ETUDE

~美味しいお酒、香り高い珈琲、そして何よりも素敵な音楽。
これが、私(romani)の三種の神器です。~

ブリュッヘン&新日フィル ハイドン:交響曲第93番,95番,96番「奇跡」

2009-02-13 | コンサートの感想
ブリュッヘンのハイドンを聴いてきました。
まる一日以上経つというのに、トリフォニーホールで体いっぱいに感じた幸福な感覚は、いささかも衰えません。

<日時>2009年2月11日(水)15:00開演
<会場>すみだトリフォニーホール
<曲目>
ハイドン作曲
■交響曲第96番ニ長調「奇蹟」Hob.I-96
■交響曲第95番ハ短調Hob.I-95
■交響曲第93番ニ長調Hob.I-93
<演奏>
■フランス・ブリュッヘン指揮
■新日本フィルハーモニー交響楽団

モダン楽器にピリオド奏法、両翼配置というこのコンビでは当然のスタイル。
ハイドンプロジェクトを前に、ブリュッヘンは謎かけのようなコメントを残しています。
「ハイドンの交響曲を演奏するにあたって、決められたルールがたくさんあるのです。今日では忘れ去られてしまったルールが・・・。その方法さえ会得すれば、すべては自ずと正しい方向に向かいます。」

この言葉が何を意味しているのか、正解はわかりません。
しかし、この日の演奏を聴いて私が何よりも感じたのは、「音のつながりを、本当に大切にしている!」ということでした。
あるパートが奏でる音型、音色、アーティキュレーションを体で感じつつ、次の展開を想像しながら演奏する。
新しい芽・変化の芽が出てきたら、全員でそれを感じ取って次へ繋げていく。
こんな話はアンサンブルの基本中の基本ですが、そのことをこの日の演奏であらためて思い知らされました。

たとえば、93番の第2楽章ラルゴカンタービレ。
山の澄み切った空気のように清々しい冒頭の弦楽四重奏を引き継ぐトゥッティ、力を誇示しない短調のフォルテ、もとのテーマに戻るときの喜び、そのいずれも極めて自然なつながりが感じられました。
その後、弦とティンパニの3連符に乗せて伸びやかにオーボエが歌いだすと、そんなオーボエに導かれるように、今度は3連符の音型が一方の主役になります。
ブリュッヘンたちの演奏では、伴奏に回ってもその3連符の音型がはっきり聞こえるように強く意思統一されていました。
だからこそ、冒頭のテーマと3連符音型が重なるときの美しさが倍加するのです。

また、3曲ともそうでしたが、第1楽章の序奏から主部に入るときに、目立つような変化をつけません。「いつの間に主部に入ったの?」と感じるくらい自然な流れでした。
そして、ハイドンには、つい付点のリズムを強調したくなる箇所や、アーティキュレーション・テンポを変えてみせたくなる箇所が随所にでてきますが、ブリュッヘンはそんな小細工は目もくれませんでした。

ノンヴィブラート特有のピュアな響きは、ピリオド奏法の大きな強みですが、ともすればどこか冷たく機械的なイメージになる可能性も持っています。
この日のブリュッヘンたちの演奏は、そんなレベルを遥かに超えたサウンドだった。
アンサンブルに不可欠なイマジネーション・自発性がもたらす豊かで温かいサウンド。
縦の線を合わせることを目標にしていないので、響きが決して痩せないのですね。
思い出すだけで、私は胸がいっぱいになってきます。

ハイドンは大好きな作曲家ですが、こんな経験は初めてでした。
ほんの少し耳をそばだててみれば、あちこちに新しい発見がある充実したハイドン。
ブラヴォーと言おうとしたけど、涙がこぼれそうで何も言えなかった。
ただ、心の中でひとこと「ありがとう」とだけ言いました。




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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
>emiさま (romani)
2009-02-14 00:14:00
こんばんは。

>人間的な・・? ハイドン
よくぞ言ってくださいました。
まさに、そうでした。
音楽職人ハイドンではなく、人間ハイドンを聴かせてもらったような気がします。
ハイドンのシンフォニーを聴きながら胸がいっぱいになるとは、正直考えていませんでした。私にとっても、本当にかけがえのない体験ができました。

先日、かつて味わったことのないような、とんでもない珈琲に出会いました。
パナマ・ゲイシャという珈琲ですが、柑橘系の果物のような甘さと独特の香りをもっているんです。
これぞスペシャリティコーヒーという逸品でした。
機会があればぜひお勧めです。
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ハイドン 万歳 (emi)
2009-02-13 12:55:08
人間的な・・?(うまくいえません・;)ハイドンをお聴きになったのですね。と拝読して理解しました。

ハイドンをそう聴かせるには 根底に深い敬愛をもっていなければ 不可能だと思います。
そしてそれを聴き取ってくれる聴衆はハイドンとコンタクトを取れた方。
素晴らしいです。

珈琲も めちゃくちゃ美味しいものを味わいたいと渇望している精神状態におります。
では また。
失礼しました。
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