大橋むつおのブログ

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REオフステージ(惣堀高校演劇部)146・どれが伊藤香里菜や?

2024-09-09 09:11:58 | 小説7
REオフステージ (惣堀高校演劇部)
146・どれが伊藤香里菜や? 啓介 




 ええ……どれが伊藤香里菜や?


 放課後の屋上に来てみると、十人ちょっとの先客がおって、その全てが女子!

 ベンチに腰掛けてスマホをいじってるやつ、本を読んでるやつ……なにやら楽し気に喋ってるやつ……ボーっと金網の外の景色を眺めてるやつ……昼に食べ損ねたんか弁当を食べてるやつ……友だち同士で喋ってるやつ……いろいろ。

 たまたまなんか、そういう傾向なんか、完全に女子の憩いの場。

 ああ、思い出した。

 まだ演劇部に入部したての頃、三年の先輩らと発声練習をしにきたことがある。あの時は吹部も練習しとって男子が二人ほどおったけど、いまは、その吹部もおらへん。気象天文部というのもあって、あそこも活動場所は屋上のはずやけど、マイナーなクラブやから潰れてるんかもしれへん。

 とにかく、今の屋上は全員女子。

 そして、そのうちの五人がツインテール。

 一人は友だちと喋っとおるさかい、除外して、残りの四人のうちの一人。

 セーヤンが写真見せてくれてたから見当はつくと思たんやけど、ピンボケやったし、これは分からへん。

 おーい、伊藤香里菜!……叫ぶわけにもいかへん。

 ジロジロ見てるわけにもいかへんので、金網の外に目を向けると本館前の時計塔が約束の時間を5分超えてるのを示してる。

 あ……ひょっとして担がれた?

 いまごろ、友だちらとスマホをズームにして「アホが、その気になって待っとおる(*`艸´)」と笑っとおるのかもしれへん。なんせ、この本館の屋上は北館からも南館からもお見通しや。

 あ……なんか、キョドってるねんやろなあ、チラチラこっちを見てる奴もおる。

 時計塔を見ると、もう十分以上も経ってしもてる。

 これはいったん戻るか。一階降りた階段のとこで待っててもいっしょやろし。

 そう思って、回れ右すると足早に階段室の方に向かった。

 ドシン! キャ! ウワ!

 開け放たれた扉から出ようとしたら、思い切りぶつかってしもた!

 後ろ手ついて倒れてるのはロン毛の女生徒。

「ご、ごめん!」

「こ、こっちこそ……あ、ああ、小山内先輩!」

「え、ええ?」

「遅れてすみません、伊藤香里菜です(#>д<#) !」

 ロン毛がワタワタと顔を真っ赤にする。

 は……?

 すぐには分かれへんかった。

 
☆彡 主な登場人物とあれこれ
  • 小山内啓介       演劇部部長
  • 沢村千歳        車いすの一年生  
  • 沢村留美        千歳の姉
  • ミリー         交換留学生 渡辺家に下宿
  • 松井須磨        停学6年目の留年生 甲府の旧家にルーツがある
  • 瀬戸内美春       生徒会副会長
  • ミッキー・ドナルド   サンフランシスコの高校生
  • シンディ―       サンフランシスコの高校生
  • 生徒たち        セーヤン(情報部) トラヤン 生徒会長 谷口 織田信中 伊藤香里菜
  • 先生たち        姫ちゃん 八重桜(敷島) 松平(生徒会顧問) 朝倉美乃梨(須磨の元同級生) 大久保(生指部長)
  • 惣堀商店街       ハイス薬局(ハゲの店主と女房のエリヨ) ケメコ(そうほり屋の娘


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