素浪人旅日記

2009年3月31日に35年の教師生活を終え、無職の身となって歩む毎日の中で、心に浮かぶさまざまなことを綴っていきたい。

三浦しをん『まほろ駅前多田便利軒』を読み終わる

2012年05月06日 | 日記
 ゴールデンウィーク後半は自分の意志ではないが、いろいろな偶然が重なり結果としてはよく歩いた4日間となった。今日は西九州のツアー旅行の時に高千穂、壱岐、隠岐などに行ってみたいという話などで話をする機会を多く持ったIさん、“磐座(いわくら)”にも興味があると携帯で撮った写真を見せてくれた。それなら交野には観光名所としては知られていないが巨岩信仰を色濃く残す交野妙見宮(小松神社)、磐船神社、獅子窟寺、交野山などがありますよと言ったところ、一度案内してもらえますかと話が進んだ。

 11時に星田駅に集合したIさんの知人8人をガイドして星田神社から妙見宮、星のブランコをまわり私市駅までを歩いた。その中のMさんが星田神社の佐々木宮司と知り合いであるという縁から1時間強佐々木さんのお話を神社でうかがった。その間に雨のほうも止み、いい状態で新緑の星田園地を楽しんでもらえた。

妙見宮“織姫石”の前で   
 
 東北へのツアーを含め、ゴールデンウィークの間読んでいたのが三浦しをんさんの『まほろ駅前多田便利軒』である。『舟を編む』が本屋大賞になったことからいつものTSUTAYAに三浦さんの特別コーナーが設置されていた。「読んでよ」と語りかけてきたのがこの本である。

 人生の中には、やり直しのきかないものが確実にある。そういう厳然たる事実を繰り返し書きながら
 「失ったものが完全に戻ってくることはなく、得たと思った瞬間には記憶になってしまうのだとしても。
 今度こそ多田は、はっきり言うことができる。  幸福は再生する、と。
 形を変え、さまざまな姿で、それを求めるひとたちのところへ何度でも、そっと訪れてくるのだ。」
という結末が心にしみる。これがこの本の魅力である。

 読みながらある人との会話を思い浮かべた。
「最近、物忘れが多くなってね」「でもさ、長く生きてくれば忘れるということがないとやってられないよ」
「忘れるということは心を健康に保つために必要なこと?」「そうかもしれない。何から何まで覚えていたら大変だよ」
「だけどさ、そう単純にはできてないよ」「どういうこと」
「忘れられないことってあるよね、悔いやらつらさがともなうことが多いが」「誰でも生きてきた中では持っているよね」
「どうでもいいことを忘れていくと、この忘れられないことだけが岩山のように残るわけ」「なんとなくわかる」
「これがけっこうきつい。人はすんだことだからというけど本人には簡単に割り切れないんだよな」「理屈では解決できない?」
「わかっちゃいるけど消えない重さかな」「生きてる間にいつかは忘れるときがくるのかな?」
「生きてみないとわからん」

 主人公多田を通して伝わってくるものと重なるのである。

 

 

 
コメント
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