「心ゆたかな暮らしを」  ~Shu’s Page

小説のレビュー、家族の出来事、趣味の事、スポーツ全般など、日々の出来事をつづりながら、一日一日を心豊かに過ごせれば・・・

ズルくないですか?『プリズム』by貫井徳郎

2017年10月15日 | 小説レビュー
〜小学校の女性教師が自宅で死体となって発見された。傍らには彼女の命を奪ったアンティーク時計が。
事故の線も考えられたが、状況は殺人を物語っていた。ガラス切りを使って外された窓の鍵、睡眠薬が混入された箱詰めのチョコレート。
彼女の同僚が容疑者として浮かび上がり、事件は容易に解決を迎えるかと思われたが…
『慟哭』の作者が本格ミステリの極限に挑んだ衝撃の問題作。「BOOK」データベースより


僕は貫井徳郎さんが好きですが、世にいう一流の作家さんが陥る「スランプ」のような状態の時に書かれたものかもしれません(^_^;)

物語自体は読みやすく・・・というか、サラサラ〜って読めました。とはいっても、良い意味ではなくて、内容が薄く、人物にも好感や共感が得られず、台詞も軽薄で、読んでいて面白くなかったからです。

一人の女教師が殺されて、色々な関係者がそれぞれの目線で事件を捉え、犯人探しをするんですが、どれも全く決め手に欠け、中途半端なまま最終章にいきます。

チラチラ出てくる端正な顔立ちの刑事も、結局何にもせずに終わりますし、全員の追求も中途半端なまま終わります。

「貫井さんやから!きっと最後にはとんでもない結末がっ!」と期待して最後まで読んだだけに「なんじゃそら┐('~`;)┌」と、思わず声に出ました。

言い訳のような筆者のあとがきで「本来、作者が握る決定権(真相)を、読者に委ねてしまおうと企図したのです。本書内では十とおりの仮説を構築しました。まだまだ新たな仮説が組み立てられるはずです。・・・
(中略)本書を基に、そうした楽しみを読者に味わっていただきたい。それが、作者の希望です。」

って、なんか、ズルくないですか?

こういう楽しみ方が好きなミステリーファンも多いことでしょうが、僕はあきませんねぇ( ̄~ ̄;)

例えば、『ミステリー作家養成専門学校 』のようなものがあったとすれば、そのテキストに載ってそうな雰囲気で、「では、この物語の真相は?」みたいな・・・。

どんなオチでもいいので、一応、答えは用意して欲しいものです。
★★☆2.5です。
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ダブルゲット!

2017年10月14日 | 雑感・日記的な
ヤサカタクシーの「四つ葉タクシー」は、もはや都市伝説として有名になっていますよね。

京都に住んでいると、時々遭遇します。

先週の土曜日に、上賀茂神社で走り去っていくところを激写したのがコレ↓



そして、今朝、駅前でお客さんを降ろしているところを激写したのがタイトルの写真です。

二週続けて、1/1400の確立に遭遇するなんて

絶対にいいことあると信じてます
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読ませてくれるねぇ〜『二重生活』by小池真理子

2017年10月14日 | 小説レビュー
〜大学院生の珠は、大学時代のゼミで知ったアーティスト、ソフィ・カルによる「何の目的もない、知らない人の尾行」の実行を思い立ち、近所に暮らす男性、石坂の後をつける。
そこで石坂の不倫現場を目撃し、他人の秘密に魅了された珠は、対象者の観察を繰り返す。
しかし尾行は徐々に、珠自身の実存と恋人との関係をも脅かしてゆき―。
渦巻く男女の感情を、スリリングな展開で濃密に描き出す蠱惑のサスペンス。「BOOK」データベースより


『恋』に続く、小池真理子氏の二作目です。

巷では、緑の小池さんが連日メディアに出てますし、林真理子さんもいますから、ややこしいですが、僕は小池真理子さんの作品が好きです。

全てに「ほどよい」んですね。ハラハラ感もありますし、深いセリフや、「うーん・・・」と考えさせられることもあります。エロは抑え気味で、文章も優しく、万人から受け入れられると思いますよ。

さて、ストーリーの方ですが、主人公の大学院生:珠は、近所に住んでいる中年男性を街で見掛け、何故か「ハッ」となって思わず尾行してしまいます。

そこで、その男性の不倫現場を目撃してしまったことによって、『文学的・哲学的尾行』の世界にはまりこんでしまうんですね。

この尾行が何とも面白くて、僕も「いっぺんぐらい、時間があれば、人の尾行をしてみたいなぁ〜」と思いました

他人の人生の、生活の一端を覗き見ることによって、何とも言えない快感に目覚めるんでしょうね(^_^;)))

