すでに集合時間を30分過ぎ、一番遅れるコウキチを残して、みんなでアサダの眠る殿山霊園に向かった。
迎えの挨拶を終えたミエコとトモコは飲み会の準備のため、アサダ宅に向かい、自分たちはそれぞれは三つのタクシーに別れ、霊園に向かった。
自分と同じタクシーには海野、キョウイチ、沢木と乗った。
久しぶりに会う仲間、もう出会ってから20年以上経っている。
しかし、出会うとその学生の頃の雰囲気に一気になってしまうもの、駅でビールを飲み忘れた海野はコンビニの前に赤信号で止まったタクシーからビールを買おうと降りようとする。
そこまで我慢出来ないのか、と爆笑されながら静止された。
ビールがないとアサダにうまく会えないのか、ビールが大好きだったアサダだから、それを口にすることで楽しかった思い出を味わいなおすのか、それは分からないが、みんなのなかにいる小さな男の子たちが蘇えるように息を吹き返し、爆笑の笑顔から、それから溢れ出た。
霊園に着くと、クーラーの効いた待合室で、未だ喫煙率の高い自分たちはツヨシをはじめ、まず一服して準備を整え、炎天下のアサダのお墓に向かう。
少し前に旦那と子供と車で直接霊園に向かったイナイは、すでにアサダのお墓をきれいにしたと自分の仕事の報告をしながら、みんなと挨拶する。
そこはすでにワイワイガヤガヤ、祭りの始まりのような状態になり、未だ久しぶりに会えた喜びを素直に嬉しいなんて言えない代わりに雑音のような会話が続く。
イナイの子供が桶から柄杓で水をまこうと炎天下のなか、お父さんに見守られ遊んでいる。
そこにちょっかいを出す一同と出会うが戸惑う姿無く遊び続ける。
愛らしいと思った。
だが、アサダの嫌がらせの炎天下から逃れようがなく、線香に火をつけ、一人ひとりアサダのもとに行った。
「よう、アサダ、元気かよ。遊びに来たよ」
この墓にお前がいるのか、そんな気もすれば、そうでもなさそで、でも何か、みんなの笑顔があるところにお前は居そうだと思える。
奴は居なくなった訳ではない、こうして集まる笑顔のなかにお前を思える不思議がある。
そう思うのは自分だけじゃないだろう。
忙しい時間のなか、この日を大切に思っているからこそ、ここに集まっている。
そして、ここに集まれなかった連中もそう、この炎天下にアサダを想っているに違いないことをアサダも知っているだろう。
アサダの声を聞こえる。
「テツ兄、最近どうよ?」
{つづく}