ポラノート

決してエレベーター使用の自粛を強制されているからじゃないんですけどね、ターザンの
編集部がある４階まで階段を上って出勤しています。

当然のことながら、それで体力を消耗するからじゃないんですけども、職場に到着したら
しばらくの間どうしても仕事する気分になれなくって、ある日、ロッカーに眠る古い資料を
取り出してボーッと眺めていました。


こんなの出てきた・・・

デジタル時代に突入する以前、フィルムで写真を撮っていた頃の名残りです。確認用の
ポラロイド写真を切り貼りしておくポラノート。懐かしいなあ、これ。

アンアンからターザンに移動してきてすぐ、「アンアンにいたならモノのページ得意だろ？」
って当時の編集長（通称キング・ジョー）に言われて３年ほど担当した、「Tarzan Express」
という連載の台帳みたいなもんです。現在「ＴＴＴ」という連載に変わっています。


何号に何が載ったかわかる

複数のスタッフが持ち寄ったモノを交通整理して誌面に載せるから、ポラでも貼らないと
いつの号の撮影点数がどうなっているか全然わからなくなっちゃうんですよね。

デジカメになってからはポラがないので、編集者はどうやって写真を整理するんでしょうか。
ＰＣでファイル管理？　メモ付きで一覧したい人はプリント切り貼りするのかな。


デザインの注意点は手書きが便利

ターザンは月２回刊なので、この連載も月２回ずつ、会社の地下のスタジオにカメラマンと
２人で朝から閉じこもって淡々と撮影していました。他のスタッフは入れ代わり立ち代わり
モノを持ち寄って何点か撮影しては出ていきます。


説明ぐらいは聞いておかないと

ついでに仕事の状況を聞いたり、プライベートな話をしたり、お弁当やお菓子を進めたり、
ときには鍋を囲んだり、次回の撮影スケジュールを調整したり・・・

鍋を囲むというのは、下線部をクリックすると大体どういうことか書いてあります。


ある人の奥さん発見！

いまは某カメラマンの奥さんになっている人が、当時まだアルバイトで編集部にきていて、
コラムの写真のモデルに借り出されたときのポラが貼られてました。

他にも「スタッフ忘年会のお知らせ」のチラシとか、すでに意味のわからない落書きとか、
いろいろな過去がタイムカプセルのように現在によみがえり、その日は仕事どころじゃ
ありませんでしたとさ。


ギザギザハサミに凝っていた頃

編集者の一生

創業者の清水達夫は「生涯一編集者」というのが座右の銘で、最晩年まで一編集者で
あり続けたそうですが、平凡（ごくあたりまえ）な編集者であることは意外に難しいんじゃ
ないかって、ここ10年ぐらい秘かに思っています。

生涯一編集者のつもりでいても、別物になりやすいのが、この仕事かもしれません。

【なりすまし編集者】・・・編集の仕事に資格は不要で、必要なのは要領です。最初から
要領よく仕事ができる編集者はスゴイと思いますが、多くの場合は右も左もわからずに
見よう見まねで【なりすまし編集者】やってるうちに、だんだん【なりすまし】がとれてきて、
一編集者になるわけですね。早いか遅いかは、個人差があります。

【なりそこない編集者】・・・いつまでも【なりすまし編集者】のまま、“長年経験を積んだ
から一人前！”と思い込んでいても、実力を伴わなければ【なりそこない編集者】です。
個人差があるとはいえ、数年やって要領が身につかなかったら、一生身につきません。
【なりすまし】を続けるか、【なりそこない】と悟るかは、個人差があります。

【なりあがり編集者】・・・ちゃんと要領をつかんで、一編集者として自分なりの仕事に
取り組んでいると、管理職を兼ねた編集者になる場合があります。キャップや、副編、
編集長など。肩書きの重さと、一編集者であることは矛盾しませんが、肩書きだけを
追い求めるのは【なりあがり編集者】であって、一編集者とは異なります。

【なれのはて編集者】・・・【なりそこない】からストレートに【なれのはて】へ進むケースと、
【なりあがり】を経て一編集者として大切な何かを見失い、【なれのはて】に至るケース。
大きく分けて上記２パターンの【なれのはて編集者】が存在しています。ここまでくると
残念ながら、わざわざ一編集者の足を引っぱるようなことしかやりません。

