min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

百田尚樹著『BOX!』

2011-08-13 00:22:16 | 「ハ行」の作家
百田尚樹著『BOX!』 大田出版 2008.7.8 第1刷 1,780円+tax

オススメ度:★★★★★

『永遠の0』『風の中のマリア』と読み進めてきたのであるが、友人たちから強く『BOX!』も読むべきだ!という声に押されて読むことにした。
正直言って、内容が学園ものでそれもアマチュアボクシングにかける2人の若者の成長譚らしいと分かった時、若干躊躇するものがあった。
というのもかって、いろんな作家がスポーツの種類は違えどこのジャンルを描いているのだが、何故か自分的には好きな分野とは言いがたい。よって、『永遠の0』から『風の中のマリア』へと手を伸ばした次第であった。
だが、百田氏の力量を考えれば自分の独断と偏見は捨てるべきと判断し読み始めた。冒頭、やはりボクシングと言えばこのような書き出しになるであろうと想像した通りの展開となり、いかにも陳腐なプロットの展開になるのでは?と危惧したのだが、今回も良い意味で百田氏に裏切られた。
とにかく主人公の少年ふたりと彼らに絡む先生や級友たち、そして強敵となって少年ふたりの前に立ちはだかる他校の選手(モンスターと呼ばれるほどの強敵)の人物造形とからみかたが絶妙に旨いのである。
本作は著しく成長をとげる少年のひとり木樽優紀とボクシング部顧問となった高津耀子教師のふたりの視点から描かれる構成となっており、とかく視点が絞られがちな少年からの一方的思考、行動をうまく抑えた表現で物語は進行する。
またアマチュアボクシングの中味やプロボクシングとの違いに関して、耀子の視点から読者にも旨いこと伝わるような手法を採っているのが憎いほど上手である。

さて物語のクライマックスを迎えるにあたって、作者は一体どのように結末を持っていくのか!?とハラハラドキドキしたのであるが、何とも見事に纏め上げてくれたではないか。
エピローグにおいて、優紀と鏑矢、そして耀子のその後が読者の想像力を刺激し余韻の残る終わり方にしている。この辺りはやはり作者の並みの作家とは違う優れた“構成作家”たる力量のなせる技と言えるだろう。拍手!