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心に映りゆくよしなしごと書きとめどころ

花筏と「美しさへの義務」

2007-04-11 17:50:17 | よしなしごと
 散った桜が水辺に群をなして漂うのを花筏と言う。なかなか乙な言葉である。
 桜前線は東北まで北上したそうだが、既に通過して久しいところでは、この現象が始まっている。
 前に紹介した、私の家の近くにあるほとんど名もない「My桜並木」でも、写真のようにというか、絨毯というか、びっしりの花たちが水面を覆い、最後の美を演出している。

  
 
 私は、この花筏という言葉の初出のようなものは寡聞にして知らないが、これを最初に使った人は素晴らしいと思う。あの現象からの筏の連想、花という言葉との連結、それによってそれぞれの言葉が当初持っていた以上の意味の余剰のようなものが創出される。
 日本語というラングが、またひとつ豊かに、美しくなった瞬間である。

  
 
 美しいといえば、この国を「美しい国」にしようとする人たちのことを、敬意を持って想起せざるをえない。 
 水道光熱費を年間500万円(数年で2,000万円以上)使用し、美しい水を摂取しようとするその美的センスたるやまさに「美しい国」ならではの風情である。
 そして、一部の不心得者がそれを非難するに際して、総理になる際の論功行賞を忘れることなく、一貫してそれをかばい続ける安倍総理の悲愴ともいえる友情は、まさに美しさの極致として驚嘆に値する。

 この美しい行為に全く無理解な国民がいることは嘆かわしいことである。
 おかげで、政府や与党は、事務所経費に関し、50,000円以上の経費に限って領収書の添付を義務づけるという案を提出するという。
 
 これらは、折角、私どもに公開された美しい行為に、まさに「水を差す」ものである。
 50,000円以下は不問にするということは、その範囲内ではグレイゾーンを残すことであり、賢くて、美しさに敏感であられる議員さんたちが、それをお見逃しになるはずがない。実際にはその範囲を越えた経費を、細かく分散することによって、それ以内のものとし、もって折角の美しい行為が曖昧にされることは火を見るより明らかだからだ。
 
 むしろ、これらの提案は、そのようなあたらしい分割の手口の指南書にも読めるし、それは、水道代2,000万円というあの並はずれた美しさを私たち国民の美的鑑賞眼から覆い隠してしまうものでしかない。

 
 
 それらの美しさは、謙虚に押し隠すのではなく、むしろどんどん普及させ国民全般の美しさとして共有すべきではないだろうか。
 さしあたり、与党案を認めた上で、その美しさを、国会議員の方々のみのご負担にすることなく、私ども国民全体の義務として引き受けようというのが私の提案である。

 まず、税務申告においては、50,000円以下の経費の全てにわたって、領収書など添付することなく、したがってより大きな経費であろうが、50,000円以下としてそれを分散し、申告しない「義務」を私たちも負うべきであろう。

 ついでにそれらを所得税全般に適用しなければならない。一度の収入が50,000円以下の場合には非課税にするのだ。
 要するに給与所得者は、給与を分割し、50,000円以下にして何度も受け取ることとする。そうすればそれらに関する所得税を払わないという「美しい義務」を果たすことが出来る。

 かくして「美しい国」の公平な論理は、私たち国民の神聖な義務として隅々まで浸透し、国会議員の先生方にのみ、美しさの義務を課するという不公平は是正される。
 
 また、訳の分からない詩的な台詞を「もごもご」と口籠もるあの大臣の美しい言動を、私たちもまた共有することができ、もって「美しい国」のいっそうの美しさに磨きを掛けることが出来るのではあるまいか。
 

ATTENTION!> 浄水器の過剰使用、とりわけ2,000万円以上を使った浄水を飲用したりした場合においては、副作用として「腹が黒くなる」ことがありますので注意しましょう。
 この場合は、「水道水」の摂取によって中和されることがありますので、医師の指示に従い、適切な水分摂取をされるようおすすめします。
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1 コメント

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Unknown (六文錢)
2007-04-12 13:51:25
 この日記はもちろん昨日書いたのですが、今朝の「朝日新聞」新聞を見て驚きました。
 
 なんと、上の日記で触れたあの美しい水をこよなく愛する某松岡農水産大臣に、8,600万円の交際費名義の使途不明金があり、どうやらその手口が、昨日、私が上で紹介した50,000円以下は報告義務なし(交際費では既にその規定がある)を利用し、細かく分散したようなのです。

 美しいものを愛する方はどこまでもその美学を追究されるものだと改めて感心すると共に、それを図らずも予言した私の美意識もまた、かの美しい方と共通するものであることに気付き、幾分、憮然としています。

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