min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

垣根涼介著『ボーダー ヒートアイランド4』

2010-06-13 15:02:08 | 「カ行」の作家
垣根涼介著『ボーダー ヒートアイランド4』 2010.4.24 初版 1,700円

オススメ度:★★★☆☆

かって、渋谷でストリート・ファイトのイベントを行い、渋谷を中心とするちょっとワルな若者たちを熱狂させたグループ“雅”はある事件を境にグループを解散した。
グループを率いた若きリーダー、アキとNO.2のカオルの姿も忽然と渋谷の街から消えた。

アキはその後本作のシリーズでその活躍を知ることが出来たのだが、カオルは一体どうしているのであろうか?と、多くの読者が思っていたことであろう。
そのカオルは何と東大生になっていた・・・・
カオルはある種退屈で孤独な学生生活を送っていたのであるが、ある筋から今、“雅”をかたるグループが再び渋谷の街でストリート・ファイトの興行を行っていることを知る。
友人のつてでチケットを入手したカオルはニセ“雅”が主催するイベント会場に足を踏み入れて愕然とする。
ニセモノのアキとカオルがイベントを取り仕切り、会場に集まった若者達に向かって当時のヤクザを潰したのは我々“雅”であったことをとくとくと自慢しているのだった。
これは決して看過できる事態ではないと思ったカオルは何とか音信不通のアキに知らせねばと行動を開始する。

今回はさほど派手なアクションがあるわけでもなく、正直シリーズ第一作『ヒートアイランド』、『ギャングスター・レッスン』そして『サウダージ』を読んでいなければ物語の展開がピンとこないだろう。
それと特筆すべきことは、今回、あの垣根涼介のデビュー作となった『午前三時のルースター』の主役、長瀬慎一郎がカオルの同級生として登場すること。
もちろん、「裏金強奪」グループのプロ犯罪者である柿沢と桃井も登場し、かっての“雅”の中心メンバーたちも登場する。
いわば“オールスター・キャスト”のファンサービスの様相を呈しているわけだ。
したがって、本シリーズを読みついできた読者にはたまらない魅力となるが、そうでなく初めてこのシリーズに触れる読者にはさっぱりワケがわからないかもしれない。
垣根涼介の大ファンである私にとっては、かのデビュー作『午前三時のルースター』を思い起こし(かなり詳細に著者はこの作品内容を本作で描いている)、この作家がたどった作品群のことへも思いをめぐらすことが出来て幸せであった。
本「ヒートアイランド」シリーズは垣根作品の中でも徹底的にエンタメ性を狙ったものであり、軽く読み流して楽しめるシリーズである。
続編もあることを期待している。