高野秀行著『謎の独立国家ソマリランド』本の雑誌社 2013年2月 第1刷
2,200円+tax
おススメ度:★★★★★
著者は早稲田大学探検部出身の異色ルポライターで、僕はかって彼が探検部所属時代のエピソードを綴った「ワセダ三畳青春記」を読んだ程度しかないが、妙に魅力のある作家だなと記憶に残った。
さて、そんな著者が何でまたソマリアに興味を抱いたのか不思議であるのだが、そんな著者以上にソマリアについて知りたいのが僕なのである。
洋の東西を問わず現在のソマリアがどうなっているのか、その実態を自らの足で歩いて取材した本などあったろうか。
この著者の「他人の行ったことが無い、そして誰も知らないモノを探したい!」という持ち前の好奇心がソマリアをターゲットにしたものと思われる。
僕が青年海外協力隊の一員としてケニアに赴いた年、1977年の7月にソマリアは突如隣国エチオピアに侵攻し、いわゆる“オガデン戦争”が勃発した。結局ソマリアはこの戦争に敗れその後大統領も失脚し国は無政府状態に陥ったと聞く。だが何がどうなったのかはさっぱり分からない。情報が圧倒的に不足する中、我々が見聞きしたソマリアの状況は映画「ブラックフォークダウン」で描かれた狂気の戦闘が行われた首都モガディシオであったり、近年多発する海賊のことばかり。
そんな中著者高野氏はソマリアへ入って行ったのだ。同氏の分析ではソマリアは一つの国ではなく、大きく3つの地域、政権に分かれるという。
国際的には未承認ながら平和な独立国家としての体裁を整えるソマリランド、海賊の拠点プントランド、そして著者いうところのリアル北斗の拳、南部ソマリア。
混沌とした南部ソマリアを“北斗の拳”と例えたところが極めてユニークで、実はそうとでも例えねば説明しきれないソマリ社会の特殊事情がある。
アフリカ諸国のほとんどは部族社会を基盤とした国づくりがなされているのだが、ここソマリアはいくつかの主要な氏族とその分家からなる「氏族社会」なのだ。
この視点こそがソマリアを理解するキーワードとなる。
僕が個人的に興味を抱いたのは高野氏が現地でミラー(ミロとも呼ばれ、原産地イエメンではカートという)という覚醒作用をもった植物について記した部分だ。実はこのミラーを知らずしてソマリア人を理解することは出来ない。
ケニア時代にソマリア出身の女性と付き合って、僕もナイロビ在住のソマリア人社会に出入りし幾度かこの“ミラー・パーティー”を経験したのであるが、この効果はちょっと言葉では難しいかも知れない。戦争で行けなかったものの本当に行きたかった国というのが実はソマリアなのである。
2,200円+tax
おススメ度:★★★★★
著者は早稲田大学探検部出身の異色ルポライターで、僕はかって彼が探検部所属時代のエピソードを綴った「ワセダ三畳青春記」を読んだ程度しかないが、妙に魅力のある作家だなと記憶に残った。
さて、そんな著者が何でまたソマリアに興味を抱いたのか不思議であるのだが、そんな著者以上にソマリアについて知りたいのが僕なのである。
洋の東西を問わず現在のソマリアがどうなっているのか、その実態を自らの足で歩いて取材した本などあったろうか。
この著者の「他人の行ったことが無い、そして誰も知らないモノを探したい!」という持ち前の好奇心がソマリアをターゲットにしたものと思われる。
僕が青年海外協力隊の一員としてケニアに赴いた年、1977年の7月にソマリアは突如隣国エチオピアに侵攻し、いわゆる“オガデン戦争”が勃発した。結局ソマリアはこの戦争に敗れその後大統領も失脚し国は無政府状態に陥ったと聞く。だが何がどうなったのかはさっぱり分からない。情報が圧倒的に不足する中、我々が見聞きしたソマリアの状況は映画「ブラックフォークダウン」で描かれた狂気の戦闘が行われた首都モガディシオであったり、近年多発する海賊のことばかり。
そんな中著者高野氏はソマリアへ入って行ったのだ。同氏の分析ではソマリアは一つの国ではなく、大きく3つの地域、政権に分かれるという。
国際的には未承認ながら平和な独立国家としての体裁を整えるソマリランド、海賊の拠点プントランド、そして著者いうところのリアル北斗の拳、南部ソマリア。
混沌とした南部ソマリアを“北斗の拳”と例えたところが極めてユニークで、実はそうとでも例えねば説明しきれないソマリ社会の特殊事情がある。
アフリカ諸国のほとんどは部族社会を基盤とした国づくりがなされているのだが、ここソマリアはいくつかの主要な氏族とその分家からなる「氏族社会」なのだ。
この視点こそがソマリアを理解するキーワードとなる。
僕が個人的に興味を抱いたのは高野氏が現地でミラー(ミロとも呼ばれ、原産地イエメンではカートという)という覚醒作用をもった植物について記した部分だ。実はこのミラーを知らずしてソマリア人を理解することは出来ない。
ケニア時代にソマリア出身の女性と付き合って、僕もナイロビ在住のソマリア人社会に出入りし幾度かこの“ミラー・パーティー”を経験したのであるが、この効果はちょっと言葉では難しいかも知れない。戦争で行けなかったものの本当に行きたかった国というのが実はソマリアなのである。