六文錢の部屋へようこそ!

心に映りゆくよしなしごと書きとめどころ

映画のはしごと旧友との集い

2014-03-11 03:02:27 | 映画評論
 久々に映画のはしごをしました。
 そんなことはあまりしないほうがいいのだろうと思います。一本一本のイメージが混濁するからです。
 しかし、何年か前、年間70本以上(すべて映画館で)を観ていた頃は一日に3本を観たこともあります。そのせいか、その年のキネ旬のベストテンのうち8本ぐらいはちゃんと観ていました。
 それでも上には上があるもので、私がかつて知っていた映画青年(今は故人)は、年間200本を観ていたといいます。

 私がはしごをする理由は、私の住まいでは映画館が激減し、名古屋まで出なければこれという映画を観ることができないことにもあります。自宅から名古屋の映画館への往復の交通費は2,000円弱ですから、シニア料金の映画代よりもはるかに高いのです。
 しかし、それでもここしばらくははしごは慎んでいました。それだけの体力もなくなってきたことにもよります。

           

 今回は、夕方から旧知の友人たちと名古屋で会う機会があり、その前に映画をと思ったのですが、私がマークした映画の終了とその集まりの間に二時間余の間があり、よしっ、ならばもう一本となった次第です。
 たとえそれがどんな映画でも、暗闇の中の大きなスクリーンで観る映像は、TVの画面で観るそれをはるかに上回る快楽です。

 奇しくも2本ともに、もはやそんなに若くない女性の生き様を描いたものでした。
 私にとって女性はいつまで経っても謎です。
 もちろん、映画を見たらその謎が解けるなどとは思っていませんが、さまざまな生き様を観ることはそれ自身、十分興味を満たすものです。

 でその映画ですが、ネタバレにならない程度にさらっと書いておきます。

           
 
■『グロリアの青春』
 2013年のチリの映画です。
 最初は主人公のグロリアになかなか寄り添えなかったのですが、今は何かのためにあるのではなく、まさに今を生きることが大切なのだという彼女の「生きる=活きる」という確信のようなものに次第に惹きこまれてゆきました。
 しかし、そうした彼女であればこそ、現実の「リアリズム」からの抵抗を余儀なくされます。そうした失意のなかで痛烈なしっぺ返しをしながらも、なおかつ晴れない状態から立ち直ってゆくラストシーン、まさに彼女のために作られたような「グロリア」の曲に乗って全身で反応しながら踊る彼女の晴れやかな表情に、「自分を生きる」ことへの希望を見出したのでした。

           
 
 なお、この映画はベルリン国際映画祭銀熊賞受賞作品で、主演のパウリーナ・ガルシアは主演女優賞をとっています。
 この女優さん、眼の表情で演技する人が多い中、口の表情がとても豊かです。とくに、半開きにした口はとても魅力的でした。

■『はじまりは5つ星ホテルから』
 2013年のイタリア映画ですが、これは、5つ星ホテルに身分を隠して宿泊し、細かな点をもチェックしてゆく秘密捜査員の女性の物語です。
 そんなホテルなど一生縁がないのですから、それらが拝めるだけでも眼の至福ですし、おまけに、それらを極秘にチェックするとうのも面白そうだと思って観ていました。

           
 
 しかし、それらの外面の華やかさにかかわらず、次第に主人公の存在そのものが前面に出てきます。まさに「はじまりは5つ星ホテルから」なのですが、それが次第に主人公イレーネに惹き込まれてゆくのです。
 とりわけ、同宿したホテルでのジェンダー学者との出会いと彼女の急逝を契機に彼女のなかで何かにスイッチが入ります。そこには彼女なりの転回があったようなのです。
 これは予期した以上の佳作でした。マルゲリータ・ブイの演技も光っていました。

           

 といったようなわけで、映画のはしごもまんざら捨てたものではないようです。
 映画の後は旧知の友人たちとの集まりでした。
 世界を駆けまわっている写真家のN氏を迎えて、名古屋の知る人ぞ知る出版社・風媒社のR編集長、それにもう30年近い前から知り合いの図書館学の権威M氏、それに私の4人が、名古屋駅西口のカタルーニャ・バル「カラ カルメン」に集いました。
 このお店、料理もワインも美味しくて、とてもいい時間を過ごすことが出来ました。
 新しい恋人ができたら連れてゆきたいような店です。
 やはり、もつべきは良き友と旨い料理、そして美酒ですね。
 あ、そうそう、いい映画を観たあとだけに一層それが好ましかったことを書き添えねばならないでしょう。


コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« スターリンの亡霊と日本国憲法 | トップ | 大西巨人氏と原子力発電について »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (漂着者)
2014-03-11 21:46:06
映画のハシゴとは、相変わらず精力的ですね。尻をたたかれる思いです。

チリの映画というと、若いころ見たホドロフスキーの「エル・トポ」「ホーリー・マウンテン」くらいしか思い浮かびません。ホドロフスキー作品は夏に新作が上映されるようですが、チリの映画は今元気なんでしょうか。「グロリアの青春」、見に行きます。


返信する
Unknown (六文錢)
2014-03-11 22:51:39
>漂着者さん
 映画のはしご、若気の至りです(笑)。
 
 ホドロフスキー、私も「エル・トポ」に感動して、「ホーリー・マウンテン」、「サンタ・サングレ」と観たのですが、その後、やがて新しいのが来る来るという情報ばかりで、なかなか実現しなくて半ば諦めていました。
 そうですか、今年の夏頃に来るのですか。それはいいことを教えていただきました。見逃さないようにアンテナを張り巡らしておきます。

 チリの他の映画事情には詳しくありませんが、映画で観た限りのサンチャゴの風景は摩天楼そびえる近代都市で(格差はあるのでしょうが)、そうした勢いからいっても、映画の世界でもこれからどんどんいろいろなものが出てくる予感がします。
 「グロリアの青春」が銀熊賞をとったのも大きな刺激になることでしょう。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。