min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

矢月秀作著『もぐら』

2013-01-11 00:36:12 | 「ヤ行」の作家
矢月秀作著『もぐら』中公文庫 2012.4.25 第一刷 各667円+tax

1998年C★NOVELS『もぐら』に加筆したもの

オススメ度 ★★★☆☆

いわゆるハリウッドB級アクション・ムービーを観ているごときの小説。これを読んだ時期、風邪にやられて熱っぽく食欲も全くないままふとんの中に臥せっていた。日中寝てばかりいたのだが、かと言って安っぽい芸人主体の正月オバカ番組をみる気もしないので、相当軽めに思えた本作を手にした。
こんな時にちょっと前に読了した『遺棄』みたいなホラー・サスペンスを読もうものなら死にそうな気分になったに違いない。
さて、本編はやめデカで今はトラブルシューターとなった男の物語であるが、デカを辞めても尚警察と深く関わり続けて活躍するところに他の警察小説とは違っている。
世に“警察小説”と称するジャンルの作品はあまたあるが、多くは公安警察と刑事警察との確執を描いたり、同じ警視庁でも本庁と県警間との縄張り争いを描いたりしており、極めて日本的な組織内部での確執を描く場合が多いような気がする。
本編の作者は敢えてその枠組みみたいなものを無視するかたちで、従来の警察小説からはみ出ている。というか作者自身が日本の警察機構をあまり知悉してないのじゃないかと思われる節が多々見られ、この点をつっこみたい気持ちを持つと本編は楽しめない。
とにかく元刑事である本編の主人公影野竜司(通称もぐら)のスーパー・バイオレントなキャラが魅力。僕を含めた一部の読者に潜む“破壊願望”をとことん追及してくれる。
実はこの『もぐら』はシリーズ化されており、5編くらい既に刊行されているようなのだが、2作目はパスしてよさそうなので現在3作目を読んでいる。一作目で収監されてしまった“もぐら”はどうなるんだろう?という単純な興味で読み進めているのだが、「ふふん、そういう手を使ったか」とニヤリとさせる手法でシャバに戻り、更にエスカレートしたハード・アクションを繰り広げる。
病気は気分が落ち込んだ時におすすめのシリーズかも。