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ワーグナー『パルジファル』の演奏会と「奇蹟」について

2013-08-26 22:55:08 | 音楽を聴く
 8月25日、リヒャルト・ワーグナーの舞台神聖祝祭劇『パルジファル』のコンサートスタイルの演奏を聴きました。実際の劇として展開される場面はどんなだろうと空想しながら聴いてきたわけです。
 ドイツ語による演奏ですが、幸い、日本語の字幕が付きますので、今どんなことが起こっているのかはよくわかります。
 もちろんある程度の予習はして全体の展開は掴んだ上で出かけました。

           

 これがまた長いのです。
  開場 3:00
  開演 3:30 第一幕  120分
         休憩   30分
         第二幕  70分
         休憩   30分
         第三幕  80分
  終演 9:00
 という訳で6時間を要する演奏会なのです。

 なおこれは現在行われている「あいちトリエンナーレ2013」のパートナーシップ事業の一環だそうです。

 これだけ長大なものですから、そのお話や出演者などを紹介していたらきりがありません。
 そこでかいつまんでこの演奏会の特色のみをのべてみましょう。

 まずは、オケと歌い手たち、それに合唱団を率いるのが総合指揮者の三澤洋史さんなのですが、その三澤氏がパンフの冒頭に、「奇蹟」と題した一文を載せています。
 氏はまず、ワーグナーの音楽は、「聴く」というよりその場で「体験する」ものだと述べた後、自分がバイロイト音楽祭の練習風景を見学して震撼したという経験を述べ、その全曲を今自分が演奏するという「奇蹟」を語ります。
 もちろんこの「奇蹟」という言葉自体が、この楽劇の内容とオーバーラップするものであることはいうまでもありません。

                       
            会場の愛知芸術文化センターの吹き抜け

 今回の演奏を「奇蹟」というのはいくぶん大げさだとお思いかもしれませんが、ワーグナーの最後の作品だというこの『パルジファル』の日本での上演の歴史は今回を含めて10度しかないのです。
 初演は1967年でもう半世紀近い前ですから数年に1度ということになります。
 しかも、名古屋地区においては初演なのです。
 また、そのうち日本人の指揮者は、若杉弘、飯守泰次郎の両氏についで、三澤氏が三人目になるのです。

 この演奏回数の少なさは、その作品の規模からして、スタッフ、キャスト、オケ、合唱団とそのための準備は多岐にわたり、それらをまとめあげてゆくことがいかに大変かを示しています。
 事実、今回のソロを歌うキャストはそれぞれ手練れの歌い手でしたが、合唱は名古屋の地元の「モーツアルト200合唱団」でした。
 
 さらに特筆すべきは、このオケには「ワーグナープロジェクト名古屋管弦楽団」という立派な名前が付いているのですが、実はそんな楽団などというものは実在しないのです。このオケは、アマチュアの人たちによってこの演奏のために結成されたオケなのです。
 おそらく、アマチュアのオケによるこの曲の完全全曲演奏というのは世界初ではないでしょうか。

               

 それらが重なりあってこの壮大な舞台が実現したわけですから、まさに「奇蹟」というべきでしょう。しかもそれは大成功であったと思います。

 こんなに長いライブですから、途中で居眠りをするのではないかなと心配していたのですが、それは杞憂で、まさにワーグナーという体験のなかに心地よく身を浸すことが出来ました。
 もうひとつの「奇蹟」について書くべきでしょう。この壮大にして長時間の体験を可能にした演奏会のチケット代が、わずかの「3,000円」だったということです。オケがアマチュアだからといって決して遜色があるものではありませんでした。それをこの価格で聴かせるとは、なんだかもったいないような気がしました。

 もうひとつ、オマケに私的な「奇蹟」がありました。
 このコンサートに前後して、何年か前、袖すり合うかのようにして知り合っただけの方から、はからずもお電話を頂き、新たな交流の機会が芽生えたということです。

 
 

 
 
 

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