大橋むつおのブログ

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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・077『昭和の個人情報』

2024-02-02 16:20:53 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
077『昭和の個人情報』   




 昭和の学校に個人情報の概念は無い。

 控え目に言っても、その概念は低い。メッチャ低い。

 令和がスカイツリーだとしたら、家の屋根に載ってるテレビアンテナかというくらいに低い!


 学校には緊急連絡網というものがある。一番上に藤田先生(担任)の住所と電話番号があって、そこから下に二本の矢印。一つが委員長の高峰君、もう一つが副委員長のたみ子。
 二人のところからさらに、それぞれ三つの矢印が伸びて、矢印の下には七人か八人の名前があって、順番に矢印で繋がってる。むろん、それぞれに住所と電話番号が付いている。

 そして、イザという時には藤田先生が高峰君とたみ子に電話して、あとは伝言ゲーム式に緊急連絡ができるという仕組みになっている。

 この個人情報野ざらしの極めつけは卒業アルバム。巻末にはダメ押しに住所と電話番号と進路先(進学先とか就職先とか浪人中とか)が印刷されている!

 一学期の全校集会で『不幸の手紙』の被害が出てると生活指導の若杉先生が注意してたけど(028『臨時の全校集会』)、そもそもの元凶は、この個人情報の扱い方だと思う。

 でもね、あたしは令和からの越境入学なんで、不要な自己主張やら意見表明はやらない。

「まあ、実際に使われることは無いと思いますよ」

 情報屋のロコも平気で住所録の調査書に書いてたしね。

 お祖母ちゃんからも、あらかじめ言われていた。

「住所は昭和でも令和でもいっしょだし、電話はね……これ書いとけばいいよ」

「え、うちに固定電話は無いでしょ?」

 お祖母ちゃんが示してくれたのは局番から、うちの町の固定電話だと分かる。

「昔使ってた番号」

「昔の番号なんて、どうすんの?」

「これでかけてみて」

 お祖母ちゃんは自分のスマホを差し出した。

 で、かけてみると、わたしのスマホが鳴った。

「まあ、かかってくることなんてめったにないし。友だちからかかってくるとしても、夜中か休日。それも毎日登校してりゃあ、学校にいる時に済ましちゃうから、問題ないよ」

「あ、そうなんだ(^_^;)」

 気楽に納得して九カ月。緊急連絡網も住所録も活用されることは一度も無かった。

 しかし、明日は節分「今年の恵方巻はどこで買おうかなあ……」とお茶をすすりながらお祖母ちゃんが呟いた時にスマホが鳴った。

 

☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校一年生
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         1年5組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            1年5組 副委員長
  • 高峰 秀夫             1年5組 委員長
  • 吉本 佳奈子            1年5組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            1年5組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • 藤田 勲              1年5組の担任
  • 先生たち              花園先生:4組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  教頭先生
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • 時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹        
  • その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部)
  • 灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  
  
 

 

 

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