ETUDE

~美味しいお酒、香り高い珈琲、そして何よりも素敵な音楽。
これが、私(romani)の三種の神器です。~

若杉弘&東京フィル ワーグナー 序曲集他

2006-10-06 | コンサートの感想
昨日は、仕事を少し早めに切り上げて、東京フィルの定期演奏会を聴きに行きました。
指揮は若杉弘さんです。

席は、9月にN響の定期で「英雄」を聴いて以来、すっかり味をしめたP席。
(注:ティンパニの後方、パイプオルガンの前の席のことです)
P席は、指揮者の表情が100%見えるし、音楽を能動的に楽しみたい私のような人間にはまさに最高の席です。
おまけに一番安い!
コンサートの新しい楽しみ方を知りました。しばらく、はまりそうです。

<日時>2006年10月5日(木) 19:00
<会場>サントリーホール
<曲目>
■ イサン・ユン/交響曲第4番
 (リンザーの「暗黒のなかで歌う-」をテーマとする2楽章のシンフォニー)
■ ワーグナー/歌劇「さまよえるオランダ人」序曲
■ ワーグナー/歌劇「ローエングリン」第3幕への前奏曲
■ ワーグナー/歌劇「タンホイザー」序曲
■ ワーグナー/楽劇「トリスタンとイゾルデ」第1幕への前奏曲
■ ワーグナー/楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲
<演奏>
■若杉弘 指揮
■東京フィルハーモニー管弦楽団

       


前半は韓国を代表する作曲家イサン・ユンの第4シンフォニー。
この手の曲は、正直あまり得意じゃないんですが、実際に若杉さんの指揮を目の当たりにしながら聴くと、とっても面白かった。
とくに第2楽章がよかったなあ。
冒頭、オーボエが篳篥のような表情で歌うところからスタートするのですが、静けさを支配する部分と高揚する部分が交錯した後、最後には再びオーボエのテーマが戻ってきます。
想像通りではあるんですが、やっぱり懐かしさを感じてジーンと来ました。
もし、音だけでこの曲を聴いたとしたら、私なんかはきっと退屈してしまうでしょうね。
やっぱり、現代曲は、コンサートで指揮者や奏者の表情を見ながら聴くに限ります。

それから、第2楽章で若杉さんの表情をずっと追いかけていると、どういうわけか故岩城宏之さんの表情がダブってきました。
このコンサートは、もともと岩城さんが振る予定になっていたのです。
しかも、この曲の初演者も岩城さん。その事実を知っていたからかもしれませんが、この日の若杉さんの指揮ぶり、指示の仕方が、どこか岩城さんの面影を残していたのでしょうね。
不思議な経験でした。

後半は、ワーグナーの序曲集。
若杉さんの指揮は、決して過度の演出をしません。
むしろ表情は、ワーグナーにしては控えめと言ってもいいでしょう。
しかし、ツボは絶対外さない。やはり、ゼンパーオペラのシェフをされていただけのことはありますね。
それから、この日とくに強く感じたのは、フレージングの明快さ。
若杉さんは、フレーズをブツブツ切らずに、出来る限り長めに響かせます。それでいて、もたれることがないのは、ひとえに明瞭この上ないフレージングの賜物でしょう。
オーケストラのメンバーも、とても弾きやすそうでした。

個別の曲では、ローエングリンの第三幕への前奏曲が印象に残りました。
豪快にして繊細。ここで終わらないで「婚礼の合唱」まで続けて聴きたくなるような素敵な演奏でした。
ひとつだけ不満があるとしたら、トリスタン前奏曲の演奏順でしょうか。
この曲は、やっぱり最初か最後にやってほしかったなぁ。
ただし、演奏は素晴らしかった。若杉さんの精緻な指揮を見ていて、この曲の構造があらためて理解できたような気がします。
この日はイゾルデの「愛の死」へ続けるのではなく、若杉スペシャル?でエンディング。なかなか面白かったです。

若杉さんの音楽は昔から大好きだったのですが、実際に聴くのはこの日が初めて。
しかし、コンサート全体を通して、「音楽に語らせる、音楽と誠実に向き合う」とはどんなことか、身を持って教えてもらったような気がしました。


コメント (6)
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