ETUDE

~美味しいお酒、香り高い珈琲、そして何よりも素敵な音楽。
これが、私(romani)の三種の神器です。~

ケフェレック ピアノ協奏曲第9番変ホ長調「ジュノム」K271ほか(「熱狂の日」その8)

2006-05-07 | コンサートの感想
ペネティエ&香港シンフォニエッタの後は、同じ会場で待望のケフェレックのコンチェルトです。
席はまたまた1列目。
先ほどより少し右に寄った座席ですが、ケフェレックの表情が一番見やすい場所でした。
何とラッキーな・・・!

<日時>2006年5月6日(土)15:15
<場所>東京国際フォーラム ホールB7
<演奏者>
■アンヌ・ケフェレック(ピアノ)
■ゴルダン・ニコリッチ(指揮)
■オーヴェルニュ室内管弦楽団
<曲目>
モーツァルト
■ディベルティメントニ長調「ザルツブルク交響曲第1番」K136
■ピアノ協奏曲第9番変ホ長調「ジュノム」K271 

オーヴェルニュ室内管弦楽団の演奏は、CDでも聴いたことがなかったので、この日がまったく初めてでした。
弦楽器は各パート4名ずつ、コントラバスだけが2名という構成です。
さあ、コンサートマスター兼指揮者のニコリッチが登場。
ニコリッチは現在ロンドン交響楽団のコンサートマスターも務めているそうですが、背が高い!
またとても愛嬌のある表情をしています。

一曲目のK136.
冒頭から何と生き生きした音楽だろう。速めのテンポでどんどん曲は前に進んでいきます。
これぞディベルティメント、と言いたくなるような素晴らしい演奏です。
比較すると大変申し訳ないのですが、つい今しがた聴いた香港シンフォニエッタの響きとは随分違います。
同じホール、ほぼ同じポジション、同系統の曲だから、どうしても比較してしまいますが、正直別次元の音楽と言っても差し支えありません。
「高い技量を持ったプレーヤー達が、ニコリッチの強烈なリーダーシップのもと余裕綽々で楽しみながら演奏している」、まさにそういった風情なのです。
こんなモーツァルトが聴く側からみても、楽しめないわけがありません。
モーツァルトがもしこの演奏を聴いていたら、きっと拍手喝采したでしょう。

二曲目は、お目当てのケフェレックをソリストに迎えての「ジュノム」。
この日のケフェレックは、ソロのときのシックな衣裳とは異なり、真っ赤な衣裳で登場しました。
コンチェルトは、こんな雰囲気の方が映えますよね。
第1楽章冒頭から、愉悦感たっぷりの音楽を聴かせてくれます。
ケフェレックはソロのときと同様、実に冴えたタッチ。
そして、ニコリッチ率いるオーヴェルニュのメンバーが、あるときはケフェレックを支え、あるときはカウンターになって見事な音楽を聴かせてくれました。
何か、さながら最高の掛け合い漫才をみているよう。
ケフェレックが演奏中にみせてくれた素晴らしい微笑みの表情を、お伝えできないことが本当に残念です。
とくに第2楽章からフィナーレにかけては、私が聴いたこの曲の中のベストフォームにはいります。
それから、ニコリッチが、立ち上がりそうになりながら(いや、ときどき本当に立っていました)、何とも表情豊かにオケのメンバーをリードしていた姿も忘れられません。

この音楽祭では、小曽根真さんをソリストに迎えたジュノムが大変話題になっていましたが、ケフェレック組の演奏も、スタイルの違いはあるけど決して負けていなかったと思います。
終演後も大きな拍手に包まれていました。

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ペネティエ ピアノ協奏曲第22番変ホ長調K482 他(「熱狂の日」その7)

2006-05-07 | コンサートの感想
昼食はMICKEYさんと「つばめグリル」でいただきました。
音楽にまつわるいろいろな話題であっという間に時間が経ってしまい、話の続きはまた夕食の時にということで、会場へいそぎ戻りました。
午後のトップバッターは、ペネティエと香港シンフォニエッタの協演。
席は指定席でしたが、何と1列目。MICKEYさんのチケット確保にかけるパワーは凄いです。

