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素浪人旅日記

2009年3月31日に35年の教師生活を終え、無職の身となって歩む毎日の中で、心に浮かぶさまざまなことを綴っていきたい。

“パワースタイル”と“テクニカルスタイル”

2011年07月19日 | 日記
 一昨日、東京オリンピック(1964)の頃の女子バレーボール界と似ていると書いた。当時はソ連チームが世界に君臨していた。リスカルという大砲を持ち、パワーで圧倒していたのである。対してパワー不足の日本は“回転レシーブ”“変化球サーブ”などに代表されるテクニックを鍛え上げ、コンビネーションによって粘り強い攻守によって戦った。

 今の女子サッカーの世界ランキング上位のチームは、トップに身体能力の高い選手を起用して手間ひまかけずにそこにボールを放り込んでくるパワースタイルが多い。そこに、現在の男子サッカーでは当たり前になっているパスによる多彩なつなぐスタイルで挑んだのが“なでしこJAPAN”だといえる。

 身体能力の高いエースストライカーに対して1対1では守りきれない。1対2の数的有利な状況をつくっていく必要がある。これは理屈で言うのは簡単だが、実際のゲームの中でやろうと思えば長期間の一貫した練習の積み上げが必要である。GKを除いて10人という限られた人数で1人に対して2人が関わると必ず相手側にフリーになる選手が出てくる。そこをまたカバーしていかなければならないので全員に豊富な運動量が必要となる。同様に攻撃に関しても相手のディフェンスに対して数的有利な局面をつくることが大切になる。

 オシムが『走れ!』と、そのことを端的に表現した。その点に関しては練習を通じて身につけていたように思えた。今回の日本チームの優勝はパワースタイルからテクニカルスタイルへの転換点になるように思う。ただ、両者は相反するものではなく、最終的には融合されていくことが理想だと思う。

 今までたくさんのサッカー少年と出会ってきたが、小学生から中学生になったとき、乗り越えないといけない壁が存在するように思う。小学校時代に目立って活躍する選手を大雑把に分けると足が速いとか体が大きいなどパワー系に抜きん出ている生徒とドリブルがうまい、ボールコントロールがすぐれているなどテクニック系に秀でている生徒がいる。パワー系の選手は多少テクニックがなくても活躍できるし、テクニック系の選手はパワー不足を技術で補うことができる。

 両者ともチームの中心選手として活躍できるし、中学でも1年生の間は通用する。しかし、2年生の半ば過ぎから今まで通用していたプレースタイルが通用しなくなってくる。パワー系にはテクニックのなさが浮かび上がってくるし、テクニック系にはパワー不足が目についてくるのである。

 指導者として大切なことは、入学した段階からパワーだけとかテクニックだけにたよるプレーには限界がくることを話し、パワー系にはテクニックを、テクニック系にはパワーをつける努力をさせることだと思う。そして一人ですべてをこなせる人間はいないことを悟り、お互いの弱点をカバーし、強味をいかしていくというチーム力の大切さに気づく。それをベースに判断力を磨いていくと2年生から3年生になる頃、チームは成長した姿を見せる。パワーとテクニックの融合こそが中学年代の壁を超える鍵ではなかろうか。

 同時にそれはロンドンオリンピックに向かう“なでしこJAPAN”の克服すべき課題のように思う。

 

 
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