金子貴一著『秘境添乗員』 文芸春秋 2009.4.25第1刷 1,500円+tax
オススメ度★★★★☆
前作の『自衛隊イラク従軍記』に続く本作である。本作において前回はあまり語られなかった著者本人の人となり、というか生い立ちから語られ、非常に興味深いものがあった。
自らの高校時代を「不登校児」と振り返り、その不登校という極めて後ろ向きな自らの人生を変えるべく考えたのがかなりユニークだ。
社会問題を解決するには“自らの中に多くの文化を取り入れ、世界共通の社会問題を観察しよう”という奇想天外な発想を抱いたわけだ。
そこで留学したのが米国はアイダホ州にある田舎の高校。ホストファミリーのオヤジは、若かりし頃はロスでヘルスエンジェルの頭目であった、という変わり者。
しかし、今は子育てに厳格な父親であり、金子氏へも厳格に接した。妻のカナダ人もまた著者に対しては容赦ない英語のスパルタ教育を実践した。日本では「不登校児」であった金子氏は、逃げ出すわけでもなく相当ハードに鍛えられて帰国した。
一年後、著者の金子氏は何を思ったのかエジプトの首都カイロにあるカイロ・アメリカン大学に入学しアラビア語を学ぶことになる。何故アラビア語を学びたいと思ったのかは明らかにされないが、かくして金子氏は流暢な米語を操ると同時に7年間の猛勉強で培ったネイティブに近いエジプト方言アラビア語使いとなったわけだ。
その後自らが企画した怒涛の中東及び中国、西アジア方面への“秘境旅行”のツァーコンダクターとなるわけだが、そのツァーの中味の濃いこと、あきれるばかりだ。
あまりにハードなスケジュールと超マニアックな目的地及び観光対象を読むと、一度は金子氏に連れて行ってもらいたい、という好奇心と同時に、こりゃシンドイ旅だろなぁ、と怯む心が同時に湧いてくる。
それもしても変わったお方だと思う。旅に参加する方々の様々な要求、要望に対して何とか応えようという努力には頭が下がるし、参加者の我が儘にも驚異的な忍耐力で接する。
わけても、口の悪いババァが登場するのだが、僕だったら絶対にキレて怒鳴り返したであろう場面にもことごとく紳士的に対応する。たいしたもんだ。ここまでくるとアッパレ!としか言いようがない。
ちょっと論点が飛ぶように感じられるやも知れないが、金子氏のイスラム教、キリスト教、更に世界の宗教に造詣が深い理由のひとつに、氏の仏教への深い知識が根底にあるのではなかろうか。
それも昨年なくなられたご母堂の影響が色濃いように伺われる。何を言いたいかといえば、国際的になるということは、諸外国の知識以上に自らの出生国の歴史、諸事に精通せねばなれない、ということ。
同氏の存在は改めてそのことを知らしめてくれる。
オススメ度★★★★☆
前作の『自衛隊イラク従軍記』に続く本作である。本作において前回はあまり語られなかった著者本人の人となり、というか生い立ちから語られ、非常に興味深いものがあった。
自らの高校時代を「不登校児」と振り返り、その不登校という極めて後ろ向きな自らの人生を変えるべく考えたのがかなりユニークだ。
社会問題を解決するには“自らの中に多くの文化を取り入れ、世界共通の社会問題を観察しよう”という奇想天外な発想を抱いたわけだ。
そこで留学したのが米国はアイダホ州にある田舎の高校。ホストファミリーのオヤジは、若かりし頃はロスでヘルスエンジェルの頭目であった、という変わり者。
しかし、今は子育てに厳格な父親であり、金子氏へも厳格に接した。妻のカナダ人もまた著者に対しては容赦ない英語のスパルタ教育を実践した。日本では「不登校児」であった金子氏は、逃げ出すわけでもなく相当ハードに鍛えられて帰国した。
一年後、著者の金子氏は何を思ったのかエジプトの首都カイロにあるカイロ・アメリカン大学に入学しアラビア語を学ぶことになる。何故アラビア語を学びたいと思ったのかは明らかにされないが、かくして金子氏は流暢な米語を操ると同時に7年間の猛勉強で培ったネイティブに近いエジプト方言アラビア語使いとなったわけだ。
その後自らが企画した怒涛の中東及び中国、西アジア方面への“秘境旅行”のツァーコンダクターとなるわけだが、そのツァーの中味の濃いこと、あきれるばかりだ。
あまりにハードなスケジュールと超マニアックな目的地及び観光対象を読むと、一度は金子氏に連れて行ってもらいたい、という好奇心と同時に、こりゃシンドイ旅だろなぁ、と怯む心が同時に湧いてくる。
それもしても変わったお方だと思う。旅に参加する方々の様々な要求、要望に対して何とか応えようという努力には頭が下がるし、参加者の我が儘にも驚異的な忍耐力で接する。
わけても、口の悪いババァが登場するのだが、僕だったら絶対にキレて怒鳴り返したであろう場面にもことごとく紳士的に対応する。たいしたもんだ。ここまでくるとアッパレ!としか言いようがない。
ちょっと論点が飛ぶように感じられるやも知れないが、金子氏のイスラム教、キリスト教、更に世界の宗教に造詣が深い理由のひとつに、氏の仏教への深い知識が根底にあるのではなかろうか。
それも昨年なくなられたご母堂の影響が色濃いように伺われる。何を言いたいかといえば、国際的になるということは、諸外国の知識以上に自らの出生国の歴史、諸事に精通せねばなれない、ということ。
同氏の存在は改めてそのことを知らしめてくれる。