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心に映りゆくよしなしごと書きとめどころ

ゴロツキに促された「あいちトリエンナーレ」三会場

2019-09-15 10:47:37 | アート
 名古屋市長の河村たかしという男はゲスでゴロツキである。
 私は一度、今池という街で店を持っていた折、直接対話をしたことがあるのだが、彼の開口一番は、「マスター(私のこと)、今池はチョーセンが多いで、商売、やりにくにゃぁきゃぁ」であった。
 頑迷なレイシストの言葉であった。

            
 この男が、今回のあいちトリエンナーレの企画展示「表現の不自由展・その後」の少女像などにイチャモンを付け、それをなぞるように菅官房長官の公金での支援を疑問視するが談話が続き、それらが火付けとなって事務当局への妨害電話、脅迫電話が相次ぎ、ついには、京アニ事件を想起させるガソリンをもって参上という武力攻撃を示唆する書き込みがネット上で公開されるに及んで、その企画が閉鎖されて今日に及んでいる。

         
 表現の不自由を検証しようとする企画が、はからずもそのまま、今日の表現の不自由、その不自由を実現しているのがどんな連中かを炙り出したといえる。

         
 この経緯の口火を切ったのは先に見たようにゴロツキ河村だが、彼にひとつだけ功績があるとするならば、これまでのトリエンナーレをチラ見ぐらいで済ませてきた私をして、ならばちゃんと見てやろうではないかと思わせたことであろう。
 私のみならず、あれが契機で、このあいトレに関心をもった人も多いかもしれない。

         
         
            
         
 そんなわけで、前回の豊田会場に引き続き、今回は、県美、市美、円頓寺と三箇所の会場を巡った。ここに掲載したものは、それぞれの会場で撮したものである。
 アートというものを見慣れていない私には、それらの評価は為す術もない。ただ、これは邪道かもしれないが、ある種のこだわりをもったもの、そのこだわりが私に響くものに注意や関心がゆくのは否めない。

         
         
 例えば、円頓寺「メゾンなごの」での弓指寛治のその一階を飾る作品。これは東日本大震災などの大きな事故の影で、忘れられがちな栃木県鹿沼市のクレーン車暴走事故で亡くなった集団登校時の6人の学童の鎮魂の作品群である。
 この事故の特色は、持病があってそれによりたびたび事故を起こし、執行猶予中に起こった事故ということで、今日の老人の運転問題などへも継続された問題である。

            
            
            
         
 作家は、犠牲者たちの日常を数々の絵で表現するとともに、加害者となった息子に、次々と車を買い与えた母親へのインタビューやその絵画表現をも試みるが果たせなかったことを明記している。後半に出現するおびただしい車の絵は、それを払い除けてくぐらなければ通れない仕組みになっていて、それ自体が中毒症状ともいえる車社会の現状をよく表している。

 今回、ひと通り観た中で、全体を通じた感想としては、この種のアートフェステバルの中では、異例なほど、かつての日本の植民地支配があぶり出されていたことである。最初に述べた「表現の不自由展・その後」の少女像もそうだが、台湾の日本統治時代の、農業高校(?)での訓練の背後に流れる「海ゆかば」の合唱、同じく、統治時代の記憶を持つ老人たちが歌う日本の軍靴や歌謡、それらはすべて戦前生まれの私もかすかに記憶してる、天皇礼賛に属する歌たちであった。
 そしてこれらは、豊田の喜楽亭で観たホー・ツーニェンの戦前の軍国日本を描いたあの印象的な映像に通じるものであった。

         
 かくして、日本を取り巻く現代アートは、いまなお70年前、80年前の時代とのズレと振幅を抱え込んでいるように思った。
 それはまた、あの敗戦時に、日独伊の三国同盟のなか、唯一、戦争責任者が生き延び、国旗も国歌も変わらなかったこの国のヒズミが、今日に至るまで亡霊としてさまよっていることを表しているのかもしれない。
 冒頭に述べたゴロツキ河村の妄言も、もちろん、そのひとつの帰結である。

         
映画「エル・トポ」や「サンタ・サングレ」のホドロフスキー監督が、映像の「サイコ・マジック」に出ていた。そうしたパフォーマンスもいいが、もっとその映画を観たいものだと思った。

 

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