min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

ロバート・ホワイティング著『東京アンダーワールド』

2010-06-05 23:06:48 | ノンフィクション
ロバート・ホワイティング著『東京アンダーワールド』角川文庫 2004.4.25 初版 838円+tax

本書は2000年6月に角川より刊行された単行本を文庫化したもの。

オススメ度:★★★☆☆
ニューヨークのイースト・ハーレムで生まれ育ったイタリア系移民の子ニコラ・ザベッティは第二次大戦終結後に米軍GIのひとりとして東京へ進駐した。
退役後一旦生まれ故郷のNYに戻ったものの、東京で一発当ててみようと舞い戻って来た。
彼は東京にてありとあらゆる“ボロイ儲け商売”に手を染める。
その大半は米軍の闇物資の横流しであった。ユニークな商売として当時力道山の登場で日本国民を狂喜乱舞させたプロレスでの八百長外人レスラーになったりもした。
そんな彼が目を付けたのがイタリア系だけあって、本格的本場の味を持つピッザ・レストランの開業であった。
このレストランは大当たりし、当時の東京に居た外国人のたまり場となり、更に政界、闇社会、高級娼婦などありとあらゆる人々がやってくるようになる。
ニコラはまたたくまに財力と人脈を築き上げ、いつのまにか「東京のマフィア・ボス」と呼ばれるようになる。
その後日本人と4度の結婚をし、事業の上でも繁盛と破綻を繰り返す波乱万丈の人生を送ることになる。
戦後の在日アメリカ人の中でも際立った破天荒な人物の目を通し、戦後日本の混乱期からバブル経済までの日本を特異な切り口で著者は描いてみせる。

実在した有名な人物が実名で登場して、今まで我々には思いもつかなかった事実をバンバン抉り出してくれる。
例えば著者と親交が深かった力道山の死をめぐる事実関係を初め、日本のフィクサーと言われた児玉誉士夫や小佐野賢二、住吉連合会の町井、ロッキードのコーチャン、田中角栄、金丸信などなど戦後から現代に至るまでの闇社会、政財界の隠されたエピソードが満載なのである。

著者ロバート・ホワイティング氏は米国の大学から上智大学に編入し、政治学を専攻。卒業後日本にとどまり出版社に勤務。後に『菊とバット』や『和をもって日本となす』を上梓し、日米比較文化の視点から書かれた両書は日米双方から注目を浴びたとのこと。
本作は日本人ではまず書くことがない世界を描いておりなかなか興味深い内容である。