大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

銀河太平記・041『ミクの朝』

2021-04-20 09:55:52 | 小説4

・041

『ミクの朝』未来   

 

 

 予測はしていたけど、心はブルーだよ。

 学園艦が爆破されて、修学旅行中の生徒や先生やクルーたちが亡くなった。

 後半組は、まだ地上に居たので、犠牲になったのは前半組。

 幼稚園や小学校からいっしょだった前半組の子たちの顔が浮かんでは消えていく。

 熱!

 腹ばいになった脚の裏側が熱くなって、小さな悲鳴が出る。

 家について、お父さんと少し話して、そのままベッドにうつ伏せに飛び込んでそのまま。

 部屋に入った時は、せめてシャワーを浴びようと思って上と下を脱いだところで限界。

 上はタンクトップ、下はパンツだけ。

 脚の裏が熱いのは、カーテンが半分開いていたから下半身にだけお日様があたっているからに違いない。

 お日様には人を元気にする力がある。

 日光に当っているだけでビタミンDが生成されるし、セロトニンという元気物質も作られる。

 だから、起床時間になるとカーテンが開くように設定してあるんだけど、調子が悪いんだろう、半分しか開いていない。

 さ、起きるか(^▽^)/

 アニメキャラのような空元気出すと、着替えを掴んでシャワーを浴びに行く。

 おお!?

 浴室には先客が居た。

「ムー、声くらいかけなしゃいよ!」

 胸の高さでテルがボヤく。

 浴室はテルと共用なんだ。というか、元来は一部屋だったのを区切ってあるだけだからバストイレは共用。

 うちの両親は二三人子供を作るつもりでいたから、医院兼自宅を作る時に子供部屋は二人で使える広さにしていたんだよ。

 まあ、そういう余裕があったから、テルの下宿先がうちになったということでもあるんだけどね。

「テルは朝から起きてたの?」

「もちろんだわよさ。家の前掃除して、お花にもおみじゅあげたわよさ」

「そっか、テルは大したもんだね……」

「ウジウジしても、始まんないわよしゃ……」

「うん……」

 ムギュ!

「ちょ、オッパイ掴むな(#'∀'#)!」

「こんにゃ立派なもの付けてんだから、しっかりしゅゆ!」

「あ、ああ、分かったから、も、揉むなああ!」

「朝ごは食べたや、お城行くのよさ」

「あ、ああ、そうだった」

 空港からヒコが電話してくれると、お父さんが出て、わたしの偽者は二日前から上様のお招きでお城に上がっていると伝えられた。

 そいつは偽物と伝えると、お父さんもお母さんもビックリしてた。なんせ、細胞レベルの変装だから実の親でも区別がつかないんだ。

 偽物が持ち帰った荷物もいつの間にか無くなっていて調べようもないし、朝ごはんを食べると、制服に着替えてガレージへ。

「あ、掃除半分残ってるじゃん!」

「ミクの分残してありゅのよさ、当たり前っしょ! 帰ったらやんなしゃい!」

「じゃ、花壇も?」

「それは、やってあるのよしゃ。お花が可哀しょうっしょ」

「あ、そだね(^_^;)」

 これだけの会話をしながらも、テルと二人、自転車を出す。

 テルもわたしも車には乗れるんだけど、未成年が車でお城に向かうのははばかられる。

 

 

※ この章の主な登場人物

  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任
  • 児玉元帥
  • 森ノ宮親王
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン             太陽系一の賞金首

 ※ 事項

  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略

 

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らいと古典・わたしの徒然草・78『今様の事どものめづらしきを』

2021-04-20 07:05:09 | 自己紹介

わたしの然草・78
『今様の事どものめづらしきを』  

 

 

 今様の事どものめづらしきを、言ひひろめ、もてなすこそ、又うけられぬ。世にことふりたるまで知らぬ人は、心にくし。いまさらの人などのある時、ここもとに言ひつけたることぐさ、ものの名など、心得たるどち、片端言ひかはし、目見合はせ、笑ひなどして、心知らぬ人に心得ず思はする事、世なれず、よからぬ人の、必ずある事なり。

 訳すと、こんな感じでしょうか。

 最近流行のめずらしいあれこれを言い広め、得意げになっているのは感心しないぞ。そういうことは世間で言い尽くされてしまうまで、そんな事は知らずにいる人は奥ゆかしいものだ。新米の者がある時、こちら側で言い馴れている言い方、物の名前とかを、分かってる仲間同士で言葉の一部を省略して言い合って、目を見合わせて、笑ったりして、意味を知らない人に「え、なんのことだ?」と戸惑わせて悦に入ってるやつとか、世間のバカが必ずやる事だよな。

 

 兼好は、こう言いますが、流行りのものに飛びつくのは、心身が若い証拠でしょうね。

 わたしなど、いまだにスマホはおろかガラケーも触ったことがありません。

 だから、外出先で急に電話しなければならないことになって「あ、わたしのスマホ使ってください」と勧められてもかけ方が分かりません。

 パソコンは使いますので、キーボードの操作はできるのですが、スマホというやつは「アルファベット」とか「あかさたな……」とかが並んでいるだけです。タッチして上下左右にスライドさせるとか、タッチの回数で文字が変わるとかの操作が必要なんだそうで、わたしにはエニグマの暗号機を操作しろと言われているのとかわりません。

 たまたまの外出先で電話する必要ができたときは、ひたすら公衆電話を探します。

 この公衆電話が、近頃は見つけにくくなりました。

 ちょくちょく自転車で散歩に出かけるのですが、気が付くと十キロやそこら走ってしまって、帰りが遅くなることがあります。以前、六時間余りも走って帰ると「電話ぐらいしてちょうだい」とカミさんに叱られました。言外に――スマホぐらい持てよ!――という気持ちがあるのですが、わたしのスマホ嫌いはどうしようもないと観念しているので、せめて公衆電話からでも電話しろということなのです。

