今夜も本をまくらに。

山歩きが好き、落語が好き、おいしい物が好き、中島みゆきが好き、
でもやっぱり活字がなければ生きていけない私。

いまだ下山せず!

2021年05月03日 | 「本」のひきだし

ブクログより  



1986年年末、有明から出発、中房温泉~燕山荘~大天井岳~西岳~東鎌尾根からとりつき槍が岳~年が明けて1日に大喰岳~南岳から横尾~上高地へ下山、という計画で3人のパーティーが入山したが、予定の日を過ぎても下山してこなかった。

空陸、現地周辺捜索が繰り返されたが3人の足取りはつかめず、事実上の捜索は打ち切られた。

そののち、3人が所属する、のらくろ岳友会を中心とした捜索に切り替わる。
捜索に集まった人たちは、会員はもとより遭難者の個人的な知り合いや山で出会ったという人たちなど、それぞれ家庭や仕事をこなしながら、寝る時間を削っての捜索が始まる。
その壮絶ともいえる詳細な捜索の模様の全記録だ。

作者がのらくろ岳友会の女房役ともいえる立場の方で、その都度現場現場に立ち会ったうえでの記録なので、その様子は臨場感あふれ
ぐいぐい引き込まれて、いつしか自分も捜索隊のひとりになって山の中にいるような気になってくるほどだ。

3人の足取りをつかむため、その同じ時期、同じ山域に入山していたパーティーを調べ上げ、全国にちらばるそのメンバーに会いに行き証言をとるという気の遠くなるような作業の末、その証言をパズルのように組み合わせ、最有力地点が絞り込まれた。

「彼らは常念一の沢にいる!」雪渓が解け始めた4月の末、捜索隊を再編成して決死の捜索が始まった。
「早く見つかって欲しい、でも見つけたくない」対面するということは、その死を認めるということ、その心の葛藤は痛いほどわかる。
山に入ることもままならず、ただ連絡を待つしかない家族の気持ちはいかばかりか・・・

折しも今季節は春真っ盛り、山では厳しい冬が過ぎ、雪が解けだし、樹木の芽吹きが始まり躍動の季節ですが、厳冬期の深い雪の中には
様々な悲しい事実が埋まっていることも思い知らされます。



いまだ下山せず!  / 泉康子

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