドイツ国内。連合軍の米国戦車隊の一台のシャーマン中戦車を中心に描く対独侵攻作戦。
この戦車にはあだ名がついている。その名はフューリー(Fury)、“憤激”の意味である。
ウォーダディー軍曹が率いるシャーマン戦車はある激戦の後、操縦士を失った。後方陣地に戻った戦車は故障個所の修理と新兵の補充を受けた。配属された新兵は8週間訓練を受けただけの18才の少年兵。副操縦士として配属されたものの、自ら戦車の中は一度も見たことがないと正直に語るのであった。
4台のシャーマン戦車は歩兵とともに次の攻略地点(村)を目指して出撃した。途中ドイツ兵の待ち伏せに遭い、他の戦車乗員が火だるまとなった。
新兵のノーマンは藪の中に潜む敵兵を見付けたのであるが発砲しなかった。いや出来なかったのであった。味方の死がノーマンのせいだ!と激しく責められるのだが「自分は一分間に60文字タイプする能力はあるが人は殺せない!」と叫ぶ。
そんなノーマンをみたウォーダディー軍曹は捕えたドイツ兵の射殺を彼に命ずる。出来ない!と泣きわめくノーマンを引きずり、手に拳銃を握らせ、力ずくで発砲させドイツ兵を処刑したのであった。
ウォーダディー軍曹は北アフリカ戦線に始めて投入されその後フランス、ベルギー、そしてドイツと転戦して来た。今こうして生きているのは運もあるが、敵を殺して生きてきたのだ。だからお前も敵を殺せ!とせまるのであった。
残り少ない戦車隊4台の次なる任務は交通の要衝となる、ある十字路の確保であった。その地点に向かった車列を突然襲ったのは当時世界最強であったティーガー戦車であった。たちまち3台のシャーマン戦車の装甲が破壊されたのであるが、フューリーは敢然とこのティーガー戦車に立ち向かったのであった。この戦闘場面は本編中でのクライマックスの一つである。
そしてなんとか辿りついた十字路で地雷に触れて立ち往生してしまったのだが、そこへ進軍して来たのはドイツ軍SS大隊の300人であった。5 対300人の戦いとなるのだが、果たしてフューリーは任務を遂行出来たのであろうか?

臨場感溢れる激しい戦闘シーンばかりがこの映画の売りではなく、ハリウッド映画にしてはめずらしく米兵の蛮行(捕虜の私的処刑やら女性へのレイプなど)をも描き出している。戦時での人間の狂気を余すことなく描くことによって「平和は理想であるが歴史は残酷だ」とウォーダディー軍曹の口から吐露させる。
この映画はもちろん戦争映画であるのだが、新兵のノーマンの成長譚でもある。上述のようにタイプしか打てなかった彼が、数々の戦闘を通して、軍曹が語る「フューリーは俺にとって我が家みたいなもんだ」というように、フューリーの家族の一員となっていく物語なのだ。最後に家長でもあるウォーダディー軍曹が息子のようなノーマンに示した“愛情”に観客は涙することになる。