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心に映りゆくよしなしごと書きとめどころ

トホホな一日 「大奥」とシューマン

2010-10-21 04:25:54 | よしなしごと
 私のドジは自慢じゃないが年季が入っています。
 かねてから予定のコンサートがあり、そのために名古屋へ出かけるのですが、そのためだけでは交通費がもったいないと午後映画を見てからコンサートという手順にしました。
 映画はイランの作品で「彼女が消えた浜辺」です。
 昼食を終えてから家を出ても間に合う予定でした。
 
 お目当ての映画館へは7~8分前に着きました。
 でも、なんだかロビーの様子は変なのです。早速チケットを買おうとしたら「次の上映は6時からですがいいですか」といわれました。
 え?え?え?それではコンサートと重なってしまいます。
 「あのう、これって45分からではないのですか」
 「いいえ、35分からでもう始まっています」

     
               都会のなかの雑草

 今の映画館はスクリーン数以上の複数のプログラムをもち、しかも日にちによって上映時間がころころ変わるのです。
 どうやら、私の調べたのが古かったか見間違えたかしたようです。
 その館の他のスクリーンでやっている「冬の小鳥」という映画はもう見てしまったばかりなのです。

 さてどうしましょう。
 コンサート開始までの4時間ほどをどう過ごしたらいいのでしょう。
 読むべき本はもっています。
 しかし、4時間過ごせる空間がありません。
 喫茶店のはしごも憚られます。

 やはり映画を見ようと思いました。
 多くのスクリーンをもっているシネコンで、その時間帯を過ごせる映画を何でもいいから観ようと思いました。それがどんなに私の趣味と合わなくとも、忌避することをせず絶体に観ようと心に決めました。
 善(?)は急げです。そのシネコンのある名駅前へ逆戻りです。

        
                ひとりぼっち
 
 地下鉄の階段を下りました。
 発車間際のブザーにせき立てられて慌てて飛び乗りました。
 発車しはじめたとたん、私の体が揺らぎました。あらかじめ進行方向に体重をかけていたのですが、それが揺らぐのです。無理もありません、私が体重をかけていたのとは反対の方へ走り出したのです。
 景色が反対に流れます。

 私は慌てて反対方向の地下鉄に乗ってしまったのでした。
 次の駅で乗り変えました。
 もちろん私の愚行を知る人は誰もいませんが、私自身がその鈍くささを自分に責めていました。

 シネコンへ着きました。
 ほとんど映画の題名も見ないようにして、ひたすら時間帯に合うものを探しました。
 ありました。「大奥」です。
 かつて何十年か前にテレビでちらっと見た、木暮美千代(このひとあとで調べたのですが、1990年になくなっていますから私の記憶もかなり古いですね)のお局さんなんかが出てくるもののリメイクかなと思って、観ることにしました。

 ところがどっこい、まったく事情が違う映画でした。
 まか不思議な病気の蔓延により、青年や壮年の男性の8割がこの世を去るという時代(江戸時代)に物語は設定されているのです。
 こんな時代ですから、政治経済などの権力はすべて女性のもとにあります。将軍も女性で、従って、その大奥は男性が女性の将軍の「おなり」を待つ場なのです。
 何の予備知識もなく観た私はその設定に驚きました。

    

 映画の詳細は語りますまい。
 私にとって満足だったのは、20001年の「GO」で眼にとめ、その後、2005年の「メゾン・ド・ヒミコ」を観てお気に入りになった柴咲コウが、女性将軍吉宗役で出てきたことです。毅然とした役を全うしながらどこか現代的なヒューマンな余地を残してしまうところが不自然なのですが、こうしたエンターティメントには欠かせない要素だろうなと変なところで納得しました。

          
               ピアノトリオのセッティング

 これで時間は埋められ、いよいよ当初の目的のコンサートです
 ピアノトリオで、曲目は以下の通りです。
 演奏者などは下記に記しますので興味のある方はどうぞ。

  *ショスタコ?ヴィチ ピアノ三重奏曲 第一番 ハ短調
  *シューマン     ピアノ三重奏曲 第一番 二短調
  *ドボルザーク    ピアノ三重奏曲 第四番 ホ短調 ドゥムキー


 私のお目当てはシューマンです。私はシューマンが好きなのです
 あの地底からわき上がるような悲哀感、あれは何でしょう。存在そのものの悲哀?
 この曲では、もっぱらチェロがその悲哀感を引き出しています。
 私はそのサワリでゾクゾクッとするのですが過剰反応でしょうか。

 コンサートの終了後、近くの飲食店で、私の好きな福井県のお酒「黒龍」を飲み、ヒラメ刺し、キス天ぷらなどをいただき余韻に浸りました。
 いろいろトホホな一日でしたが、最後はそこそこ充実した一日でした。
 シューマンの悲哀がまだ耳にこびりついています。
 あの地底からの悲哀が迫ってくるのです。

        
                アンコール曲

<データ>ピアノ三重奏曲の演奏者
 「ウィーン・フーゴ・ヴォルフ三重奏団」
   ピアノ:マリノ・フォルメンティ ピアニスト兼指揮者
        このトリオでも実質的なリーダー
   ヴァイオリン:ダニエル・ゲーデ(前ウィンフィルコンマス)
   チェロ:ラファエル・フリーダー(ウィンフィル団員)

 


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2 コメント

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Unknown (さんこ)
2010-10-23 10:03:16
おばママの行きつけの、整形外科で、牽引などをしたあと、ウオーターベッドで体をほぐすのですが、そのとき流れるのが、シューマンのトロイメライです。

今、おばママはちょっと悲しいことがあって、すぐ泣くので、シューマンはぴったりなのか、避けたほうがよいのか。むづかしいところです。
「大奥」が、そのような映画とは知りませんでした。「メゾンド、ヒミコ」の柴咲は良かったですね。オダギリ・ジョーも良かったし。
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Unknown (六文錢)
2010-10-23 13:41:18
 哀しみは東方にありですね。
 泣くのも笑うのと同様人間に与えられた能力のようです。
 機会があったらお話し下さい。
返信する

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