逆に、「もしかして、誰かに尾行されてたりして」とも思ったり

中盤あたりから、「さぁ〜!どうやって落としてくれるやろ?」と、期待を込めて読み進めましたが、エンディングとしては、まずまずでしたね。

もっと「ガツーンッ!」と来るかと期待しましたが・・・、まぁそれはそれで良かったのかも知れませんね。

読後感も爽やかというか、「フフッ」と笑みがこぼれるような終わりかたでした。

ある意味ではサスペンス・ミステリーと言えるでしょう。

最後まで一気に読ませる筆力は拍手もんですし、『二重生活』というタイトルも絶妙でした。
★★★☆3.5です。
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二番煎じは難しいね「セカンド・ラブ」by乾くるみ

2017年10月11日 | 小説レビュー
~1983年元旦、僕は、会社の先輩から誘われたスキー旅行で、春香と出会った。
やがて付き合い始めた僕たちはとても幸せだった。春香とそっくりな女、美奈子が現れるまでは…。
清楚な春香と大胆な美奈子、対照的な二人の間で揺れる心。『イニシエーション・ラブ』に続く二度読み必至、驚愕の「恋愛ミステリー」。「BOOK」データベースより


「イニシエーションラブ by 乾くるみ」・・・、そう、この作品は、僕が読書家として生まれ変わるきっかけを与えてくれた作品です。

その乾くるみさんの作品で、ずっと気になっていた「セカンド・・ラブ」を読みました。

感想は一言で言うと、「イマイチ」です。
いわゆる叙述ミステリーなんですが、ラストに「おおっ!!」という衝撃は大きくなく、作中に疑問も数々残っているので、イニシエーションラブほどの衝撃はありません。

これ以降はネタバレになりますのでご注意下さい。

文章が軽く、読みやすいし、「女性作家さんなのに、よく男心をわかっていらっしゃる」という感じですね。
でも、叙述ミステリー慣れしている人にとっては、「春香と美奈子は同一人物」というオチには、すぐに気が付くと思います。

しかしながら、冒頭の結婚式のシーンが紀藤と春香だということはわかりませんでしたが・・・(^_^;)

正明が春香に振られたことによって自殺し、幽霊となって新婚旅行に出発しようとしている二人の前に現れる・・・なんてことは、ミステリー小説業界では禁じ手ではないのでしょうか?

まぁ、色々と言いたい事はあって、スッキリしない点も多々あります。

あと、最後に空港で、紀藤と春香の二人が、「あの正明の顔っていったら・・」等々、してやったりという二人の会話によって、全ての謎が時系列通りに明かされていくという書き方はゲンナリしました。

美奈子も西川くんも可哀想ですし、尚ちゃんも可哀想。
そして誰よりも正明が救われなさ過ぎて・・・(T_T)

ただ、紀藤も春香も性格悪すぎの二人なので、近い将来、必ず二人は離婚すると思いますよ。

しかしながら、双子のダブルヒロインである、内田春香と半井美奈子の
内田春香=utidaharuka 宇多田ヒカル=utatahikaru =ファーストラブ
半井美奈子=nakaraiminako 中森明菜=nakamoriakina =セカンドラブ
のアナグラムは見事でした。
 
★★☆2.5です。

追伸:乾くるみさんについて、いろいろと調べてみたら、実は男性作家さんやったんですね!
これには、一番ビックリしましたよ!
どおりで、女性作家さんにしては、男心をわかりすぎていると思って思ってたんですもんf(^_^;
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ハラハラ、そしてホッと「暗いところで待ち合わせ」by乙一

2017年10月09日 | 小説レビュー
〜視力をなくし、独り静かに暮らすミチル。
職場の人間関係に悩むアキヒロ。駅のホームで起きた殺人事件が、寂しい二人を引き合わせた。
犯人として追われるアキヒロは、ミチルの家へ逃げ込み、居間の隅にうずくまる。
他人の気配に怯えるミチルは、身を守るため、知らない振りをしようと決める。
奇妙な同棲生活が始まった―。書き下ろし小説。「BOOK」データベースより)


いやぁ〜良かった!いい意味で期待を裏切ってくれましたね!

乙一氏の作品は二作目です。

登場人物が必要最小限に抑えられていて、起承転結もしっかりしています。
伏線回収も出来ていますし、真相が明らかになる仕掛けもスッキリしていて、なかなかの良作です。

タイトルと表紙から「サイコスリラー」or「ホラーサスペンス」という印象で読み始めました。

しかし、途中から「ハートフルミステリー」になりました。

ミチルとアキヒロの関係がどうなっていくのか?というワクワク感と、視覚障害者の持つ暗闇の世界の不安感から、終始ハラハラしながら読めました。

読後感も爽やかで良かったですが、一つだけ心に引っ掛かることは・・・、

『視覚や聴覚に障害がある人は、逆に残された器官の感覚が研ぎ澄まされていくんちゃうの?』ということです。

まず、赤の他人が自分の家に上がり込んで来ただけで、その香りとか、音とか、気配とかの異変に気付くと思いますし、数日間お風呂に入らず、同じ服装でいる男の存在に気付かへんか?とも思うのですが・・・、(^_^;)?
それは、乙一氏の「まずストーリー展開ありき、その他の些末なことは置いといて・・・」的な感じですかね?

