銀河太平記・287
「こんどは、これだけ!」
二百三の小梅(シャオメイ)が指を一本だけ立てたっス。
「ええ、1ダースだけっすかぁ(-_-;)」
「違うわよ、1グロス」
「え!?」
「ミサンガって、どうかと思ったんだけど、お手軽な三里屯土産でボチボチ出てるのよ。あたしもよく分からなかったんだけど、このキッチリした編み方がね、微妙にトラッドなところがウケてるみたいよ」
「ああ、原型は日本の真田紐っス。丈夫で、キッチリしてて他のミサンガとは一味ちがうっス」
「うん、平べったくて腕に馴染むとこかなぁ、他のに比べると微妙にトラッドって感じとかぁ……よく分かんないけど、まあまあ出てるっぽいよ」
「他のも少し置いてっていいっすか。もう一工夫すれば、他のもいけると思うっス。それと、よそではTシャツとかも少しずつ出始めてるんで、MとLとLLを半ダースほどぉ」
「う~ん……ま、いいか。今月いっぱいということで」
「あざ~っス! 二百三(アルバイサン)サマサマっす!」
「ねえ、これから昼休憩なんだけど、いっしょにどう? 近所に飲茶の店ができたのよ」
「あ、いいっすね! お世話になってるから奢らせてもらうっすよ!」
「ヘヘ、ごめんね、なんかハメたみたいで」
「いえいえ、他ならぬ小梅ネーサンっス、猫猫も嬉しいっス!」
「じゃあ、マスター、お昼行ってきま~す」
奥の方でマスターが手を振ってるのが見えて、街に繰り出したっす。
「まだここへ来て三月ちょっとっすけど、けっこう店とか入れ替わってるっスねぇ」
「店賃が高いからね、よその倍は稼げないと利益出ないのよ」
「はあ……ユニクラ……丸金……無印絶品……玉将ラーメン……くらら……なんか、日本的なのも多いっすね」
「ああ、名前だけで漢明人の経営ってのが半分だけどね。いろいろ言っても日本のは人気かなあ」
「でも、日系企業でも、けっこう潰れたり撤退してたり……」
つい、ヒンメル副長の癖で検索してしまうっス、ハンベも長年使ってるんで、会話の内容で勝手にデータを出すっス。この四半期、漢明の景気は下向きっス。
「うん、日系って、倒産するにしても撤退するにしても保障とかしっかりしてるでしょ。漢明が全部悪いわけじゃないけど、退職金とかもまともに出ないとこもあるからねえ……」
「うちに発注してもらえるのも日系って要素が強いんすか?」
「ああ、それもあるけど、マスターもあたしも猫猫のこと気に入ってるし(^▽^)」
「え、あ、なんか照れるっス(n*´ω`*n)」
「あはは、じゃあ、これオーダーしてもいいよね(^▽^)/」
いつのまにか飲茶の店に付いて、小梅ネーサンは、店でいちばん高いのを指さしてたっス!
「いやあ、ごちそうさま。悪いね、お土産まで買わせちゃって」
「アハハ、いいっすいいっす(^_^;)」
「あ……」
小梅ネーサンの横顔がピクっとこわばったっス。
彼女の視線の先には、日系服飾店のユニーホームが通行人の親子連れを怒鳴りつけてたっス!
「なにボサっと歩いてんだ! ガキのアイスが付いちまっただろーがあ!」
「あ、すみません。すぐに拭きますから」
「拭くんじゃねえ! よけい汚れが広がっちまう!」
「え、あ、でも」
ドゲシ!
パンチと蹴りを同時に喰らって、親父の方は二回転してひっくり返ったっす! 子どもは怯えて突っ立ったまま声も出せねえっス! 頭に来たっす!
「ちょっとおッ!」
自分が切れる前に小梅ネーサンが出たっす。
日系服飾店の肩に手を回すと、なにか一言二言……すると、日系服飾店は顔を真っ赤にしながらも頷いて足早に歩き去って、同じ制服着たのが三人後を追って消えたっす。
「びっくりしたねえ、お嬢ちゃん。さ、お姉ちゃんがお土産あげるから、ね、さっきのオバサンも気が立ってただけなんだ。悪い人じゃないからね、さ、お父さんも気を付けてねぇ」
さっきのお土産をあっさり渡して、その場を収めると、照れた顔して戻ってきたっス。
「アハハ、とんだところを……さ、行こう」
少し歩くと小梅ネーサンは話してくれたっス。
「あのオバサンの店潰れたんだって。今朝出勤したらいきなり」
「あ、退職金ももらえないってやつ?」
「もう三月も給料出てなかったって……」
「そうなんすか……」
少し遠回りして二百三に帰ったっス。
小梅ネーサンも自分も気持ちを切り替えて、午後の仕事に打ち込んだっス。
☆彡主な登場人物
大石 一 (おおいし いち) 扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ) 扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく) ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる) 扶桑科学研究所博士
加藤 恵 天狗党のメンバー 緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ) 扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
扶桑 道隆 扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ) 将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶 小姓頭
児玉元帥(児玉隆三) 地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人) 児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー
テムジン モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人
森ノ宮茂仁親王 心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ 児玉元帥の副官
マーク ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン(メアリ・アン・アルルカン) 銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
氷室(氷室 睦仁) 西ノ島 氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平) 島守を称す(270から)
村長(マヌエリト) 西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷) 西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平 西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん) 今上陛下の妹宮の娘
劉 宏 漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
王 春華 漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
胡 盛媛 中尉 胡盛徳大佐の養女
栗 尊宅(りつそんたく) 輸送船の船長 大統領府参与
朱 元尚 大佐 ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
※ 重要事項
扶桑政府 火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ 扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略 百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信 修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西ノ島 硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
パルス鉱 23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社 シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
ピタゴラス 月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
奥の院 扶桑城啓林の奥にある祖廟
大石 一 (おおいし いち) 扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ) 扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく) ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる) 扶桑科学研究所博士
加藤 恵 天狗党のメンバー 緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ) 扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
扶桑 道隆 扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ) 将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶 小姓頭
児玉元帥(児玉隆三) 地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人) 児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー
テムジン モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人
森ノ宮茂仁親王 心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ 児玉元帥の副官
マーク ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン(メアリ・アン・アルルカン) 銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
氷室(氷室 睦仁) 西ノ島 氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平) 島守を称す(270から)
村長(マヌエリト) 西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷) 西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平 西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん) 今上陛下の妹宮の娘
劉 宏 漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
王 春華 漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
胡 盛媛 中尉 胡盛徳大佐の養女
栗 尊宅(りつそんたく) 輸送船の船長 大統領府参与
朱 元尚 大佐 ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
※ 重要事項
扶桑政府 火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ 扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略 百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信 修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西ノ島 硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
パルス鉱 23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社 シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
ピタゴラス 月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
奥の院 扶桑城啓林の奥にある祖廟