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心に映りゆくよしなしごと書きとめどころ

ニーチェ全詩集からの抜き書き 私の読書ノートから

2015-03-14 02:00:07 | 日記
                     
 ニーチェを理解していると強弁はしません。
 ただ、いろいろ学ばせてもらったのみです。
 
 そのひとつは「疎外論」からの脱却です。
 疎外論はいいます。
 現実の頽落した生に対し、「本来的な生」があると。
 しかし、ニーチェはいいます。
 この現実の生こそがまさに生きているということなのだと。
 これは彼の「神は死んだ」という言葉とも通底します。

 しかし、だからといって何でもありではありません。
 自分の生き方を自分で見出さなければならないのです。
 「セ・ラ・ヴィ」と自分の人生を引き受けなければならないのです。
 
 そんな彼の膨大な詩、ないし詩的な韻文から私の琴線に触れたものを。
 なお、タイトルは私が勝手につけました。
 句読点はいじっていますが、訳文は尊重しています。
 (『ニーチェ全詩集』人文書院より)

 
     

金貨
 ここに金貨が転がって わしは金貨と遊んでいたのに・・・・
 ほんとは金貨がわしを手玉にとって・・・・
 ころがったのはわしだった!


解釈
 ぼくがぼくを解釈すると、ぼくはぼくを欺いてしまう
 ぼくは自分でぼく自身の解釈者になることはできない
 しかし自己自身の道程を登ってゆく者でさえあれば
 ぼくの姿をも もっと明澄な光に近づけて見ることができるだろう


もっと美しいもの 
 どんな美しい肉体も・・・・ヴェールにすぎぬ、そのなかに
 恥じらいながらも・・・・もっと美しいものが包み込まれている・・・


偶然 
 君が「偶然なんて存在しないよ!」と言ったのは
 すべての勝利者が決まって言うせりふだ


偶像
 君が偶像を引き倒したことではなくて
 君のなかにいる偶像崇拝者をぶっ倒したこと
 それが君の勇気だった


意志の力
 意志は救済する
 なんにもしない人にも
 その「なんにもしない」ことがわずらわしくなる


法則 
 新しい声がもはや語らぬとき
 君たちは古い言葉からつくったものだ
 法則とやらを
 生命が硬直すると 法則が塔にようにそびえ立つ

 
子供
 君はこわれやすいのか?
 だったら 子供の手に用心するがいい!
 何かをこわさなければ
 子供は生きていけないんだ・・・・


回帰ないしは転向 
 また二番せんじ、むしかえしをやってるな
 やっこさん もうくたびれたと見える
 むかし通った道を、いまさら捜すなんて・・・・
 つい最近までは前人未到のものを愛していたのに!
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 ひそかに燃えつきてしまったのだ
 といっても 自分の信念のためではない
 信念を持つだけの
 勇気がもうなくなったからなのだ


牛乳とチーズ 
 彼らの心には牛乳が流れている
 しかし 悲しいかな!
 彼らの精神はチーズのように固いのだ

 
真理 
 意識的に、故意に
 うそのつける詩人だけが
 真理を語りうる


ザリガニ的言辞 
 これはザリガニ、どうも虫が好かん
 つかめば、はさむし
 はなせば あとずさりして行く


月の中の男 
 夜だ またもや あぶらぎった月の顔が
 屋根屋根の上をうろつく
 あらゆる雄猫のうちで いちばん やきもちやきの彼
 すべての恋する者たちをねたましげに眺めやる
 この青白い あぶらとりの「月のなかの男」は
 あらゆる暗いすみずみを みだりがましく はいまわり
 半ば閉じられた窓に のっそり身をよせかけ
 好色の あぶらぎった坊主のように
 夜ごと 厚かましくも 禁断の道をかよう



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