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心に映りゆくよしなしごと書きとめどころ

軽やかなカオスの舞いを見た!

2010-06-13 00:53:30 | アート
 畏友、佐治墨拙さんの個展に行ってきた。
 題して 墨拙「&Chaos」展。
 カオス、つまりコスモス(秩序)の反対、ふつうは混沌といわれたりする。

 墨拙さんを紹介するにあたって、昨年までだったらさしずめ書道家といったであろう。
 しかし、写真で見るように、今年の墨拙さんの作品は書というより造形といった方がいい。
 かといって書という表現と手を切ったわけではない。
 もともと書を「字を書くこと」に限定してこなかった墨拙さんの中では、紙に墨で書かれる作品と、こうした造形作品との間に断絶はない。

    

 ただし、書道家としての根っこの様なものは確実に残してはいる。
 まずは紙へのこだわりである。
 この一見、絵画や造形に見えるものたちの正体はすべて紙なのである。
 それは出来上がった紙であったり、半製品の紙をかたどったものだったりするが、紙以外のものでは決してない。
 
 続いてその彩色である。
 一見、絵の具を用いたかのようだが、実はこれらの色彩、すべてその色をした墨を摺って描かれている。

    

 さらには、それぞれの作品にやはり文字がある。
 Chaosという文字が筆で書かれたり、あるいは染色技術の応用で染められている。
 そして、昨年の個展のテーマであった「ふ」の字が、いたずら描きのように隠されていたりする。

 注目すべきはこれらの重量である。
 みんな軽いのだ。
 風が吹けば四散するくらい軽いのだ。

    

 ところでどこがカオスかというと、そこに墨拙さん独自の解釈がある。
 ビッグバーンの原初以来、カオスはコスモスの裏面に張り付きながら存在し続けたし、むしろそれこそが支配原理かも知れないというのだ。
 カオスといってもぐちゃぐちゃな恐ろしげなものではない。
 カオスは何ものかとして規定されていない自由な存在だから、重量にも支配されず軽いのだ。

 かくして、軽やかで楽しげな可愛いカオスが並ぶこととなる。
 暗いルサンチマンや、秩序との対概念ですらもない、それ自身自由なカオスである。
 そしてそれは、墨拙さんが現にそこに住まい、そうあり続けたいというカオスなのである。

       

 私が訪れたとき、BGMはボサノバであった。
 カオスが軽やかに舞っていた。
 
墨拙「&Chaos」展
  *6月17日(木)まで
     11:00~18:00(ただし最終日は17:00まで)
  *ギャラリー安里 TEL 052 (762) 5800
    名古屋市千種区末盛通1-18 覚王ハイツ1F
    地下鉄東山線 覚王山下車 2番出口を左へすぐ

  本人は常時会場に詰めている模様。
  話しかけてやると喜ぶと思います。
   





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