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ローカル線の旅の話~その9 山口県 ~宇部線~

2014-10-31 22:37:23 | 町と旅

 ローカル線の旅の話。第九回目、今回は山口県です。

 秋深まる頃、西日本の旅の途中に福岡で観たコンサートの余韻も冷めやらぬまま、山陽本線の宇部駅に着いた。昼公演を見終えて、夕方山口県にやってきたのだ。宇部駅の周りはあまり栄えていないが、宇部市の中心地はここではなく宇部線に乗り換えて行かなくてはいけない。夕暮れ時のしんみりとした空気の宇部線の電車に乗り換えた。

 宇部駅からすぐに宇部市の中心地宇部新川駅に着いた。小さいながらも鉄筋の駅舎は歴史を感じさせるがっちりとした天井の高い駅。駅近くのホテルを今夜の宿として、部屋に荷物を置き散歩を始めた。最初に向かったのは海。少し歩くと町はずれとなり、交通量の多い大きな道路に出た。その道路の向こうは海岸線だ。海岸線にはコンビナートが並び、薄暗くなり始めた空の下で威圧感を放っていた。私は道路の上に架かる歩道橋の上で海や道路を撮った。歩く人はおらず、行き交う車のライトが青い暗闇に浮かび上がる。そんな黄昏の風景を眺めたあと、町に引き返した。

 町に戻りアーケード街を見つけるが、まだ19時過ぎだというのにほとんどシャッターが下り、歩いている人もほとんどいない。夜にホテルで読む本を買いたいのだけれど書店はない。その時、やっと人を見つけて声をかけた。しかし、そのお兄さんはキャバレーの呼び込みであった。
 お兄さんは親切に近くの大通りにあるTSUTAYAを教えてくれたので行く。町と違い店内は割と人がいて賑わっている。
 そろそろ夕食をと思っているがめぼしい店がなく、ウロウロしているうちに駅前に戻ってきてしまった。ラーメン屋があるので入る。店員も客も全員二十代なのては?という活気のある店内。ただ、旅の風情はない。地元の人が入る類に店だ。

 ラーメンを食べたあと再び町歩きを始めた。地元についての話などしてみたくて飲み屋を探すが、これといった良い感じの店がない。そういう飲食店が一角に固まっていそうだけれど、そういう一角が見つからない。
 歩き疲れたので探すのはやめ、コンビニみたいな雑貨屋で地酒を買い、近くの手作りパン屋でパンを買った。ホテルまでの途中、歩道に屋根の掛かった大通りに出る。

 大通りだというのに商店のシャッターは閉まり、街灯も消え真っ暗である。屋根の掛かった歩道も誰も歩いていない。だがよく見ると、真っ暗なバス停のベンチにおばあさんが見動きせず座っていた。バスが来るのかどうかもわからないほど、ただひたすら静かで真っ暗なストリートに、じっと座る姿だけが闇に浮かんでいる。

 翌朝、宇部新川から新山口行きに乗った。白い車体に青と赤のラインの入った通勤型電車な宇部線の車内は高校生だらけで、沿線に女子校でもあるのか、圧倒的に女子が多い。みんな色白で可愛いく、ほとんどの子が黙って勉強している。宇部は勉強熱心な生徒が多いのかもしれない。

 電車は宇部の市街地をゆっくり走り、駅毎に高校生を乗せて走っていく。宇部岬か常盤駅を出たあたりから景色は田園地帯になり、ようやくローカル線らしい眺めになっていく。車内は変わらず静かで、レールの継ぎ目を叩く甲高い走行音が響いている。

コメント (7)
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