min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

日本沈没第二部(その2)

2006-09-18 18:53:17 | 「カ行」の作家
感想の続きです。

日本人の「アイデンティティ」については国土があろうがなかろうが議論は可能であるが、国土が無くなった場合その核心がより鮮明になることは確かだ。
本作品中で中田首相と鳥飼外相とのあいだで日本人のアイデンティティについて論議が交わされる場面が有りなかなか興味深いものがある。

日本人が「祖国たる国土」を失った場合どのようにして日本人であることを保つことが出来るか?がテーマである、

国土を失って尚その固有の民族たりえる代表例としてユダヤ人があげられる。紀元前に自らの住んでいた土地を追われた彼らはその後イスラエルを奪還するに至るあいだ世界のあちこちに分散してユダヤ人でありつづけた。
この根本にあったのは「ユダヤ教」である。教義ばかりではなく社会生活、食べ物着るものも含めた全生活の規範がつくられ厳格に適用された。
ユダヤ人とはユダヤ教徒を意味する。

では一方の日本人にはそのような強烈な信仰があるのか?
答えは否。
日本人の宗教観として、もともと宗教に対しては寛容。だが保守的な一面もある。
世界的な普遍性を持つ大宗教が日本で布教に成功したためしはない。
仏教ですら原形から乖離しいわば「日本仏教」となっている。
神道との混在(廃仏希釈)が明治になって行われたがその後も容認されているといえる、と評される。
では何をもって日本人は精神的よりどころにしているのか?
それは「日本人の生活様式そのものが宗教である」と。

日本人の気質として「均質でありながら内部に別組織を抱え込み、ときには国家よりも帰属する組織の利益を優先する。
「均質化された社会で培われた日本の生活様式」の例として
『若いうちの苦労は買ってでもしろ』
『信頼を裏切るな』
『約束を違えるのは恥と思え』
などなど長い年月をかけた経験則、日本の中に根づいた社会規範となっている。

このことが日本人個人の力を最大限にもで引き出す要素となっているのだ。

そのためには日本人は日本人同士一緒に集まって住まねばならない。故に「非定住日本人の再編計画」が生まれたのであった。

一方、約30年前に読んだ「日本沈没」の中で政界の黒幕というか長老がつぶやいたセリフをうるおぼえで思い起こす。

『日本には世界に類をみない四季おりおりの自然があり、美しい国土がある。日本の独自な文化はそうしたものを背景に育まれたものであって、もしもこの美しい国土が奪われるのであればワシはこの国と運命を共にする。日本人はこのまま世界に放り出されて尚幸せに生きていくことはかなわない。この国とともどもに滅びたほうが幸せなのじゃ』

といったような気がする。真実はそうなのかも知れない。

この小説を読みながらふたたび「国家の品格」読んで思考したことを思い起こしておりました。




日本沈没第二部

2006-09-18 00:29:51 | 「カ行」の作家
読了してから一週間も経とうというのになかなか読書感想が書けない。それはこの小説が示唆するところがあまりにも多いせいかも知れない。
何度も書こうとするのだがなかなか的確な感想文にならないのだ。


日本が太平洋プレートに飲み込まれるように沈没してから25年後。数千万人の日本人が世界のあらゆる国へ地域へと逃れていった。
その後の日本人は一体どうなったであろうか、というテーマは約30年前の小松左京著「日本沈没」を読み終えてからず~っとこのかた考えさせられるテーマであった。
ひとつの国に数十万、数百万を超える異民族がある日突然流入したらその国の人々はどのように受け止めるであろうか。
大量の日本人が難民となって世界各地におしよせた結果、日本人が辿った艱難辛苦は筆舌に尽くしがたいものがあろう。またこの大量の日本人が受け入れ先の国に及ぼす経済的、政治的、文化的影響度というのも大いに問題となろう。
さらに日本人が入植した結果世界の天候異変が起こったとなれば、いやその因果関係がないとしても、日本人の立場は微妙なものとなる。小説は特にパプアニューギニアの入植を例に取りかなりのページを割いている。
一方、入植がうまくいかず反政府運動にまで発展する日本人入植者グループも存在し更に犯罪者集団化するグループも出てくる。

「異変」(生き残った日本人たちは列島沈没をこう表現する)から25年経った日本政府(海外に分散した形の国家を形成)は日本人のアイデンティティを保つ為に非定住日本人の再編計画をたてる。その方法としてかって日本列島が存在した近くの海域(再びの造山運動で隆起した一部岩礁を利用し)にメガロフロート(浮体式構造物)なるものを構築し、何百万、何千万単位で日本人を再び終結させ再度独自の国を形成しようというものであった。
当然こうした動きに対し鋭く立ちはだかろうとする国があった。果たしてその国とは?

また、このとき地球規模で寒冷化現象が現出しその原因が日本沈没の際に発生した大量の「成層圏エアロゾル」(火山性のチリ)によるものと思われた。
地球の将来的な天候をシュミレートする超高性能な演算ソフト「地球シュミレーター」による結果を日本は世界に向け公表しようとしたところ思わぬ反応が起きるのであった・・・・


とにかくこの小説で抱えるテーマが多岐に渡るためそのディテールを追いすぎたり逆にはしょったりしたため小説としてのバランスがくずれてしまった感がする。小説としてのエンターテイメント的側面から述べると旧カザフスタンで反政府ゲリラ活動をする日本人たちの戦いを掘り下げて表現するなりしたほうが面白かったかも知れない。

長くなりそうなので「日本沈没感想第一部」とさせていただきます(苦笑)