人は大切なものの一番最初に「愛」を付けて呼んでいる、愛妻、愛息子、愛娘、愛犬などなどがそうである。
と言うことで、しがないうたうたいの私にとって、現在ライブで使用している唯一のギターは愛ギターと呼んで良いのだと私は勝手に思っている。
しかし、読み方はきっと「あいギター」よりは「まなギター」の方が良いのではないかと思う、それは{ま}と{な}をひっくり返しにすると「なまギター」になるからである。
アコースティックギターは生ギターとも呼ばれるからである。
そんな前置きはさて置き、土曜日に私の愛ギターは入院した、全治一ヶ月ちょっと掛かるようである。
結局、私はその愛ギターを買った店に入院させることにした。
先週のアピア40でのライブの時、店長のレイ君が大学の後輩でアピアの出演者がそのお店で働いていると言うことを教えてくれ、その場ですぐに彼に電話してくれたのであった。
その日の出演者であった野口さんも私と同じギルドのギターを使っているが、聞けば、まだ中古で買ったが一度もメンテナンスに出したことはないとのことだった。
野口さんも言っていた「まだ鳴りの異音はないから放置プレーをしているけど、メンテナンスに出すとなると、良い病院に思ってしまう。やはり子供を病院に行かせるようなものだから」と私となんら変わらない心境で居ることを教えてくれた。
土曜日、山谷にギターを持って行き、その帰りにそのメンテナンスに出すことにした。
野口さんから「ギルドのハードケースは兎に角重い」と言われていたが、私はそれを覚えていなかった。
買って以来、私はいつもソフトケースに入れていたので一度もハードケースを使ったことがなかったのであった。
肩掛けがないギターケース、家から駅に向かう10分もない道のりですら、何度、右手から左手、左手から右手と持ち手を変えたことか、トレーニングをして力があると思っていた私だがほんとうにギルドのケースは重く、これは新たなトレーニングだと思うほかなかった。
私の愛ギター、どこがどれだけメンテナンスが必要なのか、不安だった、消耗品であるナットの交換は必須だと言うことだけは分かっていたが、たぶん、それだけではないことも感じていた。
渋谷のお店に着き、アピアの出演者の高瀬君に会い、いろいろと教えてもらった。
ナットの交換以外にギターの内側の梁が剥がれているとのことだった、アコースティックギターは使用していると剥がれることもあるそうである、特に弾き方が激しい人の場合は剥がれやすいとのことであった。
私は納得せざるを得なかった、かなりギターに負荷を掛け、鳴らすことも多いことは承知の上だったからである。
それでも、やはり知っている人のところで看てもらうことが出来、安堵していた。
見積もりはまだ届いていないが、ここは腹を据えてまとう、愛ギターために思うのである。
いろいろとメンテナンスはどこが良いかと聞いていた三ヵ月間だったが、買った店に持って行くと言う、落ち着くとこに落ち着いた結果となった、それは最善ではないかと有り難く感じている。
お店では新しいソフトケースを買って帰って着た。
それは今使っているケースよりもしっかりしたものである。
両肩に背負えるケースであり、私はそれを背負って帰って着た。
とても軽かった、心の重荷がどこかに消えて行ったように。