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心に映りゆくよしなしごと書きとめどころ

春を探しに行って苦い春にであった話

2012-02-26 00:32:22 | よしなしごと
 ある買い物のためまだ現役で小売商を営んでいる高校時代からの友人の店に行きました。久しぶりにちょっとした話でもと思っていたのですが、あいにくと出かけて留守でした。
 用件そのものは奥さんで済むことでしたが、いくぶん寂しい思いもしました。

 この友人、古希を過ぎてから面白いことを始めました。彼の属する同業者組合の不明朗な運営を告発し異議申し立てを始めたのです。
 彼の業界もご多分に漏れずシャッターを下ろす同業者が激増し、組合員数はひところの半分以下になってしまったのですが、そうした状況下にもかかわらず、組合の役員たちは過去の余剰金に群がり根拠のない高額な給与をとり、さらにその上、夏冬のボーナスまでとっているというのです。
 役員の中には自分のところも閉店していて、役員の給与やボーナスで生活している者もいるとのことです。

         

 見かねた彼が役員会に公開質問を出し、その移しを全組合員に配ったのだそうです。もちろん彼の方は自費での活動です。
 それを巡って組合はてんやわんやの騒動になっていて、実は今日の不在もそのためだったようです。
 先般、彼にあった折には、まるで淀んだ沼をかき回したように今まで沈殿していた色々なものが浮き沈みを始めたのだとその様子を伝えてくれました。

 もちろん彼の方には利害得失はありませんから、敗れてもともととあっさりしたものです。むしろ、それによって浮き沈みを始めた事態や登場人物たちを楽しんでいるようです。
 「実は俺もおかしいと思っていた」と彼に共感する者、明らかに役員に依頼されて彼の様子を探りに来る者、陰でそしったり悪質なデマを流したり、へつらったり裏切ったりとその人間模様は下手なドラマを見るよりはるかに面白いと彼は笑っていました。

 私は知りあってからまもなく60年になろうとするこの老兵の奮闘に惜しみなく拍手を送ります。たとえ敗れても彼の得るものは大きいと思いますし、すでにして幾多の収穫を得ているのだと思います。

         

 それにしても会えなかったのはすこし残念だったので、その帰途、時折訪れる公園に春の兆しなど求めて立ち寄りました。
 細い散策道を曲がったところでいきなりミニスカの女高生と出会いました。何やら手に白いものが見えます。彼女はタバコをふかしながら歩いていたのです。
 「変なものに出会っちゃったなぁ」という私の気持ちが伝わったのでしょうか、彼女はくるりと踵を返し、もと来た方へととって返しました。私もそのまま歩を進めましたから、彼女の後を追う形になりました。

 ものの10歩も行かないうちに、彼女は吸殻をかたわらの草むらに投げ捨てて駆け出しました。いいえ、私から逃げたわけではありません。この公園と並行している道路に一台の高級車がやってきて、そこへ向かって駆け出したのです。
 運転していたのはむろん男性でしたが、アングルからしてその詳細はわかりませんでした。彼女を乗せると車はすぐさま急ダッシュで去ってゆきました。
 私はというと、草むらでまだ煙を出している煙草の吸殻を丁寧にもみ消したのでありました。

 曇天下でまだまだ寒い公園には春のきざしを示すものは少なく、そこへもってきて先ほどの光景を見てからはなんだか気乗りもせず、早々に引き上げることとしました。
 それでも2、3枚は写真を撮ってきて、ここに掲げたものがそれらです。





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