・・・みんな悪気があるわけじゃなくても、生涯一編集者とは似て非なるものです。

ごくあたりまえに、平凡に編集者をやり続けるのは意外に難しいことかもしれないって、
ここ10年ぐらいビビリながら我が身を振り返っております。

宇宙戦争

あれは何年前だろう。渋谷で１時に待ち合わせして、「心」でスープカレー食べてから
取材先を２時に訪ねるはずが、１時を過ぎてもライターさんが来なかったのは？



携帯は「電波の届かない場所にあるか、電源が入っていないため、かかりません」だし、
自宅の電話にかけると留守電なので、しかたなくメッセージを残した。



“１時のスープカレーは今度でも構わないけど、２時の取材に来られるかどうか、折り返し
連絡ください”とか何とか。でもコールバックがないまま、２時になってしまった。



初めての取材先なので遅刻するのも気まずいし、しょうがないから時間通りに自分ひとり
「こんにちは～」って入っていって５分かそこら挨拶でつないだ。でも来ない。

「すみませんライターが来ないので取材できません」なんて、口が裂けても言えないから、
頭を切り替えて１時間ほど取材した。アンチエイジング特集の巻頭６ページぐらい。

取材が終わったら、さすがに電話に出るだろうと思って、かけてみたけどやっぱり出ない。
「電波の届かない場所にあるか、電源が入っていないため、かかりません」・・・



ライターさんの身に何かあった？　交通事故とか、ＵＦＯにさらわれたとか、そんなことでも
ないかぎり、腕利きのプロが待ち合わせから２時間たって音信不通なんて。



ここは落ち着いて、騒ぎ立てても無意味だから編集部にともかく戻ろう。そして昨日の夜、
ライターさんと一緒に飲んでいた人を探すんだ。十中八九、飲んでるはず。



地下鉄銀座線に揺られながら、“どうしよう飲み友達が野垂れ死にしていたら・・・”とか、
よくない考えが頭をよぎる。いやいや、きっと飲みすぎて寝てるだけさ！



編集部に着いて荷物を下ろすと、昨日いかにも一緒に飲んでそうな社員やフリーランスに
ひとりずつ声をかけ、深夜２時ごろバーを出て別れた人を見つけた。やっぱり。

その後、ひとりで飲んで轟沈したかな？　もう１回、携帯電話を鳴らしてみよう。プルル・・・
「はいもしもし」「あっ、生きてる」「えっ、もしかして今日？」「そうです」「あれー！」

生存確認できたところで、詳しい事情を聞いてみると、１時の待ち合わせも２時の取材も
てっきり明日だと思っていたから、映画館で『宇宙戦争』を観てたと。



もちろん携帯の電源はオフにしてあるし、『宇宙戦争』は上映時間が長いから、悪いけど
地球の危機のことで頭がいっぱいで取材に行くことができなくて申し訳ない。

いつも助けられているので、未曾有の『宇宙戦争』のときぐらい加勢するのは当然のこと
なんて、たまに酒飲み話のネタにできるのは平和の証！　めでたし、めでたし。

アレのこと

4/7発売Tarzan「腹を凹ませる」特集のおしらせメールマガジン「ApeC@ll」より

〔 意外なアレが不足がち、の巻 〕

ぼくは仕事に飽きると編集部を抜け出して散歩するんですが、築地の市場は
東京電力の福島第一原子力発電所から放射性物質が漏れるまで、あんなに
外国人観光客がいっぱい遊びにきていたのに、まったく姿を見かけなくなり
ましたよ。みんな東京で観光するのやめて、他の国に移ったんでしょうね。

観光客だけじゃありません。『ターザン』の誌面に登場する外国人モデルたち
も、専属というわけじゃなく渡り鳥のように世界各地でモデルの仕事をこなして
いるから、東京で仕事するのやめて他の国に渡るモデルが多く、現在ほとんど
国内にいません。

全然いないわけじゃなくて、少しは居残り組がいるんですが、その少ないモデル
を他の雑誌や広告媒体と取りあう状況が生まれており、ちょっと前にコンビニで
食べ物や水が取りあいになったのと非常によく似ています。不便だけど、何とか
調達しようと思ったらできないわけでもない。

そのうち築地に外国人観光客の姿が戻ってきたら、モデルもまた日本にやって
きて仕事をするようになるでしょう。そのときがくるまで、ぼくたちは普段よりも
モデルの動向に気を配りつつ、福島の様子も気にしながら、毎号毎号ちゃんと
『ターザン』を作り続けますよ。お楽しみに！

（ 担当：サカタ ）


築地市場

※震災から１か月あまり、被災地などで満足にカラダを動かすことができないことによる
不調を訴える人が増えてきているそうです。ターザン編集部の有志が、避難所や自宅で
誰でも行える、血流改善のためのエクササイズ集をまとめて、著作権フリーで公開する
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