それにしても、よくまとまった作品だと思います。

★★★☆3.5です。
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イマイチ響かず「私という運命について」by白石一文

2017年10月06日 | 小説レビュー
~大手メーカーの営業部に総合職として勤務する冬木亜紀は、元恋人・佐藤康の結婚式の招待状に出欠の返事を出しかねていた。
康との別離後、彼の母親から手紙をもらったことを思い出した亜紀は、2年の年月を経て、その手紙を読むことになり…。
―女性にとって、恋愛、結婚、出産、家族、そして死とは?一人の女性の29歳から40歳までの“揺れる10年”を描き、運命の不可思議を鮮やかに映し出す、感動と圧巻の大傑作長編小説。
「BOOK」データベースより


永作博美主演、江口洋介、宮本信子で、WOWWOWドラマ化されている名作です。
「運命とは?」と、問いかけてくるのが、この小説のテーマだと思います。

しかしながら、「これだ!」という筆者の思いが伝わりにくく、「だから何を伝えたかったの?」というモヤモヤした気持ちで読み終えました。

主人公の亜紀は、29歳から40歳まで、「自分はどう生きるべきか?」ということに、悩み苦しみ、涙を流しながら、過ごす物語です。

作中で色々な人の言葉によって運命が語られます・・・。

「選べなかった未来、選ばなかった未来はどこにもないのです。未来など何一つ決まってはいません。しかし、だからこそ、私たち女性にとって一つ一つの選択が運命なのです。」

「運命というのは、たとえ瞬時に察知したとしても受け入れるだけでは足りず、めぐり合ったそれを我が手に掴み取り、必死の思いで守り通してこそ初めて自らのものとなるのだ」
等々・・・。

主人公の亜紀の感情の揺れ動きに対して、「う~ん・・・?」と思う場面が多くて、イマイチ感情移入出来ませんでした。

亜紀を取り巻く色々な登場人物が出てきますが、台詞などにも深みが感じられず、もう一歩伝わりませんでした。

全てにおいて、「惜しいなぁ・・・」という感じのまま終わってしまった感じですね。
★★★3つです。
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やはり好きです!「夫婦茶碗」by町田康

2017年10月03日 | 小説レビュー
~金がない、仕事もない、うるおいすらない無為の日々を一発逆転する最後の秘策。それはメルヘン執筆。こんなわたしに人生の茶柱は立つのか?!あまりにも過激な堕落の美学に大反響を呼んだ「夫婦茶碗」。
金とドラッグと女に翻弄される元パンクロッカー(愛猫家)の大逃避行「人間の屑」。
すべてを失った時にこそ、新世界の福音が鳴り響く!日本文芸最強の堕天使の傑作二編。
「BOOK」データベースより


「告白」に続く、町田康作品の2作目です。

「夫婦茶碗」と「人間の屑」という短編が2作収録されているのですが、相変わらず町田康氏の「思弁的な主人公」は健在です。

頭の中で考えていることが「ぐるぐる~、ぐるぐる~」と回ったり、突然「パッ!」っと花火が上がるように、とんでもない考えが閃いたりする様は楽しいです・・・。

が、読んでいる自分の精神状態が安定していないと、とてもしんどい文章でもあります(^_^;)

『夫婦茶碗』の方は、旦那と奥さんの意思疎通が図れなさ過ぎて「結局なんやったん?」と、いう終わり方ですが、『人間の屑』は、なかなか良作でした。

自宅の庭に出入りする猫たちの生態を観察し、家系図まで作り上げてしまうあたりは、やはり町田康氏一流の動物との絡みで、ニコニコしながら読みました。こういうところは本当に大好きです。

さて、まさに『人間の屑』な主人公ですが、行動も考え方も『屑』です(^_^;)。

でもどこか憎めない男で、最後のビデオ撮りのシーンは、なかなか感慨深いものがありますよ。
娘を想う、父親の不器用で深い愛情がリアルに表現されていて、もう少し別の書き方をすれば、涙涙のシーンになったかも知れません。

巻末にある筒井康隆氏の解説が秀逸で、「文学とは!」と、思い知らされます。


町田康氏の発想力、展開力は一級品で、とても興味深い方だと思います。

ある意味では、ハートフルな恋愛小説とも呼べる、この2作品、特に「人間の屑」は、なかなか良い出来だと思います。
★★★3つです。
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