お~い、置いてきぼりかよ・・
今まで何年も一緒にやってきたじゃぁないか
地上に出たとたんに、ハイおさらばってぇのは
ち~と冷たすぎるってもんだぜ
まあいいや
ところでお前はいったいどこにいるんだい?
おれの頭の上でうるさく鳴いているのがお前かい?
それとも、さっきションベンをしながら
隣の樹に飛んでったやつかな?
あるいは、ああ、もしもあるいはだが
もう鳥かなんかに喰われてしまったのかい?
おれを脱ぎ捨てて行ってしまうってぇのは
まぁ仕方ないだろう
陽の目を見たとたん終わりが始まるってぇのは
おれたちのさだめだからな
でも、残された時間はあんまりないんだぜ
ちゃんといい相手は見つかったかい?
おいおい、そのためにこそ
おれたちは地上に出てきたことを忘れるなよ
お前が相手に恵まれてちゃんといいセックスをして
その生涯を終えるとき
おれの使命も終わるのさ
お前なんか、一緒に地中を這い回ったおれのことなど
きっと思い出しもしないだろうな
いや、それでいいんだよ
誰だって、脱ぎ捨ててきたものに
変な郷愁を覚えたりしないほうがいいのさ
残された短い夏だもの
高らかに鳴け!叫べ!飛び回れ!
それが脱ぎ捨てられたおれをも含めた
命の息吹なんだから