六文錢の部屋へようこそ!

心に映りゆくよしなしごと書きとめどころ

映画『パコと魔法の絵本』を観る

2008-09-16 00:50:05 | 映画評論
 予告編を見た限りでは、なんだかけったいな映画だなと思いました。
 それでも、『嫌われ松子の一生』の中島哲也監督の作品だし・・との思いはありました。
 ネット上で、ある映画が好きな知り合いが熱を込めて書いているのを見ました。
 新聞などの評価も割合、良いようです。
 そんなことで結局観に行くことにしました。



 あらすじだけにしてしまうと、まことにベタな話になってしまうのですが、そこんとこをてんこ盛りの中味のあるものにしてしまうところがこの監督の持ち味であり手腕でしょうね。
 「不思議の国のアリス」を思わせるシュールな映像、絵本の中の世界と病院という世界との自己言及的な交差、さらにそれが事後的に語られるている「今」、それら三重の世界が無理なくまとめられています。

 達者な役者陣も見もので、病院という場所に集められたそれぞれのキャラクターの展開は、犬童一心監督の『メゾン・ド・ヒミコ』をも思わせるものがあります。
 終盤にはちょっとしたどんでん返しもあり、それらが総合して、結構厚みのある世界を表現しています。



 実写とCGの混成、サイケデリックな衣装、時に役者がカメラ目線で話したりする場面もリアリティを損なうことなく、この物語が置かれた空間をかえって強調し、ひとつの特異な世界を描き出しているようです。
 105分の上映時間のうち、だれたシーンは一箇所もなく、終始アップテンポで進む様は見事だと思いました。大人から子供まで楽しめるエンターティメントを、手を抜くことなく見事にやり遂げたと言えます。
 
 中島哲也監督、やはり鬼才、或いは奇才でしょうね。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 親の因果が子に報い・・なの... | トップ | 「活到老 学到老」という言葉 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。