<日時>2006年5月6日(土)13:30
<場所>東京国際フォーラム ホールB7
<演奏者>
■ジャン・クロード・ペネティエ(ピアノ)
■葉詠詩(指揮)
■香港シンフォニエッタ
<曲目>
モーツァルト
■ディベルティメントヘ長調「ザルツブルク交響曲第3番」K138
■ピアノ協奏曲第22番変ホ長調K482 

葉詠詩は今売り出し中の若手女性指揮者。
彼女が、モーツァルトで最も好きな作品は「魔笛」だそうです。
(おっ、かつての私と同じだ!)
香港シンフォニエッタというオケは、香港のプロの室内オーケストラだそうですが、前知識もまったくありません。

長身で美人のコンマス(コンミスというのでしょうか)に続いて、葉詠詩が颯爽と登場。
ディベルティメントが始まりました。
ポジティブな書き方をすると「若々しい」演奏。
でも、荒っぽい印象は拭えません。それとピッチが終始不安定だったので、大変申し訳ないけど十分楽しめたとは言いがたい演奏でした。

2曲目は、ペネティエを迎えての22番の協奏曲。
こちらは、ずっと良かった。
ペネティエも、朝のソロのコンサートを経ているので、最初から全開モード。
弱音部の美しさはソロのときと同様見事だったし、加えてフォルテも強い意志を感じさせてくれました。
オケもだいぶ安定してきて、なかなかいい感じの22番協奏曲だったと思います。

MICKEYさんによると、ペネティエはLP時代に22番協奏曲を録音しており、素晴らしい名演だったとの由。
CDにはなっていないようですが、CD化されたら是非聴いてみたいと思います。

コメント (2)
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ジャン・クロード・ペネティエ ピアノソナタ(「熱狂の日」その6)

2006-05-07 | コンサートの感想
6日も、4日と同様5つのコンサートを聴きました。
この日は、ブログでお世話になっているMICKEYさんと終日ご一緒させていただきました。

この日の最初のコンサートは、ペネティエのピアノです。
ペネティエはMICKEYさんが敬愛されているピアニストのひとりで、かつてフォーレコンクールの一等賞を獲得し、室内楽等のレコーディングも多い人です。

<日時>2006年5月6日(土)10:00
<場所>東京国際フォーラム ホールD7
<演奏者>
■ジャン・クロード・ペネティエ(ピアノ)
<曲目>
モーツァルト
■ピアノソナタ第11番イ長調K331
■幻想曲ニ短調K397
■幻想曲ハ短調K475
■ピアノソナタ第14番ハ短調K457

ペネティエのソロの演奏は初めて聴きましたが、詩的なピアニストですねぇ。
弱音が美しい。単に音だけのことではなく、pのフレーズがことのほか美しい。
一方で、最初の2曲では、フォルテのときに少しばかり力任せのような印象が・・・。
バスが相対的に少し弱いように感じました。そのために、十分響かなかったのではないでしょうか。
ただ、朝10時という時間、空気がこなれていない状態のこの会場ということを考えると、あくまでもこの日に限った印象だと思います。

ハ短調幻想曲が終わり、聴衆からの拍手を自ら制して、すぐに始めたハ短調ソナタ。
これは素晴らしかった。
幻想的であるとともに格調の高さを感じさせてくれました。
午後のピアノ協奏曲(第22番)が楽しみです。

ところで、このハ短調ソナタは、モーツァルトが例の「フィガロ=ハウス」に住んでいた頃に作曲されています。ウィーンで見学した「モーツァルトハウス」のことをつい思い出してしまいました。
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アンヌ・ケフェレック ピアノソナタ(「熱狂の日」その5)

2006-05-07 | コンサートの感想
順番が逆になりましたが、この日2回(もちろん別プロです)聴いたケフェレックのコンサートの感想を。

           

