大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・🍑・MOMOTO・🍑デブだって彼女が欲しい!・21『最新の鞄やろー!・5』

2019-01-27 06:07:37 | ノベル2

🍑・MOMOTO・🍑デブだって彼女が欲しい!

21『最新の鞄やろー!・5』  


 作品に血が通っていない、思考回路、行動原理が、高校生のそれではない。

 死亡宣告のような一文がパソコンの画面に浮かんでいた。
「これは……?」
「なんなのよ?」
 オレと桜子の言葉が重なった。

「これが『最新の鞄やろー!』に繋がるんだけど、まずは、話を聞け」

 気だるそうに脚を組み直して八瀬が言う。どうやら体調が悪いのは本当のようだ。
「妻鹿悦子の『最新の鞄やろー!』は、県大会じゃ最優秀だったが、その上の地方大会じゃ選外になってる。で、作品に血が通っていない以下が、その時の審査評だ」
「え、ちょっとひどいんじゃ……ウ!」
 桜子は、紅茶を口に含んで固まってしまった。
「ちょっと渋すぎるんじゃ……」
「そうか?」
 八瀬は平気なようだ。で、オレが飲むと……やっぱり渋い。
「すまん、熱のせいで味覚が変になっている。入れ直してくる。地方大会の映像があるから観ていてくれ」
 八瀬がキッチンに立っている間に画像を観た。実上演では40分ほどあるようだが、10分ほどのダイジェストに編集されていた。
「……わ、すごい!」
 桜子もオレも身を乗り出した。悦子演ずる大山満代は下着姿で喚いている。高校生のそれはもちろん、それ以外の芝居も観たことないが、大人の芝居でも、こんな大胆なことはしないだろうと思った。悦子は下着姿であるばかりではなく、110キロのオレが親近感を覚えるほどのデブだった。
「でも、グロテスクじゃないわね……なんとも健康的で、素敵に傍若無人」
 観客は恥ずかしさと面白さが入り混じった笑い声をあげている。

 そして、次のシーンが衝撃的! なんと満代は素っ裸!!! 桜子は思わず両手で顔を覆った。

「よく見ろよ、ちゃんと肉襦袢を着てる」
 紅茶の代わりにお汁粉を持って八瀬が、静止画のアップにした……なるほど、首のところにウッスラとラインが出ている。
「照明と道具で大事なところは見えないように工夫している……観客のどよめきは本物だ」
 満代の行動は突拍子も無いが、青春そのものが、本人は真剣でも、他人には突拍子の無いもので、時に反感や顰蹙を買う。
 でも、妻鹿悦子というおデブには、そういう青春が、とても愛おしいものだというメッセージがしっかりとある。
 顔を伏せていた桜子も、最後には涙をにじませながら笑っている。

「これが、ただセンセーショナルなウケ狙いで『作品に血が通っていない、思考回路、行動原理が、高校生のそれではない』になるらしい」

 お汁粉を啜りながら、八瀬が締めくくった。
「で、最新の鞄やろー!は、どうなるんだ?」
「ああ、ここ」
 八瀬がジャンプさせた映像は審査発表のところで、審査員が国富高校の評を言い終わったところで声が入っていた。

――最新の鞄やろー!――

「これを平がなにし、順序を変える……」
 八瀬は、一枚に一文字ずつ書いたメモ用紙の順番を入れ替えた。

 さ・い・し・ん・の・か・ば・ん・や・ろ・ー・!

 し・ん・さ・い・ん・の・ば・か・や・ろ・ー・!

 審査員のバカヤロー!

「「なるほどー!」」

 オレと桜子の声が揃った……が、八瀬は深呼吸して、話を続けた。


 

🍑・主な登場人物

  百戸  桃斗……体重110キロの高校生

  百戸  佐江……桃斗の母、桃斗を連れて十六年前に信二と再婚

  百戸  信二……桃斗の父、母とは再婚なので、桃斗と血の繋がりは無い

  百戸  桃 ……信二と佐江の間に生まれた、桃斗の妹 去年の春に死んでいる

  百戸  信子……桃斗の祖母 信二の母

  八瀬  竜馬……桃斗の親友

  外村  桜子……桃斗の元カノ 桃斗が90キロを超えた時に絶交を言い渡した

 


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