銀河太平記・041
予測はしていたけど、心はブルーだよ。
学園艦が爆破されて、修学旅行中の生徒や先生やクルーたちが亡くなった。
後半組は、まだ地上に居たので、犠牲になったのは前半組。
幼稚園や小学校からいっしょだった前半組の子たちの顔が浮かんでは消えていく。
熱!
腹ばいになった脚の裏側が熱くなって、小さな悲鳴が出る。
家について、お父さんと少し話して、そのままベッドにうつ伏せに飛び込んでそのまま。
部屋に入った時は、せめてシャワーを浴びようと思って上と下を脱いだところで限界。
上はタンクトップ、下はパンツだけ。
脚の裏が熱いのは、カーテンが半分開いていたから下半身にだけお日様があたっているからに違いない。
お日様には人を元気にする力がある。
日光に当っているだけでビタミンDが生成されるし、セロトニンという元気物質も作られる。
だから、起床時間になるとカーテンが開くように設定してあるんだけど、調子が悪いんだろう、半分しか開いていない。
さ、起きるか(^▽^)/
アニメキャラのような空元気出すと、着替えを掴んでシャワーを浴びに行く。
おお!?
浴室には先客が居た。
「ムー、声くらいかけなしゃいよ!」
胸の高さでテルがボヤく。
浴室はテルと共用なんだ。というか、元来は一部屋だったのを区切ってあるだけだからバストイレは共用。
うちの両親は二三人子供を作るつもりでいたから、医院兼自宅を作る時に子供部屋は二人で使える広さにしていたんだよ。
まあ、そういう余裕があったから、テルの下宿先がうちになったということでもあるんだけどね。
「テルは朝から起きてたの?」
「もちろんだわよさ。家の前掃除して、お花にもおみじゅあげたわよさ」
「そっか、テルは大したもんだね……」
「ウジウジしても、始まんないわよしゃ……」
「うん……」
ムギュ!
「ちょ、オッパイ掴むな(#'∀'#)!」
「こんにゃ立派なもの付けてんだから、しっかりしゅゆ!」
「あ、ああ、分かったから、も、揉むなああ!」
「朝ごは食べたや、お城行くのよさ」
「あ、ああ、そうだった」
空港からヒコが電話してくれると、お父さんが出て、わたしの偽者は二日前から上様のお招きでお城に上がっていると伝えられた。
そいつは偽物と伝えると、お父さんもお母さんもビックリしてた。なんせ、細胞レベルの変装だから実の親でも区別がつかないんだ。
偽物が持ち帰った荷物もいつの間にか無くなっていて調べようもないし、朝ごはんを食べると、制服に着替えてガレージへ。
「あ、掃除半分残ってるじゃん!」
「ミクの分残してありゅのよさ、当たり前っしょ! 帰ったらやんなしゃい!」
「じゃ、花壇も?」
「それは、やってあるのよしゃ。お花が可哀しょうっしょ」
「あ、そだね(^_^;)」
これだけの会話をしながらも、テルと二人、自転車を出す。
テルもわたしも車には乗れるんだけど、未成年が車でお城に向かうのははばかられる。
※ この章の主な登場人物
- 大石 一 (おおいし いち) 扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い
- 穴山 彦 (あなやま ひこ) 扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子
- 緒方 未来(おがた みく) 扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
- 平賀 照 (ひらが てる) 扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
- 姉崎すみれ(あねざきすみれ) 扶桑第三高校の教師、四人の担任
- 児玉元帥
- 森ノ宮親王
- ヨイチ 児玉元帥の副官
- マーク ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス バルス ミナホ ポチ)
- アルルカン 太陽系一の賞金首
※ 事項
- 扶桑政府 火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
- カサギ 扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
- グノーシス侵略 百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略