<日時>2006年5月4日(木)
<場所>東京国際フォーラム 
<演奏者>
■アンヌ・ケフェレック(ピアノ)
<曲目>
モーツァルト
《13:45 ホールB7》
■ピアノソナタ第1番K279
■ピアノソナタ第17番K570
■ピアノソナタ第6番K284 

《18:45 ホールD7》
■ピアノソナタ第10番K330
■ピアノソナタ第3番K281
■ピアノソナタ第9番K311 

結論を先に書いてしまうと、本当に素晴らしい演奏。
とにかく音が綺麗。CDで聴いて驚いたそのままの音でした。
声部の描き方が上手いんですね。それぞれの声部が実に活き活きとしてる!
そして、フレージングがきわめて自然なので、聴き手である私もずっと一緒に呼吸することができました。

まず、1回目のコンサート。
ホールB7は少し大きめのホール(770席)で、私の席は中ほどやや後ろ。
まったくフラットな床なので、視界ははっきり言ってよくありません。
でも、彼女の音の美しさ、表現の多彩は格別のものがありました。
17番ソナタの第3楽章なんかは、オペラチックと言っても過言ではありません。
また、6番の終楽章は変奏曲ですが、まあ何て見事なこと!ため息が出そうでした。私がもしピアノという楽器を弾けるのなら、そしてモーツァルトを弾けるとしたら、絶対こんな風に弾きたいと強く感じた次第です。(この日ばかりはピアノを弾ける人を、本当に羨ましく思いました)

そして、夜行われた2回目のコンサート。
朝、岡田博美さんを聴いたホールと同じですが、222席の小ホール。
傾斜がついているのでこのホールは見やすいです。
今回は、最前列ではなく3列目にしましたが、結果的に大正解。
曲目もこちらのほうがより魅力的なものが多く、演奏も一段と素晴らしいものでした。
とりわけ、K311は本当に素晴らしかった。第2楽章のアンダンテで涙をこらえるのにどれほど苦労したことか。
こんなモーツァルトを聴かせてもらって、本当に幸せでした。

ケフェレックのどこがこんなに素晴しいんだろう。
聴きながらずっと考えていました。
クリスタルのような美しい音と清潔で的確なフレージングがベースになっていることは疑う余地がありません。
でも、ただそれだけ?
ふと感じたのは、ケフェレックはスタッカートの達人なのです。
しかも彼女のスタッカートは、その種類が驚くほど多彩。
その見事なスタッカートの技術を駆使しながら、そのときどきの状況に応じてベストの表現を作り出していきます。
また、ケフェレックは、演奏にあたって「テーマの表現」に細心の注意をはらっているように感じました。ソナタなんだから当たり前と言われればそれまでですが、実に丁寧に形にしていきます。そして、テーマが再現される時は、頑固なまでにアーティキュレーションを揃えます。そのことによって、聴き手は知らず知らずのうちにソナタを立体的に感じることができるのです。
その際、さきほどのスタッカート技術が生きていることは言うまでもありません。

なんだかんだと書きましたが、そんな技術的なことよりもケフェレックのモーツァルトが本当に素晴らしいのは、演奏に彼女の温かく素敵な人柄がそのまま投影されてるからに他なりません。
終演後展示ホール内の新星堂ブースで、この日購入したスカルラッティのソナタのCDにサインをしてもらいましたが、素顔のケフェレックさんの、なんと気さくでチャーミングなこと!
「6日のコンチェルトも楽しみにしています」と通訳の方に伝えていただいたところ、笑顔でサンキューと答えてくれました。
男女の違いはありますが、「人間、こんな風に歳を重ねることが出来たら理想的」と強く思った次第です。

            

☆アンヌ・ケフェレック様
ひとつだけお願いがあります。
こんなに素敵なモーツァルトをお弾きになるのに、どうしてモーツァルトのCDは1枚しか作らないのですか?
是非是非、モーツァルトの作品全集を録音してください。
首を長くして待っております。




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