かどの煙草屋までの旅 

路上散策で見つけた気になるものたち…
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世に恋愛モノの種は尽きまじ~ある愛の詩(1970年)

2014-08-03 | 映画

 1971年、中学2年生のときに映画館で見た映画は、『小さな恋のメロディ』と『ある愛の詩』の2本だった。今思うと少ない気もするが、中2の少ないこづかいからすると、まあこんなものだろうか。なにしろ当時の毎月のこづかいでは、2000円のLPレコードが買えなかった記憶がある。本やレコードも買いたいぼくにとって、映画代(500円くらいか?)はばかにならない金額だったのだ。

 ところで見に行った映画が2本ともラブストーリーだったのにはわけがある。一緒に映画を見に行ったI君とぼくは、ふたりともこの当時デビューしたばかりの南沙織の大ファンだった。中2になって急に色気づき始めたぼくたちは、日本のアイドルのほかに外国の女優も話題に上るようになっていた。当時読み始めた「明星」や「平凡」、「スクリーン」などで紹介される映画情報で、当時人気のあったトレーシー・ハイドとアリ・マッグロー見たさに映画館へ行ったのである。特に『ある愛の詩』の主演女優アリ・マッグローは、ストレートのロングの髪に濃い眉が印象的な南沙織タイプで、ぼくたちは迷わずなけなしのこづかいをはたいて映画館へ直行したのであった。

 地元の小さな映画館で『見た『ある愛の詩』は、同じ時期に見た『小さな恋のメロディ』とは対照的なラブストーリーで、格差婚とヒロインの不治の病という「悲恋モノ」だった。能天気な中学2年生にはちょっと重かったが、主人公が雪のスケート場の観覧席で、若くして逝った妻の死を悼むラストシーンは、今もしっかりと心に残っている。

■映画のストーリー
 ストーリーはいたってシンプルだ。ハーバードの学生オリバー(ライアン・オニール)は、図書館でバイトをしているラドクリフ大学の学生ジェニーに一目ぼれ、やがてふたりは恋に落ち結婚を誓い合う。オリバーは名家の四世、ジェニーはイタリア移民の菓子屋の娘という身の上の違いのため、オリバーの父に結婚は反対されるが、オリバーは反対を押し切り結婚する。父からの送金を止められたオリバーは、弁護士資格を取るためハーバードの法律学校へ入学、学費と生活費のためジェニーは働き、オリバーもバイトをする貧しい暮らしだったが、愛し合う二人にとっては決して苦しいものではなかった。ジェニーの支えで法律学校を優秀な成績で卒業したオリバーは、ニューヨークの法律事務所に就職、ふたりの希望に満ちた新しい生活が始まったかに思えたのだが・・・

■DVD再見 
 今回40年ぶりにDVDを鑑賞し、中学生からオトナになった眼で見た率直な映画の感想を少々。
 この手の悲恋モノは、どれだけ登場人物に感情移入できるかが映画のポイント。身分や貧富の差など幾多の障害を乗り越え一緒になり、幸せをつかんだと思った瞬間、どちらかの突然の死でラストは不幸のどん底に叩き落される。この幸せと不幸のふり幅が大きいほど、映画を見た人はしばし日常を離れ、悲劇の主人公に感情移入しカタルシスを味わえる。いわば悲恋モノ映画のキモは、ラストの不幸のどん底に向かうまでの道のりを、いかに丁寧に描いていくかに尽きる。
 
 その点ではこの映画は少し食い足りないなあ~と思ってしまう。まず映画の終盤になって突然判明するジェニーの病気(白血病)は、それまでの予兆がまったくなかっただけに、悲劇のラストに向けてのやや帳尻合わせの感がまぬがれない。映画の序盤、オリバーがジェニーにひと目ぼれし、大学周辺でデートを重ね愛を育んでいくくだりも、いつのまにか気がついたらベットインしてていたという感じだ。ぼくとしては、お坊ちゃまオリバーの少々強引なアタックに、徐々に惹かれていくジェニーの心の動きをもう少し丁寧に描いて欲しかったのだが。

 昔からある定番の悲恋物語を70年代を舞台に、当時としては新しいタイプのヒロイン、アリ・マッグローが演じた『ある愛の詩』。今見るとちょっとベタすぎる展開が気になるものの、随所に出てくる美しい雪のシーンは、フランシス・レイの音楽とあいまって、この映画をより印象深いものにしている。このどちらかが先に逝ってしまうタイプの悲恋モノは、日本でもパターンを変えながら映画、TVドラマで毎度おなじみである。特に売出し中のアイドルや俳優が演じるこの手の純愛・悲恋モノは、うちのかみさんや娘も含め、世の女性たちには今も絶大な人気を誇っているようだ。古今東西女性がいる限り、「世に恋愛モノの種は尽きまじ」ということらしい。
 

■1976年リバイバル上映時のパンフレット
  


■映画でのジェニーのセリフ、「愛とは決して後悔しないこと」のフレーズは当時流行しました



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