min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

笹本稜平著『不正侵入』

2009-08-24 07:53:34 | 「サ行」の作家
笹本稜平著『不正侵入』 光文社文庫 2009.7.20第1刷 876円+tax

オススメ度★★★☆☆

最近と言わずかなり以前から、多くの作家が「警察小説」の領域に足を踏み入れてきた。どうもこれは自分の穿ったものの見方かも知れないのだが、書くべき小説のネタが尽きた結果、安易にこの分野に入ったのではないか?と思われる節が多い。
そんなな中でも、今野敏や佐々木譲といった作家たちは成功例と言えるだろう。

さて、本編の作者笹本稜平であるが、もともとこの作家は硬質な冒険小説の傑作を生み出してきたことの印象が僕の中では強くあり、日本の冒険小説作家の中では最も好きな小説家のひとりであった。
その彼が上述のように警察小説の分野に「素行調査官」をもって参入して来た時にはある種複雑な想いを抱いた。結論としては彼の試みを無視することになった。その後の本作の上梓である。
この作家は本格的に警察小説を描くつもりであることが分かり、それではしょうがない?読んでみることにした次第である。

内容の紹介は割愛するが、本編が警察小説の中で内容が特異なものであることは認められない。いたって“ありふれた”内容であると言っても過言ではないだろう。正直、最終場面に近いところの展開がなければ★ふたつであったかも知れない。この最終場面近くにきてやっと笹本稜平らしい硬質な「男の生き様」が描かれたと思うからだ。それまでの展開ははっきり言って冗長だ。

やはり、出来ればこの作家には今一度胸がわくわく踊る「国際サスペンス」物の世界に立ち返ってもらいたい。