min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

ドン・ウィンズロウ著『ストリート・キッズ』

2010-04-17 13:01:02 | 「ア行」の作家
ドン・ウィンズロウ著『ストリート・キッズ』 創元推理文庫 1993.11.19 初版 960円+tax

オススメ度:★★★★★


『犬の力』で圧倒されたあのドン・ウィンズロウのデビュー作である。『犬の力』とは全くトーンの違う作品を書いているのであるが、とにかくストーリィテリングの上手い作家で、その才能は鬼才と言ってもよいだろう。
ああ、なんでこの作家の存在にはやく気が付かなかったのでろうか!
後悔などしないが、逆にまだまだ彼の作品がたくさんあることを発見し喜んでいる。

さて、本作であるが、ニール・ケアリーという探偵シリーズの第一作となる。
探偵といってもこいつが極めて異色な探偵でなのである。

時は1970年代の後半。ニールはNYのアッパー・ウェストサイドで生まれ、父親の顔は知らず母親はヤク中の売春婦である。
ろくに食事も与えられない状況から9才からストリート・キッズのひとりとなり、自分の食いぶちのためにかっぱらいを始める。
11才の時パブで飲んでいた男の上着からサイフを盗み取ったのだがこの男に捕えられる。
この男の名はジョー・グレアムといい、“朋友会”という金持ちの銀行家の私設探偵である。
グレアムはニールの中に何かキラメクものを見出し、自分のアシスタントとすることに決め、自らの持つ全ての技術、知識を注入する。その前にニールに対し、人として生きるための生活術から教え始める。
ニールは彼の期待を越えて成長し、その高い能力を銀行家に認められ、私立の学校からコロンビア大学への学費を出してもらうほどになる。銀行家はニールに対し高価な“投資”を行ったわけだ。
そんなニールに与えられた任務は、米国民主党の次期副大統領候補の失踪した娘を民主党大会が開催される前日までに連れ戻すことであった。
彼女をロンドンで見かけたという彼女の同級生の唯一の手掛かりを元にロンドンへ飛ぶのだが・・・・

内容はいたって単純で探偵ものの他の小説にいくらでもある話なのだが、作者ドン・ウィンズロウの手にかかると何んとも軽妙洒脱な物語とあいなる。
特に主人公ニールのナイーヴさと軽口の妙は抜群に魅力的で、思わず抱きしめてやりたくなるほどだ。
また11才の時に拾われその後“養父”的存在となったジョー・グレアムとの関係は、パーカーの『初秋』を彷彿とさせるものがあり、このシリーズの最大の魅力となっている。

現在第二作目の『仏陀の鏡への道』にさっそくとりかかっているが、このシリーズはまだあと3作品あるようで楽しみにしている。