 自宅の八尾市を出て、東大阪市のど真ん中で思いつきましたが、やっと、公衆電話を見つけて電話できたのは守口市でした。

 しかし、公衆電話からの着信はうちの固定電話のディスプレーには『公衆電話』としか表示されません。

 不審な電話にはいっさい出ないカミさんは、なかなか受話器を取ってくれません。

 一分余りも呼び出し音が鳴って、やっと出てくれると無言です。

『あ、オレ。ちょっと遠出して守口市まで来てしもたから、ちょっと遅くなる……聞いてる?』

 十秒ほど空白があって「うん、分かった」と二秒もかからない返事。

 カミさんは、いちおう返事はしたものの、わたしが帰って確認するまでは半信半疑だったようです。

 カミさんのスマホに電話すればよかったのでしょうが、憶えている電話番号は自宅の固定電話だけです。

 いやはや……

 流行りのものに飛びつく浅はかさと、流行りのものに飛びつける心の若々しさは面白くも奥深いものがありますので、また改めて触れたいと思います。

 

 

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真凡プレジデント・58《柳沢先輩は手を切らない》

2021-04-20 06:07:28 | 小説3

レジデント・58

《柳沢先輩は手を切らない》   

 

 

 さすがは柳沢先輩、わたしが倉庫の整理をやっているうちにやっつけてしまった。

 むろんエアコンの取り付けよ。

 しかし、様子がおかしい。

 エアコンが付いてるわりには蒸し暑く、扇風機すら回らずに生徒会室の窓は全開になっている。みんな汗を流してペットボトルのお茶や缶コーヒーなど飲んでいる。

 

 え、あ、どうして?

 

 表情を読んだのだろう、柳沢先輩が解説してくれる。

「設置許可と電気代の問題なんだとさ」

「なんですか、それ?」

「エアコンは設置許可が必要で、電気代もバカにならないから、運転の許可が下りないの」

 お茶を飲みつくした綾乃が補足する。

「さっき事務の人がやってきて、宣告された」

「えと……わたしがいけないの」

「なんで、なつきが?」

「なつきは悪くないって」

「だって……」

「じつはね、エアコンつくのが嬉しくって、なつきがお茶を買いに行ったのよ。そしたら、自販機が故障してお茶が出てこないから……」

「あ、あ、だから事務所に知らせに行ったのよ」

「自販機の故障なら食堂のおじさんでしょ」

「ま、それで、あまりになつきが嬉しそうなもんで『なにかいいことあったのかい?』と聞かれてさ」

「『生徒会室にエアコンが付くんでーす(^▽^)/』って、言ってしまった……」

 

 なるほど、それで視察にこられて難癖付けられた……か。

 

「でも、とりあえず点けてみるとか?」

「だめだよ、配電盤のブレーカーごと電源を落とされてる」

「エアコンを撤去しない限り電源も使わせないってさ」

 杓子定規な学校にも腹が立つけど、汗を流しながらもヘラヘラお茶を飲んでる柳沢先輩もどうかと思う。

「じゃ、どんな手続き踏めばエアコンを点けられるんですか?」

「おーーーー」

「なんですか先輩!?」

「いつも取り留めのない顔だけど、怒ると、けっこう美人じゃないか」

 先輩のオチョクリに執行部の三人の視線が集まる。

「あーー確かに……写真撮っていい?」

「困ります」

「あ、もう撮っちゃった」

「あの、だから手続きは?」

 ダメならキチンと正面から立ち向かってやろうという気になっている。

「我々から生徒会顧問に言って、学校の運営委員会に掛けられて、年間の予想消費電力の見積もりなんかも添えて職員会議で許可が下りなきゃいけないんだぞ」

 う~ん、ちょっとまどろっこしいけど、やってやろうという気になって来た。

「しかしな真凡、運営委員会も職員会議も議案が詰まってるから、取り上げてもらえるのはいつになるか分からんぞ」

「え、そんなあ」

「それに、そのプロセスで代議会とか、生徒会側の評決を得てないとかで横やりが入ると、俺は見ている」

「ニヤニヤ笑わないで言ってもらえます!」

 我ながら言葉に棘が出てきた。

「学校って役所だからさ、特に事務は、モロ行政職だからな、気に入らないとなったらいくらでも邪魔するさ」

「だったら、どうしろって!?」

「よし、俺が行ってくるよ。汗も引いたし、真凡のレアな表情も見られたしな」

 

 先輩はグシャリと空き缶を握りっ潰して席を立つ。

 わたしやお姉ちゃんのように手を切らないところがシャクだ!

 

☆ 主な登場人物

  •  田中 真凡    ブスでも美人でもなく、人の印象に残らないことを密かに気にしている高校二年生
  •  田中 美樹    真凡の姉、東大卒で美人の誉れも高き女子アナだったが三月で退職、いまは家でゴロゴロ
  •  橘 なつき    中学以来の友だち、勉強は苦手だが真凡のことは大好き
  •  藤田先生     定年間近の生徒会顧問
  •  中谷先生     若い生徒会顧問
  •  柳沢 琢磨    天才・秀才・イケメン・スポーツ万能・ちょっとサイコパス
  •  北白川綾乃    真凡のクラスメート、とびきりの美人、なぜか琢磨とは犬猿の仲
  •  福島 みずき   真凡とならんで立候補で当選した副会長
  •  伊達 利宗    二の丸高校の生徒会長

 

 

 

 

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