勤め先のマガジンハウスのはす向かいに樹の花という喫茶店がある。30年ぐらい前に入社した時すでにあった。思えば当時この界隈にあった店の多くが姿を消したから樹の花は貴重だ。そう思って最近よく行く。
ここからはマガジンハウスがよく見える。早い時間に帰る社員は顔ぶれが決まっている。取材や打ち合わせに行くわけでないのは様子を見ればすぐわかる。以前ここには取材や打ち合わせでくることが多かった。最近は1人で立ち寄り人の出入りを眺めてることがある。
樹の花は1979年オープンで、4日目に偶然ジョン・レノンとヨーコ・オノがきた。子どもたちが築地の映画館でスーパーマンを観てるあいだ、ここで過ごしたそうだ。子ども「たち」ということは少年のジュリアン・レノンと幼児のショーン・レノンだろうか。マガジンハウスの現社屋は1983年に落成したので、その日まだなかった。
自分が入社したのは1994年だから、樹の花はもうあった。シナモントーストは当時あったような気がするけどカレーはなかった。カレーがメニューに加わったのは、店に置いてある本によると1999年ごろらしい。打ち合わせか何かで店にきて「あっ、カレー始めたんだ……」と思ったの、ついこないだのような気がするのに20年以上も前なんだな。
カレーはおいしい。「サカタには量が足りないでしょ?」とよく聞かれるので「いわれてみればたしかに」などと答えるけど、加齢のせいか今はちょうどいい。20年前は盛りが少なく感じたものだ。社員食堂に行く回数より、樹の花でカレー食べる回数のほうが多い。コンワビルのラサもとん㐂も今年なくなり、樹の花に昼どき行く機会が増えた。
たまには人と行くこともある。砂場も宮城野も今はない。らく万もかつ銀も廃業した。明治館もないし、チャコもないし、ナイルは行列して入れない。ランチタイムにかつて身を寄せたところが周辺からどんどん消えてゆく……サカタだよは、消えないよ。サカタのブログも細々と月に1回か2回は更新してる。以前は毎週だった。
ロケやスタジオのおにぎりを調達するコロナも十石も消えた。蛇の目もおさきも鳥松も舟よしもジラフもアフューネもごん太も秋田屋もぬいぐるみもやってない。築地は更地になってしまったし銀東もない。そんなことを思いながら樹の花でカレーを食べがちな今日このごろ。
いきつけが消滅していくなかで1979年からやってる(とはいえ通いだしたのは90年代の)樹の花が、近ごろ何となく貴重に思えてならない。ジョン・レノンとヨーコ・オノが来店したのは一度きりでも、装幀者の菊池信義が生前よく通ってたようで見かけたことがある。一度ぐらい話しかければよかったかも。たしか昨年なくなった。ママさんは今年6月に他界したそうだ。
あの2階にあるのが樹の花
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